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ごく普通の生活の、極上ドラマ☆

 私がセレブだった頃は髪の毛を切ってもらうのに、京都から新幹線(!!)に乗って、福岡のサロンに通っていました。……ぜったい頭、おかしかったと思います。いや髪型はバッチリでしたが、頭の中がおかしかった。


 今はクソ貧乏なので、近所の美容室です。この辺で一番安い、1,300円のお店。

これを言うと同年代の女子たちは「うわぁ……。さすがにそこまでは……」と、どん引きします。

安いから、ヘンな髪型にされると思うらしい。確かについ最近までの私は、ヘンな髪型をしていました。色々とワケあって、わざと似合わない髪型にしていた。ソウマチでネット検索すると、ヘンな髪型の私がたくさんヒットします。取材を受けていた頃は、残念な髪型の時期だったのです。もしよかったら、ご覧ください。ヘンですから。


 今はおかげさまで、ヘンな髪型をする理由がなくなりました。だからカッコイイ髪型にするために、伸ばしている最中です。お店は相変わらず1,300円のお店です。だって私がわざとヘンな髪型にしていただけで、お店の技術はちゃんとしていますから。

安いのは効率アップのために洗髪やカットを分業にして、スタイリストの指名ができないためで、スタイリストさんたちの技術はちゃんとしています。こちら(客)が細かく注文を出せば、きっちり応じてくれます。


とは言うものの、細かく言わないと同じ髪型にされます。いわゆる「おばちゃんカット」。可もなく不可もない、無難なカットになります。だからお店のお客様は、かなり高齢の方ばかり。70代より上の「オシャレにお金をかけるのは、無駄」という、達観したご婦人がほとんどです。


そんなお店で、私はかなり異色の存在です。私くらいの年代がお店に来るのは珍しいようで、最初は「(高齢のお客様の)迎えの方ですか?」と聞かれていました。ちがいます。客です。

何度も通ううちにスタイリストの皆さんも慣れてくださったので、今は細かいお願いも出せるようになりました!


そして昨日、久しぶりに美容室へ行きました。じつに三カ月ぶり! 二巻の原稿が出来上がらないので、美容室へ行く心の余裕がなかった。やっと原稿の終わりが見えてきたので、お出かけしました。


お店はいつものように、高齢のご婦人ばかりです。80代とおぼしきご婦人の横に、座りました。


「今日はどうされますか?」

「ツーブロックで、右の耳は全部出るよう切ってください。左は伸ばしているので、このままでお願いします。右と左の長さが違うので、後ろの部分で上手に繋いでください。後ろは伸びて野暮ったいので、ボリュームが上に来るように、アゲていってください。必要なら、刈り上げてもらっても大丈夫です。あと、ツーブロックの刈り上げは、ゼロ(ミリメートル)でお願いします」


1,300円のお店にありえない、うるさい注文 & 高度なテクニックです。


「両サイドの長さを、アシメ(左右非対称)にするのですね?」

「そうです」

「耳のところの刈り上げは……ゼロですか?」

「はい♪」

「ちょっと短すぎるのでは……?」

「いつもゼロです♪ ゼロでお願いします♪」

「と、とりあえず、3ミリでやってみますね。それで様子を見てから……」

「じゃあ、3ミリでお願いします♪」


ジョリジョリジョリ……。バリカンで刈ってもらいます。


「これで3ミリです。かなり短いでしょう?」

「そうですね。でも、ゼロでお願いします♪」

「……わかりました」


ジョリジョリジョリ……。ゼロミリです。青いです。ww


このやり取りを、ずっと見ていた人物がいました。お隣に座っている、80代のご婦人です。どこにでもいる、田舎の腰の曲がったおばあちゃん。地味な髪型に、地味な服装。

そのご婦人のところに、別のスタイリストさんが来ました。


「今日は、どうされますか?」

「耳が出るまで、髪の毛を切って」

「えっっ!? 今までそんなに短くしたことなかったじゃないですか!?」

「耳、出して」

「短すぎますよ!」

「……出す」

「でも短すぎますって!」


ご婦人の髪型は、いわゆる「大仏パーマ」です。おばあちゃまたちがよくしいてる、短髪のグルグルパーマ。耳を出す、出さないとモメていますが、ほんの3センチくらいの長さです。でも「耳を出すか、出さないか?」は、大問題らしい……。


「耳、出して」

「短いですって! ご家族が見たら、ビックリしますって!」

「………」


家族のことを言われたら、弱いよなぁ~! 田舎だからヘンなことすると、すぐにアレコレ言われちゃうし……。世間体とか、すごく気にする土地柄だしな~!

ご婦人、強い反対にあって、だいぶ迷っているようです。80年も無難に暮らしていたら、冒険するのはムリかも……。でも、頑張って!!


「……でも、出す。ずっと前から出したかった!」


おお!! ご婦人、押し切った! たぶん生まれて初めての髪型! 初挑戦!


「そうですかぁ~?」


渋々ながら、カットするスタイリストさん。

ご自身の意見を通して、目がキラキラしているご婦人☆


私、めっちゃ嬉しかったです!

私の素っ頓狂な注文と髪型を見て、ご婦人は勇気を出してくれたのだと思うのです!

ほんとはずっとしたかったけど「女だから」って無意味な縛りで出来なかった髪型に、80代にして初挑戦!! いいぞ~! カッコイイぞ~!! パチパチパチ☆ 拍手!!


すっかりカッコ良くなったご婦人と私は、ニコニコでした!

たった1,300円で、極上のドラマを見せてもらいました!!

私、幸せです!!


あなたにも、幸せなドラマが起きますように!!












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