突撃!
本は、一人で書くものではありません!
たくさんの方々のご尽力で、私の荒唐無稽なお話が本になります!
そして荒唐無稽な私は、困っていました………。
「1589年頃の話し言葉(口語)の一人称って、なんだ??」
すでに本が出ているのに、自分でもイヤになります。今さら言って、どうする?っていう話です。
でも気になりだすと、モヤモヤする。モヤモヤしてたら、二巻が書けない。
何とか調べることはできないかと、アレコレしていました。
それと同時に、悩んでいることがありました。
「二巻に出てくるお城の構造が、わからない………」
これも、自分で書いておいて何を言ってる?っていう話です。
一応、二巻は完成しています。完成しているのに、お城の構造がわからない……。
小説なら力ワザで押し切ることもできるかもしれません(ムリです)が、あとから漫画化されるので、ちゃんとしてないと絵に描けない。どうしたものかと9カ月間、ずっと悩んでいました。
一人称について、市役所の歴史文化財課に問い合わせをしました。
答えは「口語(話し言葉)については、音源が無いのでわからないです。書き言葉なら当時の資料から、わかるのですが……」でした。
音源……安土桃山時代にボイスレコーダーがあったとは思えませんから、音源はナイ。
どうしたものか?
私は一所懸命に考えます。
「口伝の伝統文化なら、口伝で伝わっているのではなかろうか?」
そう考えて、能楽協会(!!)にメールを書きました。
「当時は自分のことを、何と呼んでいたのでしょうか?」
お返事のメールを頂きました。
「謡本というセリフを記した楽譜のような書物があります。図書館などで所蔵されているので、図書館に聞いてみられい」
ありがとうございます! さっそく聞いてみます!
私は甲賀市の水口図書館へ、トコトコ行きました。
図書館に設置されている検索マシンで「謡本」を検索しても、ヒットしません。困った。
受付に行って、司書さんに相談します。
「あのぅ~。謡本という本を探しているのですが……」
ここまでは言えたものの、その先が続かない。そもそも謡本が何なのか、自分でもわかっていません。
「じつは本を書いていまして、1589年頃に人は自分を何と呼んでいたのか知りたいのですが……」
仕方がナイので、事情を説明します。
「それで能楽協会さまから、謡本という本に載っているかも……と教えてもらったのですが、自分でもソレが何の本なのか、よくわからなくて……」
自分でわからないのに、人に訊くなよっていう話です。話していて、恥ずかしくなる!!
すると司書さんは、にこやかに「お調べしてみましょうね! 何かわかったら、ご報告しますね!」と言ってくださいました。
本当に、ありがとうございます(涙)。わからなくても、文句は言いません。お話を聴いてくださっただけで、感謝です!
そして数日後。
スマホに、司書さんから電話が!
「まだ途中なのですが、経過報告を……」
当時の人称について記載している本の書名を、いくつか挙げてくださいます。いったいどうやって、お調べになったのですか? 魔法ですか?
しまもすでに、本を取り寄せてくださっているとのこと。
「拝見しに伺います!」
私は深々と頭を下げて、図書館への訪問を約束しました。
翌日、私は図書館でボーゼンとしていました。
司書さまがメモとともに、数冊の本を準備してくださっています。その本にはしおりが挟んであって、どのページにも、私が調べてもわからなかった答えが書いてある!!
いったいどうやって探し出したのですかあああああ!!!!?????
お礼とともに、山ほど質問したかったのですけれど、担当してくださった司書様は公休日とのこと。
残念! またお礼に伺います!
感謝と感動で、フラフラしながら図書館を出るわたし。あんなに調べてもわからなかったのに、ほんの数日で答えを見つけてくれる司書様って、いったい………。
フラフラしながら自転車を漕いでいると、ハウスメーカーの横を通りがかりました。
ハウスメーカー……ハウス……建物……建物の構造………お城………。
9カ月も悩んでいるお城の構造、建築士さんに訊いたら、わかるんじゃね?
だいぶ迷ったのですが、勇気を出して突撃しました。
有料で建築士さんに相談しよう! 今日はそのために、建築士さんの予約を入れよう!
お洒落な店舗に、入っていきます。頭はボサボサ、ジャージ。すっぴん。
場違いな自分が恥ずかしい……。
お洒落な店舗にたがわず、受付の女性たちも、キレイでお洒落です。気おくれする。
「あのぅ~。突然、すみません。わたし、児童向けの本を書いてまして……」
女性たちは不格好な私を、不思議そうな顔で見ています。
「それで、あのぅ~。お話に出てくるお城で困っていまして……」
自分でも、何を言ってるんだか、わかんなくなってきた……。冷や汗がダラダラ出てきます。
「つきましては建築士さんにお時間を頂いて、有料で相談にのっていただきたいので、お受けいただけるかどうかを……」
そもそもそんな相談、受けてくださるのだろうか?? OKだとしても、幾らくらいかかるんだろう?
めっちゃ高かったら、どうしよう?
女性たちは、顔を見合わせます。そりゃ、そうだ。そんな相談、受けたコトないですよね……。
「建築士……でしょうか?」
「そうです。建物の構造なので……」
「ちょうど今、建築士がいます」
「えっ!?」
「すぐに、呼んできますね♪」
えええっっっ!? 今ですかっっっ!?
女性は軽やかに、お洒落な階段を上っていきました。
今っっっ!? 今なのっっっ!? 心の準備がっっっ!!!
でも、チャンス! アカンかったら、また出直せばいいし! これは、チャンス!!
必死で自分に、言い聞かせます。 チャンスだから、逃げるな!!
ドキドキしつつも待っている間に、ショールームを拝見します。お洒落な家の模型が、たくさん並んでいる。そして設計した建築士さんの写真が、横に添えてある。皆さん、30代くらいです。私からすれば、ぜんぜん若い! 若い方なら、気軽に話ができるかも??
「お待たせしました」
振り返ってみると、めっちゃダンディな中年の男性が立っていました。マスク超しでも有能な雰囲気がビンビン伝わってきます。頭脳明晰、容姿端麗、切れ者、エリート、博覧強記……。
アカン……。私のふざけた相談なんか、ムリ……。
頂いたお名刺には「部長」の二文字が……。部長様が出てきちゃったよ!!!!!
どうするっっっ!? オレっっっ!!
「どういったご用件で?」 真面目な顔で、訊かれます。コワイ……コワイです(涙)。
「あのぅ~……」
「…………」
続く沈黙。固まるわたし。
仕方ない! どうやっても知りたいんだ! 当たって砕けろ!
お洒落なテーブルに座って、私はヨゴヨゴと絵を描きます。
「こういう形のお城で…………」
ぜんぜんお城に見えない絵を描きます。
「それで、階段をどうしたらいいかと……」
部長様はペンを取り出すと、サラサラと書きました。
「こうしたら、どうですか?」
その間、たったの5秒! わたしが9カ月悩んでいた問題が、5秒で解決!!
「え? あ? そうですね。 たしかに……。 え?」
あまりの速さに、アタマがついてこない。
「本の中のお話なので、建築の法律とかは関係ありませんよね?」
「ナイです」
「物理的な強度も勘案する必要はありませんから、これで問題ないと思いますが?」
「ええ。重さとかは、考えなくてイイです。え? 解決してますね。え?」
すごくシンプル。すごく簡単。でも自分では、思いつかなかった。
「ご親切に、ありがとうございます。今日のお代金は……?」
「何の代金ですか?」 部長様、怒ってらっしゃる?
「相談料です」
「いりません」 にべもない。
「でもお支払いさせて頂いたほうが、今後も相談しやすいので……」
「受け取れません。そういう商売は、していませんから」 無下に断られる。
「次からは……」
部長様が、厳しい顔で何か言いかけます。やっぱり叱られますよね。お小言ですよね……。
もう来るなって、いうことですよね……。でも解決してくださっただけでも、感謝です!
お忙しいのに、すみませんでした!!
「次からは……、事前に連絡してから来てください。私は社にいないことが多いので」
えええっっっ!? また来ても、いいんですかっっっ!?
おっしゃる口調はコワイのですが、言ってることはめっちゃ優しい!!
「ありがとうございます! またお願いします!」
「どういたしまして」
最後まで、クールな部長様でした!
このように、本は一人では書けません! 色々な方の知識や経験に助けてもらって、一冊の本になるのです! 皆さま、本当にありがとうございます!
追記。 いつか私が本物のお城を建てるときには、西村不動産さまにお願いする所存でございます。その節は、どうぞよろしくお願いいたします………。