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作家っぽいことや、大ウソ。

 先日、生まれて初めて「原稿の催促」をされました! 作家っぽい! なんて喜ぶ余裕はなくて、ここ数日ずっと落ち込んでいました。落ち込み過ぎて、底までいって、穴まで掘っていました……。


 毎日まいにち、「姫さまですよねっ!?」の二巻を書いています。書いていると、主人公のリリ姫様(どS・毒舌・八歳)が話しかけてくるのです。


「……違うよな」

「…………」

「うぬの書いているその話が違うというのは、わかっておろう?」

「……はい」

「わかっておるなら、とっとと書き直せ」

「はい……。でも! どこが違うか、教えてもらえませんか!?」

「うぬは、バカか? いや、訊くまでもない。バカだ。正解を書くのが、うぬの仕事だ。違うと教えてもらえるだけ、泣いて喜べ」

「……はい……」


ううう(涙)。毎日、こんな調子です。お話を書いていて「違う」という違和感は感じるのですが、具体的にどこがちがうのか、どう直せばいいかわからない……。でもスルーして書き飛ばすと、同じ箇所に担当様から指摘が入る。何度も読んで書いて直しているうちに、だんだんと自分を見失っていきます。


「そもそもこの話、おもしろいのか?」


疑心暗鬼の沼にハマります。何がおもしろかったのか、自分でもわからなくなる。でも時系列などの明らかなミスはあるので、それは修正しないといけない。こんなに苦労して書いてるのに、面白くなかったら、どうしよう???


そんな矢先、担当のP様からメールが……。

「原稿の進み具合は、いかがでしょうか? 時間に余裕ができたので、何でも相談にのりますよ~!」

ありがたい(涙)。お忙しいのに、気にかけてくださって(涙)。担当様のお時間を取るなんて、考えただけでも恐れ多い!!

でも行き詰まって煮詰まっているから、一つだけ質問を……。


「私の書いているお話、面白いですか?」


プロだから面白いレベルまで自分で持っていくのが仕事なのですが、自分を見失ってしまった……。

今まで催促メールは、一度ももらったことがありません。催促される前に提出していたので、P様をお待たせすることがなかったのです。それなのに、催促されてしまった……(涙)。


もう一つ、気がかりがあります。「鹿児島県・喜界島の早町ソウマチ」です。

いきなり話は跳びますが、ずっと早町が気になっていました。


私のペンネームと同じ名前の町があると知ったのは、本が出た後です。もともと私は「ソウ〇マチ」だったので、検索してもヒットしなかった。それが「ソウマチ」になってしまったので、町の存在に気づいた。偶然とは言え、同じ名前。ご縁を感じる……。地図で見ると、奄美大島のすぐ近くの小さな島です。奄美大島には行ったことがありますが、喜界島は行ったことない。

この島に、私の本があったら面白いなぁ~♪ そう考えて、一人でニヤニヤしていました。


調べてみると、どうやら小学校があるらしい。私の児童書を寄贈したい……。でもアレコレする余裕がない。二巻を書き上げたら、寄贈しようと考えていました。

そのうちに私は疑心暗鬼の沼にハマり、にっちもさっちも動けなくなりました。書けないお話で悩むより、今できることをしよう。そう考えて、喜界島の町役場に電話をしました。


「はい。喜界島町役場です」

「恐れ入ります。教育委員会をお願いします」 

 余談ですが寄贈を新聞などでニュースにしてほしかったら、教育委員会ではなく広報課です。詳細は、以前に書いていたカクヨムのどこかに書いてあります。ご高覧頂ければ、嬉しいです。


「ちょっとお待ちくださいね~♪」


(ジャンカジャンカジャン♪ ジャンカ♪)


すっげぇなごむ民謡が流れます。役所っぽくない保留音ですが、めっちゃなごむ……。


「はいはい。教育委員会です」 親切そうな男性の声です。

「初めまして。わたくし、作家のソウマチと申します」

自分で名乗っておいて、怪しい……。すげぇ、ウソくさい……。

「突然、すみません。じつは私、本を出していただきまして……」

ヤバい。詐欺っぽい口調になってる……。

「それで、同じ名前のご縁で、早町の学校に本を贈らせていただきたいのですが……?」

うわ、これ! ぜったい詐欺やん!! 送り付け詐欺!! 

「ちょっと、お待ちくださいね……」

 

なごむ民謡を聞きながらも、気分は落ち込みます。こんな怪しい話、断られるよね。電話、せんかったらよかった。いらんこと、してしもうた……。


「お待たせしました~」

「はいはい! すみません!」

だから、謝ってどうする!? なおさら怪しいわ!

「お気持ち、ありがたく受けさせていただきます! ぜひご本を送ってください!」

「えっ!? いいんですか!?」

自分で贈りたいと申し出ておいて、ビックリする。こんな怪しい話、乗ってくれるのですか?

「生徒も喜ぶと思います!」

うわぁ! 喜界島の方、めっちゃイイ人や~!!

「あの! わたし、怪しい者ではありませんから!」

やめろ! 言えば言うほど、怪しいわ!

「わたし、詐欺とかじゃ、ありませんから!」

黙れ! 口を閉じろ!


冷や汗をダラダラかきながら、電話を切りました。めっちゃ良い方やった! いつかお会いしたい!

さっそくお手紙を書いて、封筒に本を同封して準備をします。またね、私の字が汚いんですよ!

「字は人格を表わす」と言いますが、見事に表している。グチャグチャ。字も人格も、破綻している。こんな封筒受け取ったら、コワイだろうな~! すまん! あきらめてくれ!


郵便局の窓口は、大盛況でした。10人くらい並んでいて、みなさんイライラしている。やっと私の順番です。さっさと終わらせないと! 急いで踏み出したとたん、チャリン! チャリン! チャリン! と音がしました。お気の毒に。誰か小銭を落としたのねって……私だよ! 私のサイフから、大事な小銭が落ちてる!! 小銭をかき集めても、1000円くらいしか入ってナイのに、バラまいてどうする!? お金、ナイから! わたし今、人生で一番ビンボーだから!


ちょっと話が逸れますが、今、人生最大の危機です。とにかくお金がない! 二巻を書き終えないと仕事に就けないので、収入がない! 早く書き終えて就職しないといけないのですが、書き終わらない! こんなにビンボーになったのは、生まれて初めてです! スーパーの野菜売り場に、いらない葉っぱを捨てるゴミ箱があるでしょう?

「あの葉っぱ、もらっちゃダメかな?」って、本気で悩むくらい金がない!

そんな私に小銭をバラまく余裕なんか、ありません!! 


あわててお金をひろう私の横に、窓口の女性がダッシュで走ってきました! いっしょに小銭を探してくださる。なんて親切な方なんだ! でもお客さんが待っているから、もうイイんです!


「もっと落ちているはずです!」

女性は血眼になって、床を探してくれます。私のせいで、窓口がストップしている!

「大丈夫です! ぜんぶ拾いました!」

全部かどうか知らんが、とにかく業務を再開してもらわないと!

「いいえ! あっちに転がったと思うのです!」

お客様の足の間を、走り回って探してくださる! 気持ちは嬉しいですが、やめてください!

「音がね、したのですよ!」

ありえないほど遠くまで、探してくださる! やめて~!

「大丈夫です! お金には、困っていません! 金なら腐るほど持っています!」

思わず口から飛び出したのは、近年まれに見る大ウソ!! 

「金なら腐るほど」!! こんなデカイウソ、ついたことない!

わたし、大ウソつき!!!

なんとか女性を説得して、窓口に戻ってもらいます。島への郵送料は、ギリギリ足りました! よかった!


用事を終えて、トボトボと帰ります。ビンボーなので、車は持っていません。

原稿はできないし、詐欺みたいな電話をしてしまった上に、お金には困ってないなんて、ありえない大ウソをついてしまった……。私なんて、虫ケラ以下だわ……。だめ、そんなこと言っちゃあ。そんなの、虫様に失礼だわ……。凹み過ぎて、自己肯定感ダダ下がりです。


ヘトヘトになって帰ってくると、スマホが鳴りました。はっ! 担当様からのお返事メール!!

面白くないってお返事だったら、どうしよう!? 今でも心が折れているのに、面白くないなんて言われたら、二度と立ち直れない! 

ドキドキしながらメールを見ると………。



「心配しないでください! めちゃくちゃ面白いですよ~!!」


おっしゃあ!!! オレ、最強~!! オレ、世界で一番面白い!! やっぱオレ、天才!!

喜界島の皆さんも、きっと喜んでくださる! オレはみんなを幸せにするぜええええ!!!!

待ってろ! みんな! 最高におもしろい二巻をお届けするぜ!!


今日のまとめ

自分でも残念になるほど、単純バカ。







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