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想い出のボロアパート 3 (完結!)

 ごめんなさい! 昨日終わらせると書いたのに、ウソついてしまいました! ごめんなさい!

朝からお話をヨイショヨイショと書いていて、途中で歯医者さんに行ったら先生から「虫歯があるから、削っていい?」と訊かれました(涙)。

「先生、削らないで済む方法はありますか?」

「無い!」

ぢゃあ、どうして訊くのですか……(涙)。

というワケで歯を削られて、恐怖で命まで削られていました……(涙)。ごめんなさい(涙)。


お話の続きです。たぶん、今日で終わると思います。たぶん………。



 治安が悪くて危険だと言われたボロアパートで、ガラは悪いが優しいおいちゃんたちと暮らす日々です。


 治安が悪いと言われているが、この間お見かけした50代くらいの地味なご夫婦は、フツーに見えた。ヤ〇ザみたいなおいちゃんたちと違って、フツーだった。だってヨレヨレのランニングシャツのおいちゃんたちとちがって、その男性はきちんとワイシャツを着てた。女性もキレイにお化粧して、ツーピースのお洋服を着てた。もしかしてこのアパート、治安が良くなってる? ふふふ♪


 そのご夫婦の前の住人は、たぶん男性の一人暮らしだったと思います。何度か廊下ですれ違ったと思う。ほとんど記憶に残ってナイから、荒くれ者のおいちゃんたちと同じような格好をしていたのでしょう。あの方は、いつの間に引っ越したんだろう?? それにご夫婦が引っ越してきたのも、知らなかったし。


 私も仕事で留守がちなので、ご夫婦とお近づきになる機会はありません。でも薄い壁の向こうで、生活している気配はする。それにしても狭い4畳半で、どうやって二人で暮らしているんだろう?

ある朝、仕事に行こうと廊下に出た私は、お隣のドアが全開になっているのを見つけました。おいちゃんたちは気にせず24時間ドア全開ですが、そのご夫婦の部屋はドアが開いていることはなかった。ドアは風に吹かれて、開いたり閉まったりしています。誰もいないのかな? 不用心だな?

しばらくドアが開閉するのを見ていましたが、部屋に人の気配はありません。閉めてあげたほうが親切かな? 私はドアを閉めようと、ドアに手をかけました。


「っっっ???」


部屋の中、何にもありませんでした。からっぽ。カーテンさえ、ない。

二人で暮らしていたら、それなりに物があるはずなのに、何一つない。


「?????」


 とりあえず、ドアを閉めます。どうなってんの? あの二人、何者なの???

一気に怪しくなった二人ですが、あいかわらず生活している気配はします。

何一つない部屋で、どうやって暮らしているんだ???

なんや知らんけど、関わらないほうがイイ気がする………。

わたしはこの事を誰にも言わず、黙っていました。


 久しぶりの休日、わたしは部屋でのんびりしていました。窓を開けたら隣のアパートの壁が広がる暗い部屋ですが、慣れれば平気です。壁のおかげで誰にも見られないので、あられもない恰好で畳に寝転がっていました。


トントントン


ノックの音がします。ボロアパートなので、チャイムなんで贅沢な設備はナイです。

あわてて服を着てドアを開けると、目つきの悪い男性が立っていました。

この目つき、おいちゃんたちと同じ目つき。でも、スーツ着てる……。

この目つきで、まともな格好してる人って………???


「警察です」


おお! 警察の人か!? どうされました!?


「隣の部屋について、ちょっと話を聞かせてもらえますか?」

「ごく普通のご夫婦だと思います。お二人とも身長はこれくらいで、ちょっと太目で……」

「その二人は、把握しています」


あ、知ってるんだ。じゃあ、誰のこと??


「その二人の前に住んでいた住人です」

「中年の男性だと思うのですが、お話をしたこともないし、外見もよくわかりません」

「外見などは、把握しています」


知ってるなら、聞かなくていいじゃん!


「いつからいなくなったか、ご存じありませんか?」

「そうですねぇ……。ご夫婦がいらしたのが2週間ほど前だと思いますから、その前に引っ越されたかと……。よくわからないです。」


ちょっと待って。「いなくなった」って言ったよね?

普通は「引っ越した」とか言わない??

ヘン。ぜったいに、ヘン。


「もしかしてその方、行方不明になっているのですか?」

「…………」

刑事さんは、何も答えません。その沈黙が、すべてを物語っている! それに加えて悪い目つきが、ほんの一瞬だけ泳いだ!! 前の住人、行方不明なんじゃん!!!!!

「ご夫婦らしき方のことを把握しているということは、行方不明になった方についてお二人が何らかの事情を知っていると思われたから、把握しているのですよね?」

「…………」

否定して! 否定してくれないということは、二人が関与してるってことじゃん!!! 


「あの……。この間、たまたま見たのですけれど、お隣の部屋、何にもナイのです……」


言うかどうか迷いましたが、行方不明者が出ているなら、言っておいたほうがイイと思う……。

勇気を出して言ったのに、刑事さんから鼻で笑われました。


「そりゃ、そうでしょう。あの部屋、何年も前から空き室ですから」


えええええっっっ!? じゃあ前の住人さんも、男女の二人も、不法侵入っっっ!? 侵入どころか、住んでましたけどっっっ!?

わたしノンキに、隣で暮らしてましたけどっっっ!? いったい隣で何があったのですかっっっ!?



「もし何かありましたら、署までご連絡ください」


もしって、何!? 何かって、何!? めっちゃ怖いんですけどっっっ!?


それから数日、ビクビクしながら過ごしました。あの二人が帰ってきたらどうしよう?と思うと、夜もおちおち寝られません。今まで平和に暮らしていたのに、ちょっとした物音でもビクビクする日々です。

結局、男女は二度と姿を現わしませんでした。今思えば、男女からアパートのことを聞いて、刑事さんが尋ねてきたのでしょう。そして二度と帰って来なかったということは………たぶん、警察に拘留されたんですよね………?? 拘留だけで、済んだのか????? 逮捕とか??????


この一件がどうなったのか、わたしは知りません。ニュースを追うヒマもないほど仕事に追われていたし、ウワサ好きなおいちゃんたちに話したら、尾ひれがついて話が歪むから最後まで話しませんでした。

そして「もう少し、収納が多い部屋に引っ越したい」という理由で、すぐ近くの新しいアパートに引っ越すことにしました。今思えば「治安が悪いから」っていう理由で引っ越せよ……。わたし、どんだけウッカリ生きてたんだ?? よく無事だったな……。


引っ越しの前日、おいちゃんたちが送別会を開いてくれました。


「このボロアパートに住むヤツは、夜逃げか死ぬかのヤツだけやった!」

「それなのにお前は、広いアパートに引っ越す! 偉い!」

「もう二度と戻ってくんなよ!」

「オレたちはここで、死ぬけどな! ガハハ!」

「今日は、祝いや!」

「カンパ~イ!!」


そして私は引っ越して、後に結婚して町を出ました。おいちゃんたちに会いたい気持ちはありましたけれど、気づけば長い時間が過ぎていました。

そして先日、ボロアパートを訪ねてみたら、ボロアパートじゃなくなっていました。キレイに塗り替えられて、コインランドリーも姿を消しています。ドアの数が前より減っていたので、部屋をつなげて広くしたのでしょう。きっとお風呂とトイレは別になって、洗濯機だって室内に置けるはず。

家賃はたぶん、高くなったと思います。おいちゃんたちには、払えない金額。おいちゃんたちは、どこへ行ったのでしょう? おいちゃんたちは、元気で暮らしているのでしょうか?


 荒っぽくて優しいおいちゃんたちに、いつかどこかで会えますように。どうかおいちゃんたちが、どこかで幸せに暮らしていますように。

祈ることしかできませんけれど、おいちゃんたちのことは忘れません。


しんみりしながらここまで書いて、ある事に気づきました。

不動産屋で「治安が悪い」と言われ、「何があっても文句は言いません」と誓約書を書かされた件です。

わたしを散々振り回したウソ山含め、不動産屋の全員!!

アパートで事件性のある「何か」の正体を知っとったから、わざわざ誓約書書かせたんや!!!!!


アパートの治安が悪いのは、管理会社のせいやったのか!?

めちゃめちゃタチ悪いやんけ!! ブラックやんけ! 真っ黒やんけ!!

わたしは一体、どんな危険に晒されていたのでしょう?????


この真実は、遠い過去にしかありません。

でも、かまわないよ! わたしは明るい未来に向かって進むから!!

わたしにも、あなたにも、明るい未来が待っている!!

後ろは、振り返りません!!!!!

進め! 進め! 未来に進め!


(完!!)








 











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