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百合とTSと悪役令嬢  作者: 宇奈木 ユラ
第四章 本当のヒロイン
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94 喪失と覚醒(Ⅲ)

 とにもかくにも、原作知識をキチンと持っている(わたくし)ですら展開がわからない事態になりかけている。

 ──まぁ、元から原作外れたことは起こってはいましたが。

 宮古杖助が好きになる相手が何故か月乃さんじゃなく、遠野花鈴だったり。

 そんなことを考えながら廊下を歩いていると、向こうから当の宮古杖助が歩いてくるのが見えた。

 なんとタイムリー。


「宮古杖助、良いところにいましたわ!」


「あ、え、な、何でしょうか!?」


 ぐいっと胸ぐらを掴んで廊下の端に移動する。

 さっと他人の目を確認した後に、こっそりと宮古杖助に尋ねてみる。


「最近の遠野花鈴についてどう思います?」


「と、遠野さんですか?」


 そう言うと、顎に手を当てて数秒考えこんで彼は答えた。


「残念です、記憶喪失らしいですよね。でも、まだ高校入って三ヶ月くらいしか経ってなかったのはある意味良かったのかも知れないです。人間関係の再構築は全然まだ間に合いますし」


 意外と理知的な回答をされた。


「い、いやいやそうじゃなくてさ!」


 そこですかさずに、あやめちゃんが割って入る。


「なんかちょっと様子違わない? なんか兆候?的なのない?」


「いきなり兆候って言われても」


 さっきの話で私が触れた兆候について尋ねるあやめちゃん。

 しかし内容的に要領を得ないからか、宮古杖助の反応はイマイチだ。

 当たり前だけど。


「記憶が一年分くらい無くなったって話だけど、私が言いたいのは()()()()()()()()()()()()()()()ってコトよ」


「様子が?」


()()()()()()()()?」


 正直、ここまできて私は半ば確信している。

 遠野花鈴は私と同じ転生者ではないか、と。

 私の場合は、幼少期のある時期に前世を思い出すきっかけがあった。

 しかし、そのきっかけが遠野花鈴の場合は()()()()()()()()()場合は?

 記憶を、前世を思い出す前の私は、まさしく本来の悪役令嬢・紫波雪風と変わらない性格と生活をしていた。

 あの時までの私は、限りなく本物の紫波雪風であった。

 記憶を取り戻したから、今の私になったのだ。

 なら、遠野花鈴も同じ条件だった場合は?

 今の遠野花鈴を遠野花鈴たらしめる、大きな要因(きおく)を失った彼女はどうなるのか。

 そんなの、答えは決まってる。

 窓からチラリと外を見る。

 そこにいる、傍らに月乃さんがいない遠野花鈴を。


 ──おそらく今いるのは、本物のラスボス・遠野花鈴だ。

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