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百合とTSと悪役令嬢  作者: 宇奈木 ユラ
第三章 主人公の誕生日は大抵波乱。
87/125

87 トラブル(Ⅲ)

 ▽▲▽


 嫌な予感がしてキノとトイレの方へ様子を見にいくと案の定、予感は的中していた。


「偶然とはいえ、いい場面でいたわね紫波」


 若干ガラの悪そうな女子三人組に、紫波雪風が絡まれていた。

 その三人組は、確かウチの学生だったように思う。

 まぁ、その線は紫波雪風の名前を知っているようなので確定か。

 問題は何故彼女が絡まれているかということだが──。


「アンタのせいで、パパからがっかりされたわ。どうしてくれるのよ!」


「調子に乗って、ただ親が金持ちだからってだけのくせに!」


「アンタ、いっつも周りに誰かしらいたから中々手を出せなかったけど、これはいい機会だわ」


 三者三様の罵詈雑言。

 それを聞いて、なんとなく状況を把握。

 ──これ、紫波雪風は悪くないパターンだ。

 おおかた、紫波雪風の実家目当てで近づこうとして失敗した奴らなのだろう。

 それで逆恨み的にボコしてやりたいけど、今までなをやかんや手が出せなかった。

 しかしたまたま今、いい条件が揃ったから手を出そうとしているんだろう。

 それを見て、ボクはバカな奴らだなと思い嘆息する。

 直接犯人がわかるように手を出したら、報復されるに決まってるじゃないか。

 しかも紫波雪風の実家は()()

 彼女の身に明確に危害が加えられたのなら、其方からどのような報復されるかわからないのか?

 ──わからないんだろーなぁ。

 やるなら犯人がわからないように間接的に、尚且つ明確な悪意と故意を隠して行わないと。


「──!」


 紫波雪風を助けようと不意に前に出ようとするキノを手をあげて静止させる。


「まだ出ないで。もう少し様子とタイミングを」


 今出てもダメだと彼女を抑える。


 まぁ、このまま紫波雪風が痛い目に遭うのが1番だけどな。

 自分から仕掛ける手間が省けてよかった。

 このまま散々な目にあえば良い。

 ボク自身の手を汚さずに済んで実にエコだ。

 さっきまでの準備は無駄になるけど、まぁそれはそれとして──。


 次の瞬間、ドンと割りかし大きな音が鳴る。


 三人の内のひとりが、紫波雪風の顔の横にある壁際を殴ったのだ。

 明確な暴力の発露、威嚇するような恐怖を煽る大きな音。

 それらに対し、紫波雪風は肩を大きく振るわせた。

 紫波雪風が見せた怯えに、壁を殴った少女の口角が僅かに上がった気がした。


 あ、これは本格的に暴力に発展する奴だ。


 他人事のようにそんな感想を抱いた。

 実際他人事だ。

 むしろ敵の事だ。

 このまま助けに入ろうとするキノを押さえて、ボコられる紫波雪風を見殺しにすればいい。


 ──いい、んだけど。


 なんとなく、彼女の表情がよく知っていた筈の少女と重なる。

 そして、なんとなく。

 なんとなく、そのよく知っていた筈の少女の声が聞こえた気がした。


 助けて、お兄ちゃん!、と。


 ──次の瞬間、ボクの足は知らずに駆け出していた。

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