80 ゲーセンにて(Ⅲ)
なんか既視感のある戯言をほざいた紫波雪風は放っておいて、まずはゲームセンターの何をどこから遊ぶのかを決めなければ。
プライス系は取れてしまったら嵩張るし、やるにしても最初は外すべきか?
アーケード系はニッチなオタク共がたむろしていそうだから外すべきか?
まぁ、色々考えることはあるが、今日の主役はキノだ。
彼女の意思は最優先で叶えてあげたい。
正直、これ以上紫波雪風に構いすぎると墓穴掘り進めるだけになりそうだし、ゲームセンターでは計画通りに策略繰り出さずに様子見としておきたい。
「ちなみにキノは何かやりたいゲームとかある?」
ボクが彼女にそう問いかけると、顎に少し指先を当てて考え始めた。
「プリクラとか私たち三人で撮りたいけど」
「オーケー、じゃあまずそこから行こう。ーー紫波さん、ぼけっとしてないで行くよ」
そう言って取り敢えずゲーセンの中に入り、プリクラコーナーを探すことにする。
ボクにデコピンされた紫波雪風がまだ半分惚けてたので後ろに回って両肩を押して中に進ませる。
「ぼけぇッとなんてしてませんわ! 暴力振るった側の言い方ですかそれ!?」
デコピン一発程度、今更なんだよな。
何度それ以上のことをしたか、未遂になってしまったか。
──今更、なんだよなぁ。
正直、なんかもうこの悪役令嬢は悪役令嬢ではない気がしてきた。
妙にポンコツ感があるし、どうにか陥れてやろうと躍起になっても空回りしている感じもある。
いっそもう紫波雪風に対する妨害工作等は止めるべ──き──。
▽▲▽
──ザ、ザザ。
ザザ───ザザザ──────ザ。
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ────。
▽▲▽
「ッ痛」
突然、ひどい頭痛がした。
思わず眉間に皺を寄せて、ボクはコメカミを手で抑える。
「どうかなさいました?」
「──いや、なんでもない」
紫波雪風が心配したように声をかける。
その姿に、何故か無条件に苛立ちを覚える。
今日もそうだが、ボクが立てた計画を悉く台無しにしつづけやがって。
だが、このゲームセンターでだって貶める作戦は考えてある。
せいぜい、それがキマるまで束の間の平穏を楽しむがいいさ悪役令嬢。
最後に笑うのは、ボクとキノだ。
そういえば、さっきまで何を考えていたのだっけ。
──ま、いいか。