75 ピンチとチャンスは紙一重(Ⅲ)
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「「いただきます」」
私と遠野花鈴はそう言って月乃さんより一足早く運ばれてきた坦々麺に口をつける。
服に汁が跳ねないように、慎重に麺を啜る。
腰のある中華麺に絡みつくラー油の刺激とごま油の香り、コクのあるスープ。
別に大衆店を馬鹿にはしないけど、なんやかんや普段はイイモノ食べささっていてある程度舌は肥えてる私ではあるが、素直に美味しいと賞賛できる味だった。
「どう? 美味しい感じ?」
「えぇ、美味しいですわ」
そう月乃さんに答えて、私は引き続きズルズルと麺を啜った。
──だが、ここで違和感に気がつく。
遠野花鈴が坦々麺に手をつけてない。
それどころか、ギョッとした表情でコチラを見つめてる。
「遠野さん?」
「──あ、えっと、な何かな?」
「私の方をじっと見つめて、どうかなさいました?」
単刀直入に、サクッと聞いてみる。
すると彼女は何かを取り繕うように、やや早口で捲し立てる。
「えーと、紫波さんはか、辛くないのかなって? ほら、こういうのの辛さって店によりけりだからさ!」
彼女の質問の意図が理解できずに、私は小首を傾げた。
「坦々麺ですから、辛いは辛いですけど」
確かに辛い、全然美味しく感じる範囲ではあるけど。
激辛的な感じじゃ無く、ちゃんと美味しい辛さだ。
そもそも、何故彼女がこんなこと聞いてきたのか。
私がそんなに辛いの苦手そうに見えたのかな?
でも坦々麺の辛さなんて、人に聞くより自分で食べてみた方が手っ取り早くわかるだろうに。
「遠野さんも同じの頼んでるのですから、自分で食べて見ればいいのでは?」
「──まぁ、それもそうだね」
そう言って遠野花鈴が自身の坦々麺の麺を箸で摘み、一息に啜る。
次の瞬間。
「げぼぐぁっはッああ!?!?」
なんか、盛大に咽せた。
「大丈夫!? お水お水!」
月乃さんが半立ちになり、急いでお冷を遠野花鈴に渡す。
遠野花鈴はソレを呷り一気に飲み干すと、顔を真っ赤にして目を白黒させる。
ぜぇぜぇと肩で息をしながら何故か私の方を睨みつける。
え、いや、私何か悪い事しました?
何となく悪い気がしてさっと視線を逸らすと、その先にミオちゃんが見えた。
彼女は、私の視線に気がつくとにっこり笑ってサムズアップを見せる。
まるで「いい仕事したでしょ?」と言わんばかりの仕草に私は更に困惑した。




