71 昼食にて(Ⅳ)
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ミオちゃんは、昔から私のお世話をしてくれている子だ。
身長は160センチくらいで、栗色の緩いウェーブのかかったセミロングの髪に優しげな顔立ち。
年齢は26歳ではあるけど、少し童顔なせいか実年齢より若く見られがち。
そして何より、所謂ボンキュボンというような歩く男性殺しのナイスボディ。
屋敷では主に炊事洗濯生息などを担当して、いつもぱたぱたと忙しく立ち回っている彼女が、何故かこの中華料理店にいた。
それも髪型を黒髪ポニーテールに、化粧もちょっと変えて、簡単な変装をして。
な、なんでミオちゃんが──。
内心の動揺を必死で隠しながら、私はふたりに隠れてテーブルの下でスマホを起動させ素早くフリック入力を始める。
事情を把握する為のメッセージを送るのだ。
今ミオちゃんに送ってもフロア業務をしている彼女は返信できないだろう。
だから相手はミオちゃんじゃなく、多分大体の事情を知っているであろうフブキだ。
入力している間に月乃さんと遠野花鈴がメニューを見て何を食べるか話をしているが、私はそれどころじゃない感じ。
気が気じゃなくて、適当に返事を繰り返しながらようやくメッセージ文章を完成させて送信。
すると即、スマホが震える。
──電話かかってきた!
「す、すいませんちょっとはずします!」
私はそう言って席を立ち、店の外へ小走りで出た。
そして人目に付きにくい場所に移動すると、通話ボタンをタッチした。
「もしもしフブキ!?」
『はい、フブキです』
スマホからフブキの落ち着いた低い声が聞こえた。
「な、なんでミオちゃんがここにいるのよ!」
『ミオは心配性ですからね、妹のように可愛がってるお嬢様が始めてご友人と遊びに行くのを心配して、ちょっと様子を見てくると言ってました』
「なんで止めなかったの!? あと何で餃子屋に!?」
『ファイヤー餃子道場──というかそのショッピングモールのメインスポンサーは紫波一族ですのでやりようはいくらでもあります。あと、ミオがやりたいことを私が止めるとお思いですか?』
知らなかったアンドそうだった。
お父様たち、ココのスポンサーだったんだ!
それならなにかしらの優待券とか強請っておくんだった!
そしてフブキは実妹のミオちゃんにはダダ甘い性格だった!
甘さはも少し私にも分けて欲しい!
ここで、まさかの突発児童参観みたいな状況に私は思わず天を仰いでしまった。
──そこに青空はなく、無味乾燥な白天井なのがちょっと悲しかった。