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百合とTSと悪役令嬢  作者: 宇奈木 ユラ
第三章 主人公の誕生日は大抵波乱。
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65 映画館にて(Ⅳ)

 ▽▲▽


 今世では初めての映画館。

 劇場内の独特な雰囲気に少しドキドキする。

 この雰囲気の正体は、なんなのだろう?

 窓がない閉塞感が原因か、それとも防音が効いていて音の反響具合が違うからなのか?

 ーーそれとも友達と来ているからか。

 そんな事を思いながら、(わたくし)は席に座り右側のドリンクホルダーにドリンクを入れた。


「ーーは?」


 突然、(わたくし)の左側に立ったままの遠野花鈴がそんなことを呟いた気がした。


「どうかしまして?」


「あ、いやなんでもない」


 そう言って彼女はストンと隣の席に腰を下ろす。


「あ、あのさ!」


 しかし次の瞬間、意を決したようにこちらに食い気味で話しかけてきた。


「ドリンクホルダー、こっちを使ってもいいよ? 紫波さん左利きでしょ?」


 そんなことを聞いてきた。

 なんだそのことか。

 てっきり、知らないうちに何かやらかしちゃったのかと思った。

 いや、それとも遠野花鈴のことだから何か私に対してやろうとしているのか?

 ーー、考えすぎだよね。

 いくら遠野花鈴でも月乃さんの誕生日に水を差すようなことはしないだろう。

 それに今は映画館の中。

 周りに他の人が大勢いる中で何かするわけがないか。


「大丈夫ですわ。私だって映画館では右側のを使うのがマナーだって知ってますわ」


 以前、ミオちゃんが言っていた。

 屋敷のシアタールームで映画を見る時にーー。


「映画館のドリンクホルダーは右側を使うのがマナーですよ。日本人は右利きが多くて、右側をみんな使えば丸く収まるのに、誰かが左側を使うとズレが生じてトラブルの原因になっちゃったりしますから」


 それを聞いて、成る程なと納得した。

 こんな些細な事でトラブルに発展するのか、そんな心が狭い人が多いのかという疑問はあれど、些細な気遣いでトラブルを回避できるならそれに越したことはない。

 そういう訳で右側を使っていたのだが、遠野花鈴は変に気をまわしてくれたらしい。

 そもそも、彼女も多分右利きだろうに。

 私が左側に置いたら不便でしょう。

 ーーそれに、彼女の先程の発言には一つ間違いがあった。


「あと、私は()()右利きですわよ」


 元々左利きだったのを幼少期に右利きに矯正されました。

 まぁこの社会は右利き向きにデザインされているので、右利きの方が色々と都合が良いのは事実で。

 幼いうちに矯正してくれてありがとうという感じ。

 今では板書をはじめ大体は右手でやっているが、時たま左利きみたいな使い方をする場面があったりする。

 缶ジュースのプルタブ開ける時とか。


「え、あ、そうなんだね」


 私の回答に対してそう言った遠野花鈴はスンと戻り、席に姿勢を正して座り直した。


 ーー何故だろう、妙に顔が引き攣っていた気がする。

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