51 愛の告白はこうするんだ!(Ⅱ)
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校舎の隅。
人気のない場所に移動して、さっきの封筒を開封する。
中には予想通り手紙。
内容はーー。
「なになに、『伝えたいことがあります。本日の放課後、屋上にておまちしています』か」
内容もまた予想通り。
いや、若干予想より簡素というか簡潔というか。
この文章のみで推察できることは少ないが、多分告白されるか、それに近しい事態が待っているんだろう。
ハートのシールで封をしてあるのだから、そこは疑わなくていいはず。
差出人も内容だけだとそうだとわかりづらいから、敢えてあのシールを付けたんだろう。
「差出人の名前は無し。筆跡はーー駄目だな」
手紙の文章は全て定規を当てて書いたような、やや不自然さを感じる筆跡になっていた。
筆跡がわからないとなると、この時点での差出人はちょっと探せないかもしれない。
取り敢えずスマホを起動させて、アルバムを開く。
中身をざっと確認するけど、やはり無理そう。
一応、同学年の生徒の筆跡資料は記録して一揃えてあるんだけど、今回は役に立ちそうにない。
教員に頼まれて回収した課題とか、勉強の為と嘘ついてみせて貰ったノートとか。
各種をスマホで記録しておいてるんだけど、特定は厳しめ。
「まぁ、時間をかければ絞り込めなくもないけど」
筆跡と筆圧はわからないけど、この文字はどうやらシャープペンシルで書かれている。
それなら、この文字を書いた芯の強度とシャープペンシルのザックリとした種類は特定できそう。
別途該当するペンと芯を使ってる人物をピックアップすればーー。
「ーーいや、今回は無理か」
だが、これをするには時間がかかりすぎる。
期限が今日の放課後となってるのに、特定作業にかかる時間は2〜3日はかかりそう。
これでは割に合わないし、意味がない。
「一応、指紋も取れそうだけど、取ったところでなぁ」
指紋まではまだ集めてないから、取ったとて特定には繋がらない。
ーー今度から、指紋も集めるか。
「さて、どうしようか」
なんか、ドキドキしてきた。
それも変な風に。
改めて、ボクは不測の事態に弱いらしい。
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「月乃さん、遠野花鈴の様子に何か変わったところはありますか?」
午前中の中休み。
授業と授業の合間を見計らい、私とアヤメちゃん、月乃さんと杖助くんの四人は一目に付きづらい階段の隅に集まっていた。
昨日の喫茶店で話し合って、今日遠野花鈴の下駄箱に杖助くんが書いたラブレターを放り込んだーーはず。
「それが、全然いつもと変わらない感じで」
普通ラブレターなんてもらったら、その気がなくてもソワソワしてしまうもの。
それなのに、そんな様子がないなんて。
「本当に入れました?」
「い、入れましたよ! ま、間違いなく!」
杖助くんに確認の念押しをするが、どうやら杞憂な様子。
しかし、なんかちょっと不安が残る。
「だ、大丈夫ですよね?」
「だ、大丈夫よ! 私たちみんなで完璧なプランを考えのだから!」
少し不安に駆られるアヤメちゃんに対し、謎の自信で励ます月乃さん。
ーー本当に大丈夫かしら。
我がことながら、不安になってきたぞ。