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百合とTSと悪役令嬢  作者: 宇奈木 ユラ
第二章 攻略対象②宮古杖助
39/125

39 悪役令嬢、決意する

 ▽▲▽


「どーみても罠よね」


「どーみても罠っすよ」


 午後、体育の授業中。

 体育館の隅、壁際で三角座りをしながら休憩中の私とアヤメちゃんは、クラスメイトのバスケを見ながら昼休みに起こった話をしていた。

 話の内容は、やはり遠野花鈴が私を遊びに誘った件。

 最近開いてしまった月乃さんとの距離を再び縮める為にはちょうどいいイベントではあるものの、やっぱりどう見ても罠にしか思えない。

 ()()遠野花鈴が友好的な理由で、私を休日に遊びにさそうはずがない。


「そういえばなんだけど、そもそも原作では月乃さんと遠野花鈴が休日に遊びに行っている描写って殆どないのよね」


 メタ的な理由だと、休日は全部攻略対象絡みのイベントに費やされるからなんだけど、こうして女子高生として見てみると不自然な感じがある。

 普通は、彼氏とか男の子関係と同じくらい同性の友達も大切にしないかな。

 そう考えると、月乃さんと遠野花鈴の関係はある意味ビジネスフレンドというか、学校の中だけの関係に見えてしまう。

 

「もしかして、あのふたりも実はそんなに仲良くないのかも知れないっすね」


 まぁ、遠野花鈴は黒幕(ラスボス)だったんだから仕方ない。

 けど、そうすると月乃さんは本当の意味での同性の友達がひとりも居ないのかもしれない。

 それは、少し寂しいかもしれない。

 四人の攻略対象とは友好的な関係を築いたかもしれないけど、彼氏彼女と異性の友達と、同性の友達じゃあジャンルが違う。

 女の子同士じゃないと埋められない寂しさをだってあるし、分かち合えない喜びだってある。

 私は月乃さんのことが好き。

 だから彼女にはいつも笑ってて欲しい。


「私がちゃんと、彼女の親友になれたらいいのに」


 そう思い、呟く。

 しかし、本当にそれは可能性なのか。

 私は紫波雪風(あくやくれいじょう)

 どのルートでも彼女の敵であり、いずれ彼女の元から退場するキャラクター。

 そんな私に、友達になる価値があるのだろうか。


「頑張ってみればいいじゃないっすか」


 悩む私に、アヤメちゃんがそう声をかける。


「頑張ってって言われても」


「努力はタダです。徒労はあるかもですが、裏目ってあんまり無い気がするんですよ」


 なんとなく、軽い感じで彼女は言う。

 しかし、それは彼女が言うことで別な重みを持った。

 アヤメちゃんは、早くに父様を亡くしている。

 母様も病気がちな上に、幼い妹と弟がふたりも。

 だからこそ、かつては常にギリギリの危うい生活を続けていたそうだ。

 そんな中、紫波家使用人の募集をたまたま知り、厳しい審査の上で合格。

 結果、今では不自由なく生活できているらしい。

 使用人研修は非常に過酷で、途中でリタイアする人も多い。

 そんな中、頑張って生き抜いたのが、アヤメちゃんだ。

 彼女は、その明るい性格からは想像できないほどの()()()()だった。

 だからこそ、頑張るの重みが違う。

 頑張れば大丈夫だという言葉の信憑性が違う。


「ーーそうだね、頑張ってみるよ」


 どんなことが起こっても月乃さんの側にいるような、友達に!

遠野花鈴が休日の友達付き合いが悪い理由が「実は男の子だから、月乃を騙してるようで申し訳ない」ってことだとは、紫波雪風はまだ知らない……。

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