14 モブ彦とモブ雄
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放課後なりたての校舎を全力疾走する私たち。
向かう先は、二年生の教室。
狙いは、件のサボってる先輩部員の確保!
取り合えず捕まえて事情聴取をしようと思ったのだ!
ーー見えた!
「失礼いたsーー!!」
顔面、というかほぼ全身に衝撃。
そしてばたっと体が倒れる感覚。
2秒くらい何が起こったかわからないでいたけど、ようやく私が勢い余って二年生教室のドアに激突したことを認識しました。
しかも、ドアも壊した感じですわ。
「「「ーーーーーーー。」」」
沈黙が、痛い。
真後ろからアヤメちゃんがドン引いてる気配がする。
教室に残っていた先輩方も、固まって動けないでいる。
「あ、あの大丈夫?」
そんな中、上級生の優しいお姉さんが私に声をかけてきた。
その優しさが目に沁みて、涙がこぼれそうになる。
痛みをこらえて立ち上がり、いつもの悪役令嬢を演じる仮面をかぶる。
「この中に、剣道部に所属している方々がいらっしゃるとお聞きしていましたのだけれど、それは何方かしら!!」
突然のことで、むろん答える人はいない。
ーーしかし、ほぼ全員が同じ方向をちらりと見た。
視線の先にはふたりの男子生徒が、今にも教室を抜け出そうとーー。
「アヤメちゃん!!」
「よし来た確保ぉぉおおお!!」
私のすぐ側から飛び出した彼女は、どこからともなく縄を取り出した。
「え、あ゛っ!?」
「ちょ、な何!?」
一瞬にして例の怪しいふたりを捕縛。
これで目標の第一段階は終了。
あとは話を聞き出すだけ。
「突然ですけどおふたり共、話がありますのでご同行を」
そう言って私たちは一旦この場を後にする。
ただならぬ雰囲気に押されてか、ふたりは大人しくついてきた。
▽▲▽
「さて、まずおふたりの名前を聞かせてもらえないかしら」
たまたま近くにあった空き教室に連行し、縄で縛ったままのふたりを床に座らせて私は机の上に座って足を組む。
彼らが状況をどう認識しているかはわからないけれど、取り合えず向かって右側の人から口を開いた。
「お、俺は花巻信彦」
「矢巾元雄っす」
「ーーえ、モブ彦とモブ雄?」
「ちげーよ、どんな耳してんだ!?」
なんか怒られた。
弁明すると、こんな聞き返しというか空耳をしてしまったのには少し理由がある。
実はこのふたり、容姿がそっくりなのだ。
男子高校生の平均値ぐらいの高すぎず低すぎない身長と、まさしく中肉中背な外観。
髪型もこざっぱりした「あー運動部なんですね」って感じになっていて、ルックスも不細工でもイケメンでもないなんとも言い難い平均値やや下あたり。
若干髪色の濃淡に違いがあるかも、ってくらいしか見分けがつかない。
「ちなみに、おふたりに血縁関係は?」
「ねぇけど?」
無いのに、こんなに似る?
そんなの不自然じゃーー。
ーーいやまて。
確か、このふたりの名前聞き覚えがある。
そうだ!
原作にもふたりちゃんと登場してた!!
ただ、固有の立ち絵がないモブだったけど。
正確には、名ありのモブ。
実際にゲームプレイしてた私でも存在を忘れるくらい出番も印象もないキャラだった!
ーーということは。
「やっぱり、モブ彦とモブ雄で合ってるじゃない」
「「合ってねぇよ!!」」