13 計画変更(Ⅱ)
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剣将くんのトコをはじめて手伝ったその翌日。
私とアヤメちゃんは本日の終わりのHRを教室で聞いていた。
「ーーであるからして、問題行動が」
この担任、相変わらず話が長い。
教師というのは、年齢と話の長さが比例するものなのかしら。
ちらり、と横目で離れた席に座るアヤメちゃんを見る。
彼女もまた、私と同じく机の脇のスクールバックにいつでも手をかけれるような体制を取ってる。
臨戦態勢だ。
目の前のバーコード頭が話し終えるその瞬間を、虎視眈々とうかがっている。
「ーーと、言うわけで解s」
「「さようなら!!!!」」
ミスターバーコードの長話が終わった瞬間、私とアヤメちゃんは席から立ちあがり全力疾走した。
「まーにーあーえー!」
そう叫びながら向かう先はーー。
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「ーーで、これからどうします?」
アヤメちゃんはを道中で説得した帰り道。
彼女は私にそう聞いてきた。
「どうって、どう?」
「だから、今きたふたりとも一緒にしばらくやってくんですか?って意味です」
アヤメちゃんの言葉を受けて、私はうーんと頭を悩ませる。
いやまぁ、手伝う人数が増えたのはいい事には違いないんだけど。
せっかく月乃さんと剣将くんのイベントが発生したっぽいのに、私たちがいるとお邪魔かもしれない。
これで本当に邪魔でしかなかったら、本当に原作どーりの悪役令嬢になってしまう。
それは、なんというかよろしくない。
あくまで理想は、私の破滅を回避しつつ月乃さんもハッピーエンドに到着させることなのだから。
だから、月乃さんのルート進行は特別な事情がない限り妨害ないし阻害するのはダメだと思う。
「滝沢さんの隣にいたのが、いつもユキちゃん様が言っている悪い奴なんですよね」
「そうなのよ」
本来なら身を引くのが正解かもしれないが、その判断を迷わせる要因がソレだ。
遠野花鈴が月乃さんに引っ付いて介入してきたことだ。
彼女の本性を唯一知っている身としては、今回の介入も裏がある気がしてならない。
そもそも彼女、原作ではそんなに月乃さんにべったりって訳じゃなかった。
それなのに今回ーー。
「私たちが遠野花鈴を道連れにできれば、うまく収まりそうなんだけど」
「え、急に怖いこと言わないでください」
ちょっと怯えた風なことを言い出すアヤメちゃん。
「ユキちゃん様的なベストって何ですか?」
「しいて言うなら、剣将くんと月乃さんの仲を深めつつ、なるべく早期に遠野花鈴を今回の件からの排除。そののち私たちが壁になれれば最高ね」
「か、壁ですか」
何故か引きつった表情。
いいじゃん壁。
みんな壁になって推しを見守ろうよ。
私、案外ウォールマリアに埋まってた巨人の気持ちしっかり理解できるよ。
あの巨人たちも多分人類推しだから。
食べちゃうくらい好きだったんだから。
「あと、でもーー」
ここで私は、計画になかった我儘をひとつ、彼女に言った。
「困っている剣将くんに助けるって言っておいて、途中で投げ出す形になるのは、なんか嫌だなぁ」
計算とある意味下心ありで様子を伺いに来た私たちを疑いもせず、困ってるならって迷わず助けようとしてくれた剣将くん。
ーー彼の恩義には、報いたい。
それは本当に、私個人の我儘でしかないのだけれど。
「ーーまったく、アヤはそういうところ大好きですよユキちゃん様」
なんでか笑顔で私の我儘を受け止めて、そう答えたアヤメちゃん。
そして彼女はこんなことを言った。
「じゃあ、根本的な原因である剣道部員のボイコットを解決させましょうーーただし!」
そこでアヤメちゃんは言葉を区切り、いたずらっぽくこう付け加えた。
「ーー手柄は滝沢さんに総取りさせますけど」