123 友人キャラ、真実を知る(Ⅰ)
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長いこと椅子に拘束されたままのボクは暇を持て余し、暇つぶしに四島に話しかけることにした。
「ところでさ」
「──君、なんか友達感覚で誘拐犯に話しかけるよね。いやまぁ、別にいいケドさ」
一体何だいと、若干辟易したように四島は言う。
「以前、ちょっと違和感を覚えたことがあってね。ゲーム作った側の意見を聞きたいんだけど」
「──ほう?」
四島が佇まいを直して、こちらの話を聞く姿勢を見せる。
この四島某は転生してきた側の人間でありながら、原作者でありずっと前から暗躍していたと宣った。
色々と検証実験もしたとも。
ボクに足りない原作知識やこの世界の摂理なんかに通じている可能性が高い。
「紫波雪風に対して好感を持とうとした瞬間、頭にノイズが走った様な感覚があった」
三人で出かけたあの日にあった出来事だ。
紫波雪風は敵では無いのではと思った途端にノイズの様な酷い頭痛を覚えて、次の瞬間には──。
「そして、そう考えられなくなった」
認識を無理矢理もとに戻された様な、矯正されたかの様な。
あの瞬間は兎も角、思い返してみると如何にもおかしい。
──あまりに、不自然極まりない。
四島は顎に手を当てながらしばらく黙り込んで熟考した後、口を開いた。
「おそらく、修正力だ」
「修正力?」
耳馴染みのない単語がその口から飛び出してきた。
修正力、シュウセイリョク、修正──力?
何の、何をどう修正する力だ?
いや話の流れからして、もしや。
「キャラの軌道修正する力?」
「大正解」
パチンと指を鳴らしてカッコつけて四島はボクの解答に花丸をつけた。
「どうやらこの世界では、役割を逸脱した事をしようとしたり考えたりすると一回だけ修正が働くらしい」
俺も経験がある、と彼は付け加える。
確かに、今原作者として行動してる四島は元の先生とは明確に別モノと言わざるを得ない。
修正力が働くのは一度きり、次以降はない。
それを聞いて、ボクは胸を撫で下ろす。
これ以上不確定要素に翻弄される訳にはいかないからね。
でも、それだと一つ疑問が残る。
「何で友人キャラの遠野花鈴が紫波雪風に好感を持つことが修正対象になるんだ?」
友人キャラというのは基本中立というか、主人公側にはいるけどその他キャラとの関係性は割とフラットで公平の筈では?
「ん、そりゃお前──」
ここでさらりと、なんて事なさそうに。
「──お前、友人キャラじゃないからな」
四島某は、衝撃的な事をぶちまけた。