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《四日、目。“報告”を、ーー聞く。》

 初登校から数えて四日目の、謂わば放課後。帰宅する前に佐木 隼人は隣宅へと上がった。今日は陽藍が在ると知っていたからだ。リビングで出迎えたのは、海で在った。三歳児のどや顔が。彼は今日とて、むかついた。“うざい”と。



 海はそれ程のどや振りだった。





 「………………なんだそれ…………おまえ…………」



 隼人は呆れ切った眼差しを三歳児へと傾けた。いいや。本心から呆れたのだ。海の周りには菓子箱やら何やら散乱して在たのだ。それも。全て高級品だった。箱を見れば判る程の。海はうざ目のどや顔で答えた。



 「お兄ちゃん達と、お父さんからだもん。“お給料”だよ。僕“仕事”したもん(・・・・)っ」と。



 「…………。はあ?」ーー思わず隼人の口からはそう零れ落ちたので在った。“阿呆なのか?”と。“食べ切れ無えだろ”ーーと。




 ×   ×   ×




 その“夜”の、事だ。華月邸を訪れたのは、敦之だった。“弟”と共に。××××






 出迎えた“海”は拗ねて泣いて在た。“巧”に“嫌々”しながら。××××××






 「敦、兄ちゃん。“いつき”兄ちゃん………も。」“巧”はそう言った。樹は軽く手を上げて返した。



 敦之は無言で、海の横に座った。そして。“海”を“良し良し”した。慣れた手付きで。××××




 ×   ×   ×



 敦之に頭を撫でられ、宥められた海だったが、機嫌は直らなかった。其処で敦之は樹に視線をやった。樹と共に運んだ“紙袋”を。海の前にどさどさと置いたのだった。“代わり”だと。



 「卓君達に聞いたから、“同じ奴”だろ? 此れで泣き止めよ。 良いか? 海ーー“隼人”の“馬鹿”は、まともに相手にするなよ。 “治らねえ”んだから。 な? ほら。沢山有るから、巧にもやれよな?」



 “海”は不満そうに、何時迄も泣いて在た。ーーーー“大人気無いよ”と。“そうでしょう?”と。聞かれた敦之は眉を顰めて答えた。“勘弁してやれよ”と。




 ×   ×   ×



 取り敢えずひとしきり泣いた海は答えたのだった。“マフィン食べる”と。



 「巧、“お茶”淹れて? 僕“紅茶”が、良い。あ、“お父さん”もう“帰って”、来る? お母さん未だ“終わらない”のーーかな? ねえ? 巧? お父さん何て言ってたの?」



 父陽藍は仕事に出ている妻を迎えに行ったのだ。ついでに仕事バイト中の息子や習い事に行っている息子達も、拾ってから帰宅するらしい。なので敦之と其の弟の樹は陽藍に留守を頼まれた。いつもなら巧が居るのだから頼んで来ないのだが、今日は違ったのだ。夕方やって来た隼人のせいだった。陽藍が海をリビングに置いて。ほんの少し目を離した隙だった。リビングでご褒美の菓子箱に囲まれて御機嫌だった筈の海の泣き声が聴こえたのは。ーーーー



 リビングに駆け付けた陽藍が観たのは。泣いている海から“菓子”を奪って食べる“隼人”の姿だった。



 流石に陽藍は泣く海を宥める為に、隼人を追い出したので在った。叱らずとも。××××






 海は菓子を獲られて泣いた訳では無い。隼人に負けた為に“泣いた”のだ。悔し泣きだ。海は此れでも“負けず嫌い”だった。××××××




 敦之は溜息で従兄弟海を抱き上げた。未だ小さき海は、抵抗もせずに素直に彼に抱えられた。敦之の懐は温かかった。なので海は漸く安堵したのであった。今外出中の、“陽藍”を、思って。陽藍の腕の中と似ていたからだ。××××××泣き疲れた為の、眠気も在った。




 「あっ、敦兄ちゃんっ! 海を置いてっ。眠っちゃうからっ。海、起きて! ごはん未だでしょ!」



 兄の巧はそう言ったので在った。海は些かそれで不機嫌が戻ったのだ。嫌々と敦之の胸に、訴えた。敦之が巧へ何か言っていたが。既に海の耳には、聴こえなかったのだった。××××××
















 ×   ×   ×



 「ーーで。寝ちゃった、か。」



 「あー………ごめん。」



 謝罪した甥っ子へ陽藍は“気にするな”と笑みで返した。横で彼の妻が言った。“残念”だと。陽藍の妻“友美”は、帰りに話を聞いて購入して来た“生菓子”を抱えてみせた。“起きないかな?”と。





 「敦、樹、駄目にしちまうから、食べて行けよ。」


 叔父、陽藍に兄弟はそう言われて、好意に甘える事とした。ついでに彼等は未だだった夕飯も、御相伴に与る事とした様だった。××××××








 「ーーで? “友”ーーそろそろ御前も“怒って”みたら如何だよ? 海が流石に可哀想(丶丶丶)だろ?」



 “敦之”は不貞腐れて在た友へと、そう言ったのだった。其の横の“青”が、否定した。“無駄だ”と。



 「良いよ、敦之。放って置いて。隼人なら僕が後で“じんわり”と“理解らす(丶丶丶丶)”から。友は大人しく、させて置いて。ーー」と。




 友は無言だった。ーーーーーーーー







 溜息を吐いた敦之は代わりの話題を振った。“陸君は?”と。



 ×   ×   ×



 「こんな時間まで、帰って来ないの? てか何してんの? あのひとーー」と。



 「さあ?」



 「“勉強”か“デート”か、『野暮用』の、三択かな? な?」と。



 華月家の兄弟達は暢気な口調で、そう答えたのだった。呆れた樹は言葉失って在たのを、敦之は目撃たのだった。××××××





 “ケーキ”と“マフィン”でティータイム済ませた兄弟は、自宅へとそうして戻って行った。××××××兎にも角にも“友”の謹慎明け迄は後“三日”、けれど週末を挟む故に友が実際に学業に復帰出来るのは週明けだった。そして友は“反省”の“証拠”に。ーーーー“一ヶ月間”の、“仕事禁止”だった。××××××其の間の“埋め合わせ”は。なんと“海”が、“務める”ーーと。兄“卓”と父から“お願い”された海は。引き受けたのだ。“会社”を潰さない“為”に。



 海を連れた陽藍はそう、先日の、事。友が今回迷惑を掛ける相手へと、謝罪をして回ったのだ。



 海を連れて行った事と、徒歩だった事にも、きちんと意味は在った。陽藍の車は謂わば高級車の部類で。そんな物で乗り付けて謝罪と云われても人とは何処か釈然としないもので在ろうと、陽藍が海に言ったのだ。言われる迄も無く三歳の息子は“そうだねお父さん”と、答えた。××××××





 連れて行かれた“海”は。








 謝罪は勿論で。ーー小さな子供が。それも見目更に天使の様な美少年が、歳の離れた兄の“失態”を、懸命に謝罪して来るーーのだ。更には。兄の“代わり”に、働くとーーいう。つまり。



 代わりに“モデル”を、務めると。渋い顔を見せた処も勿論あったが、其の大半は却って歓喜していたのだった。其の位“海”の手腕(・・)は優れて“在た”のだ。海は言ったのだ。陽藍達に。



 “大好きなお兄ちゃんの為に”と。「僕、頑張るよ!」と。他の息子に其の役を振っても弊害無かった陽藍だったのだが、彼は敢えて海に頼んだのだ。又それは兄・卓としても同じ理由だった。けれど。






 そんな“事情”を悟れる事無き“佐木 隼人”には、滑稽に“視え(丶丶)た”ーーのだ。“海”が。菓子箱に囲まれて只甘やかされて居る(丶丶)だけの、三歳児(ガキ)ーーだと。




 強いていうならば未だ年端行かない此の海が。年離れた兄達に特に溺愛されていようと、何も特別に可奇怪おかしな事等では無いので在るが。佐木 隼人の瞳は謂わば“曇って”在た。何故ならば海とは其れ程“異様”な存在だからだ。隼人は海の側に“居る”のが、『恐かった』ーーのだ。其の“理由”を今の此の隼人が“知”る事は“無い”ーーのだが。“敦之”や“和希”は、知って“在”たのだ。理由ならば“海”が、危険(・・)だからーーだ。




 華月 “海”とは“彼等”全員に取って良くも悪くも特別で特殊な“存在”なのだ。佐木 隼人には“未だ”、教える事は、出来無かった。“何故”、か? それは隼人が未だに“未熟”故にーーだ。佐木“隼人”とは自分が“何”なのか、知らないーーのだ。誰も未だ“話せぬ”故に。今は隼人は自覚するべきでは、無いのだと。





 つまり。





 “佐木 隼人”とは、“神”の『息子』だった。



 父『夏央』が、今は無き星の『神』だった故に。夏央は陽藍とは『古い知り合い』だ。それこそ遠い遠い“前世”からのだ。佐木 隼人は“知らない”のだ。今は未だ。“話せ無い”のだ。“前例”有る“故”に。





 海が寝てしまった華月家で彼等が話して“在た”のは。“そんな話”ーーだった。“隼人には未だ(丶丶)早い”と。





 「“海”にもーーな。」と。言われた敦之は「“理解ってる”よーー」と、応えた。樹は渋い顔のままだった。




 巧が陽藍を呼んだ。“もう寝るね”と言われた陽藍は、“ああ”と応えてから、巧を少し待たせ、盆に持った海の夜食を持たせた。“きっと目が覚めてお腹空かせて泣くだろうから”ーーと。受け取った其れはとても小さなカラフルなお握り二つと、海の好物の甘い玉子焼きと、冷めても飲めるスープの入った容器だった。“熱いままだと海が火傷するからな”と、巧へ父は笑ったのだった。“おやすみ”と、頭を優しく撫でて。




 

 “海君の、お夜食”〜



 (※本日の、)メニュー〜



 “カラフルひとくちお握り”。〜にんじんキューブ、グリンピース入り、ドライピラフ風おにぎりと、


 手作り鮭フレークと、刻み乾燥わかめ入り、型取りお握り。(※くまさん型)



 スープ〜ほうれん草と、豆乳の、ミキサー掛け、ポタージュ。にんじんジュレ添え。



 玉子焼き〜卵1個、お砂糖適量、みりん、塩、マヨネーズ、固まり難く、焦げ易いので、手早くささっと、段取り、良く。(巻きましょう〜)〜以上、陽藍君の、お料理講座でした〜m(_ _)mぺこり

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