《新学期》
二学期が始まった。流石に隼人は実家へと戻った。誰に云われた訳でも無かったが。勿論、父と話せた或の日から、“帰ろう”とは思っていたのだ。隼人の家出等無かったかの様に、父と母とは“変わらない”態度だった。帰れば普通に“お帰り”と言われ、拍子抜けもした。気不味い隼人は居場所に困ると兄の処に時折避難もしたが、一晩も泊まると自宅へと自ずと戻る様に為ったのだった。そんな“夏”の、終わりだった。
だが、隣宅はそれでも“しん”としていた。××××
流石に学校も有るので、新学期迄には戻るのだろうと思った隼人の考えとは、裏腹に、巧すら戻った気配が無かった。隼人の中で今一番事情、事態を聞き易い華月家の五男に連絡した処、彼は“今僕は仏だけど?”ーーと、返信が来たのだ。
つまり。
五男青は其の弟、“悠太”を連れて、仏へ行っているらしかった。「留学かっ?!」と聞いたら、「は?仕事だけど?」ーーと、返されたのだった。
青はヴァイオリニストだ。レコーディングで仏に行っていた。勿論休み期間を利用してなので、戻って来る筈だが。××××
隼人は不安だった。“取り残された”様で、だ。××××××××
其れでも思いとは裏腹に、時は過ぎる。つまり夏は、終わったのだった。無情の様にも。××××××××××××
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だが此処でも。“予想”とは裏切るものなのだと、隼人は知ったのだ。
「……………………“友”………………。」
隼人はそう呼ぶとも無しに、口を突いたのだった。勿論当人が其処に“居た”からだ。××××
「何隼人? あ、おはよう。おまえ“遅い”から、“先”来たぞ? て、まあ、“いつも”だけど、な」と。
“友”は返した。至って“普通”だった。××××××
「………………、お前…………“映画”って………」
隼人は思わず、そう言った。友は何とも無しに答えて来た。「ん?」と、だ。
「あれ? 知ってたの?」と、だった。
× × ×
時は、やや過ぎ、“昼”だった。
「……………なんで黙って“行く”んだよ………」と。
「だって俺“ちょい役”だったから。あ、メイン“美津之”さんね。あ〜羨ましいよな〜」と。
友に“教室では控えて”と言われ、今“此処”だった。つまり今は昼休み、場所は“外”だ。外とは云うが“校外”では無い。そんな事をすれば陽藍から大目玉だ。校舎内では目立つからと、穴場的場所で昼食を兼ねたのだ。
此の場所を見付けたのは“和希”だった。和希がこういった場所を見付けるのが得意なのは、隼人は勿論、彼等は知っていたのだ。そうーー“知っていた”のだ。“知っていたんだよ…………なのに”隼人はそう思った。
「なあ、……………友?」
「ん〜?」
隼人は“言った”のだ。
“海”って「何なんだ?」と。
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「“何”って? 何が?」
「…………、惚けんなよ」
「“何”って“云われて”も、な〜」
「惚けんな」
「“弟”だよ」
其処で隼人は黙った。暫く考え込む様な、そんな様子で。それで、それから言ったのだ。
「“昔”は居なかったろ…………」と。××××
「ん? “海”は三歳、だけど? 四年より“前”は在なくて当然だろ?」
× × ×
隼人は言った。“違う”とだ。
「ん〜?」
「だからっ、俺の知ってる“記憶”の、中にっ、海なんて居なかったよっ、っ、誰なんだよっ、あいつっ」と。
呆れた様子にも見れる友は、答えたのだ。“何言ってんの”と。
「“海”は“弟”だってば」と。演技の様な、本音だった。隼人は其れに戸惑った。 “だって巧に弟なんて存在しなかったじゃないかっ”と、そう言ったのだ。××××
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「だから。隼人は“馬鹿”なのか? 海なら、三歳、三年前に、生まれた、まあ、正確には友が言った様に約四年“前”に、誕生した“存在”なんだって、先刻から“俺達”言ってるだろ」と。××××
「………………っ、敦之っ」
そう、“在た”のだ。
友に迫り問い詰めて在た隼人の横で、勿論敦之も和希も、其処に在たのだ。食事中だったので“静か”だった“だけ”で。××××
友が敦之の言葉を受けて、“にやり”と笑んだのだ。“いつも通り”に。××××そして言った。
「“おかえり、隼人”。」ーーと。
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言われて。
隼人は頭を抱えて在た。
文字通りに。××××
× × ×
其処で“聞いた”のは、和希だった。隼人と呼んで。「 何%位? 隼人君ーー?」と。平坦に言った。
頭を抱えた隼人は答えた。「………“八割”程度………」と。××××××××
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「……………て、事は、だ」 「50か」
「…………………お前等……………」
「“70”て、処か、な。な? “隼人”?」
「……………和希…………」
そう言った。××××××××××××××××××××××××
新学期、初日だった。
“友”は“それでも”と言った。
「え?」
戸惑う隼人にだ。
「“海”を虐めたの“無し”にしないからな」と。隼人は返事、出来なかったが。
「…………………悪かったよ…………」と、漸く苦味の中で言ったのだが、友に返された。“海に言え”と。隼人は黙った。そして、
「今のは多分、俺“達”へ、だろ?」と、漸く“フォロー”した様だった。隼人は答えなかった。未だ混乱中だ。とは云って、其の為でも無く、
「…………照れてる」らしかった。実際そうだった。が、其れも答えなかった。
代わりの様に、やはり言ったのは和希だ。
“取り敢えず隼人君”と。
「ーーん?」
「“食べ”んと、昼休みが終わってしまうので、取り敢えず食べた方が、良いと思います。友はちゃっかり、食べ終えてるぞ?」と。隼人はやはり、言い返せ無かった。懐かしい様な“呆れ”で。
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帰宅した彼等に、いや、“隼人”に、鉢合わせた“巧”はこう言ったらしい。
「え? 隼人兄ちゃん、記憶無かったの?」“今迄?”と。
“隼人”は“前世”の“自分”を、思い出したのだ。以前も“佐木 隼人”だった事を。
違和感の正体は“海”だった。隼人の“前世”には海は存在しなかった“存在”なのだ。
“苛立ち”の原因は“忘れていた”為だと、隼人は気付いた。いや、思い出したからこそ“理解した”のだ。
敦之や和希の様子から、彼等はとっくに“記憶”を手に入れていたのだと気付き知れて、又憤った。新学期そうそう“最悪だ”と彼は思った。
いいや、そう言った。
「ーーくっそっ!」と。空に吠えた。
「隼人兄ちゃん、言葉使い、悪いよ」と、巧に言われて。つい、睨んだ。
「ーーああ“そう”かよっ」と。
「うちの“お父さん”がいたら又怒られちゃう所だよ。いなくて良かったね」と、不意討ちの如く、巧の何気無いひと言が、隼人の気を引き留めた。
隼人は“は?”と、巧に訝しんだ。
“ーー何?”と。巧は其の“様子”に答えた。
「何って…………うちの“お父さん”だよ。 僕、夏休みにも言ったじゃない…………“居ないよ”って」
と。
「…………………、何で?」
友が在たせいで、陽藍も“在る”と、其の隼人の思い込みを覆す言葉を、巧は其の口で綴り出した。
「? それも“言った”よね?」と。「アメリカに“旅行”中」と。
「長期で、ね。」ーーと。
「だって“友”ーーがっ?」 「え?」
“海に謝れ”と、言ったのにと隼人は虚しく心の中で言ったのだ。




