09話 ベッドで語り合う幼女
「本気ですか!?」
「うん、チョー本気。
ダリアちゃんと同じベッドで寝る!」
「でも狭いから私がママのベッドで寝ます」
「じゃあおばさんのベッドで一緒に寝る!」
「ええー!?
それでも狭いからやっぱり別で……」
「うー、やだやだ!」
精一杯可愛くダダをこねる。
この提案には実は並々ならない勇気を動員した。
彼女の言うように狭いし迷惑になるし非常識だし。
でも今の俺はソフィアちゃんと同じ「子ども」だ。
あの子のように甘えても不自然じゃない!
俺は美少女、俺は幼女! と何度も自分に言い聞かせて思い切って出した提案。
「ダリアちゃんが私の事がイヤなら、
床の上で寝るもん!」
「えええ……
い、イヤじゃないです、一緒に寝ましょう!」
ダリアちゃんのベッドに一緒に入って魔法で光るランタンを消す。
小窓から入る月光で部屋はほんのり明るい。
「ごめんね、ワガママ言って。
やっぱり迷惑だった?」
俺は早速右に寝ているダリアちゃんに身体を向ける。
寝入るまでは寝返りはうたない所存!
「ううん……うふふっ」
ダリアちゃんが忍ぶように笑う。
「どうしたの、
なにか可笑しい?」
「ヤヨイさ……ちゃんも子供だな、って思って。
んふふふふっ。
あ、ごめんなさい!」
「子供だもーん、ダリアちゃんと同じ。
だからお友達にもなりたい」
仰向けだったダリアちゃんが背を向ける。
「やっぱり、私の事嫌い?」
子供の時に友達作るのってこんなに大変だったかな。
「友達になろうぜ」「うん!」 みたいなノリだった遠い記憶。
「違います!
どうしてお強いヤヨイ様が何の取り柄もない私なんかと!?」
あちゃー、最初に暴れた印象が強すぎたのねー。
そりゃまあ、いきなり大勢の大人と巨大熊を倒す子供は怖いよなあ。
「可愛いしお母さん思いで優しいし、
料理はできるししっかり者で可愛いし、がんばり屋さんで可愛いし。
可愛いし瞳が綺麗だし、あっ三つ編みを下ろした髪綺麗だね!」
「はわわ……///、
ストップです、ストップ!」
ダリアちゃんは顔を真っ赤にして高速で身体をこちらに向ける。
「朝までダリアちゃんのいいところを言えるよー」
「もういいです、もういいですぅ……///」
瞳をうるませてジタバタするところも可愛い。
「強いと友達になっちゃダメなの?
それとも私が怖い、ダリア様?」
「怖くないけど意地悪ですぅ……」
「ぷっ、あははははっ!」
俺が笑っているとダリアちゃんもつられて笑う。
笑いが治まると涙を拭いながら。
「お友達になっていいですか、ヤヨイちゃん」
「もーっダリアちゃん、真面目すぎー!」
本当に真面目すぎなので敬語もやめて欲しい。
檻の中と二階で話していた時はフランクに話してたよな。
涙で濡れた少女の手を両手で包む。
「じゃあ誓おうよ。
ダリアちゃんと私、ヤヨイは永遠に友達になると誓います!」
「はい、ち、誓います!」
二人で笑いあう。
そうだ、誓いの印として手の甲にキスしよう。
なんか誓いっぽいし、女同士だから問題ないよね!
目の前にある繋ぎ合った手に顔を寄せると。
「いつっ!!?」
手に激痛が走る。
「どうしました?」
「ううん、なんでもない」
セーフ、未遂なので手は曲がってない。
くそう手でもダメなのか。
「同性でも断りなしにやったら事案ですよ」
またナビがうるさい。
こういうのは突然やるのが効果的……。
いやこれは思い上がりか、反省。
「友達は初めてできたかも」
「え、村の子に友達はいないの?」
「ママのお手伝いしてたから全然遊んだ覚えがないです」
「そっかー、じゃあこれから一緒に友達増やそうよ!」
「はいっ!」
キラキラ輝く瞳で見つめられて見つめ返して。
手を握り合ってダリアちゃんの香りに包まれて。
これ以上の幸せを求めるのは贅沢だな、うん。
暫くして寝入ったダリアちゃん。
その無垢で清らかな寝顔を眺めて楽しんだ。
【4日目】
朝は一緒に起きて。
お互いの髪を梳き合って、三つ編みのやり方を教えてもらってお互いの髪を結いあって。
一緒に料理を作って、一緒に食べて。
わーいまるっきり新婚初日だなー、結婚した事ないけど。
お友達初日だから新婚初日みたいなもんだよねー。
着替えはダリアちゃんと別の部屋で着替える。
今はダリアちゃんの脱衣姿を見たら理性を押さえられる自信が無いぞ!
ぐにゃぐにゃの手になるつもりはない。
「ヤヨイちゃんって恥ずかしがり屋さんだね」
って笑われたけど。
キャラメイクした時の白いドレスワンピだとここでは目立ってしょうがない。
2日目に雑貨屋でプレゼントする為に買った民族衣装っぽい綿のワンピースを着ることにした。
服をカバンから出して、思いつく。
「ねえ、この服をプレゼントするからダリアちゃんの服をちょうだい!」
「ええっ!?
でも私の服はボロボロで……あ!」
ダリアちゃんの服は全部<衣類修繕>の魔法で新品同然にしました。
「でもどっちの服も見た目はあまり変わりませんよ?」
「じゃあ交換しても何も問題ないね!」
「???。
ヤヨイちゃんがそれで良いならいいですけど」
服を交換した。
ダリアちゃんは理解出来ないだろうけど。
新品の服よりダリアちゃんが長年着た服を着る事に意味がある!
食事の後はダリアちゃんは家事、俺は畑を見る。
街育ちの俺には農業関連は分からないなー。
思念パネルを開き、<産業>の<農業>ツリーから使えそうな魔法を試すか。
<産業>系魔法は<戦闘>より格段に数が少ない。
「目的はあくまで魔王討伐ですので」
と、獅子ナビ。
そうだ、俺はここに農地を開きに来たわけじゃない。
ダルマに聞きながら畑を整備。
<作物治癒>の魔法はあるが、爆発的に成長させる魔法は無い。
あれば毎日大収穫祭りで一気に大富豪……。
「そんな魔法があれば一瞬で土の養分が無くなって、この村は砂漠になりますよ」
そうですか、ナビご苦労さん。
「ヤヨイちゃん、村の人が集まって来ましたよ!」
二階のベランダで布団を干していたダリアちゃんの声が降ってきた。
何の用かな?
魔女裁判とかだったらどうしよう。