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06話 美少女の力になりたい幼女

「おい、ダルマ。

 非アクティブな魔法があるぞ、<荷物収納>とか」


 トコトコと四足で歩くナビに聞く。


「それはカバンが無いと使えません」


「それ以外にも使えない魔法があるし」


「クラフト系は<見本登録>しないと使えません。

 <ヘルプ>に書いてありますので読んでおいてください」


「ヘルプとか読まないんだよなー。

 実戦で覚えるタイプなんだよ」


 試しに近くの家の壁に手を付けて思念パネルの<生活>ツリーから<クラフト>の下位の<見本登録>を押す。

 「村人の家」が登録された。


「面倒だなー」


「あくまで魔王を倒すための生活サポート用の補助ですので。

 旅に出て野宿がいやなら先に山小屋か納屋の登録をオススメします」


「家を建てればいいじゃない」


「材料が多く必要ですよ」


「そこは等価交換なのか…」


「そこまで厳密ではありませんが、

 あくまで魔王を倒すまでの生活補助の魔法です」


 村の商店通り、といっても5件ほどの店が肩を寄せ合ってるだけの場所へ向かう。

 雑貨屋へ入ると布の質素なショルダーバッグの他に幾つか買い物をする。

 お金はポケットに手を入れると勝手に出てきた。


「ダルマ、所持金はカンストしてないのか?」


 店を出て歩きながら思念パネルを確認して気が付く。


「この世界の経済をぶっ潰す気ですか」


「なるほど、そういう配慮か。

 カンストしてる割に桁数が少ないと思っただけだ」


「それでも街の普通の宿屋で三か月は滞在できる金額ですよ。

 足りなければ私に相談してください」


「はいよ」


 思念パネルを消してダリアちゃんの家へ向かう。


 教えられた場所に着いて驚く。

 どう見てもその家は廃墟だった。

 屋根や壁は朽ち落ちて窓は板で塞がれている。

 ノッカーがあるので試しに叩く。

 ……待てども反応が無い。


「どういうこと?」


 とりあえず廃屋の外周を歩く。


 村長に担がれたのだろうか。

 こんな悪趣味な冗談を言う人に見えなかったし、冗談ならカゴなんて持たせないだろう。


「ママ!

 しっかりしてママッ!!」


 ダリアちゃんの悲痛な声が家の裏からする!


 裏へ急ぐと。

 継ぎはぎのオーバーオールを着たダリアちゃんが必死になって、倒れた成人女性に回復魔法をかけていた。


「ダリアちゃん、どうしたの!?」


「ヤヨイ様!?

 どうしてこんなところに?」


「そんな事はいいから!

 この人がお母さん?」


「うん、でも急に倒れて意識が無くなって!!」


 しゃがんで腕をとり脈を診る。

 弱いけど脈はある、死んではいない!


 思念パネルを開き<能力可視>を選択し母親を見る。


「職業:村人

 レベル:15

 HP/最大HP:0/114

 状態:死へのカウントダウン5」


 HP0でも即死はしないんだな。

 しかし状態異常のせいでダリアちゃんがいくら回復魔法をかけても回復はしない!


 俺は<生活>メニューのから<状態回復>と<中級魔法>を選択し、金色に発光する右手を母親に当てた。


「う、ぐふぅ……あれ、ダリア?」


「ママ、よかったママ!」


「良かった!

 はやくベッドに休ませてあげよう」


 俺は母親をお姫様だっこで運ぶ。


「ゴホコホコホコホッ……」


 廃屋……じゃなくてソイネ家のベッドへと母親を運んだが、彼女の咳が酷くなる。


「ママ、しっかりして!」


「もしかしておばさんはいつもこんな咳を?」


「はい、特に最近はヒドくて……」


 咳の度に布団から舞い上がるホコリと。

 そして少しずつ下がっていく母親のHP。


 母娘には申し訳ないが、この環境は病人には毒だ。


 村長に頼んでソダーノ家の客室にダリアちゃんの母親を運んだ。

 村長夫婦はダリアちゃんの母親が病弱なのは知っていたが、重症になっているのは知らなかったらしい。


 昨日は母親を地下倉庫に隠した後、ダリアちゃんだけ捕まったという。


 客室に寝かせると、母親は咳が治まって静かな寝息をたてた。


「ダリアちゃん、お母さんに回復魔法をかけてあげてね」


「はい、ありがとうございますヤヨイ様!

 こんな穏やかなママの顔を見るのは久しぶりです。

 ……あれ、どこかへ行かれるのですか?」


「あ、うん。

 キミの家に忘れ物したみたいだから取りに行くよ」


 村長夫妻にしばらくソイネ母娘を泊めてもらうようお願いすると、再びソイネ家に戻る。


 1階の居間と寝室は修繕されて人が住めるようになっていたが、それ以外の部屋は壊れ朽ちていた。

 かろうじて住める部分も換気が悪く、じめっと湿気ていて何よりホコリっぽい。

 整理整頓はキチンと出来ているんだけどなぁ。


 問題は寝室だ。

 思念パネルを出して母親の布団に手を置くとHPが1ずつ減っていく。

 ヤバい。

 HPは9999あるから余裕だが、かゆいって!


 ダリアちゃんの母親は肺炎をこじらせている。

 原因はハウスダストとダニやシラミの死骸。

 湿気があるのでカビの胞子もあるかも。

 今まで生きてこれたのはダリアちゃんの治癒魔法のおかげか。


 さてどうするか。

 側でスフィンクス座りをしているナビに聞いてみる。


「ダルマ、こういう時に役立つ魔法はないか?」


「では、練習問題としてご自分で解決してください」


「ダリアちゃんの母親助けたでしょ。

 あれでいい練習になったんじゃない?」


「あれは素晴らしいご判断でした。

 ただ<初級回復>でも問題なかったですが」


 ナビの協力を頼めそうにないので再び魔法にざっと目を通す。

 <生活>のメニューの中に役に立ちそうなものを幾つか見つける。

 しかし……問題は順番かな。

 ……考えていてもしかたない。

 MPは余裕あるから間違っていたらやり直そう。


 とりあえずこのほぼ廃屋状態をなんとかしよう。

 ボロ屋に手を添える。

 <建物修繕>と<家具修繕>の魔法は材料がいらないらしいので躊躇なく押す。

 これで壊れて板を打ち付けてあった窓が開くようになる。

 <空間浄化>でホコリやゴミを外に出す。


 …間違えたかな。


 先に布団をキレイにしないとダニとかが出ていかないか?

 布団は<衣類修繕>なのか<家具修繕>なのか、<布類清掃>の魔法でクリーニングかな?

 とりあえず試せるものは片っ端から試してみよう。

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