01話 転生手続き
死んだーーーーーーっ!
白い軽トラックに轢かれて俺は死んだ。
夜、会社帰りにランドセルを背負った少女を見かけた。
塾帰りかなー、こんな時間に一人で歩いてたらあぶないぞーとか思いながらよそ見をしていた俺も悪い。
気が付くと白い机とイスのある、白い部屋にスーツ姿で倒れていた。
イスには飾りのない機能的でスリムな銀色のワンピースを着た少女が座っている。
「ようこそ。
貴女には異世界に転生するチャンスが与えられました」
机の上のノートPCを見つめたまま少女が話す。
「もしかして、あなたは女神様?」
「そうです、私は女神 メル。
転生しますか?」
女神が幼女とか天国すぎでしょ!
……あ、マジの天国か? ここって。
「あ、はい」
ついテンションが上がって承諾してしまった。
頼まれるとつい承諾するのが小心者の俺の悪いところ。
顔を上げた女神の銀色の瞳が私を捕らえる。
「あなたは33歳、男性、会社員。
知能・体力・ルックス・他人からの評価、も並。
犯罪歴なし。
女性経験、なし。
趣味、ゲームとフィギュア集め。
性癖、ロリコン。
の、桝 茂樹さんですね。」
「ろ、ロリコンといってもワ、私は、NOタッチ派だから!
遠くから見守るだけだから!」
「それはいいですけど、
スカートの中を覗こうとするのをやめてもらえませんか」
「すいませんでした!」
高速土下座で謝罪。
「では、手早く転生後のキャラメイクを済ませてください」
「きゃ、キャラメイク!?」
「さっさとやってくれれば、
もしかするとこのスカートをまくり上げたくなるかもしれません」
「とっとと性急に疾風の如くやりましょう!!」
目の前に、
≪キャラメイクをしましょう≫
<画面をタッチして下さい>
と表示された半透明のウィンドウが、何もない空中に現れる。
画面をタッチすると、年齢・身長・服から足のサイズ・筋肉量まで多岐にわたる項目が並んだ。
一つ項目を押すと別ウィンドウが開きさらに細かい設定が行える。
メル様がカチカチとマウスを押すと話し始める。
「えー、ではキャラメイク中に転移先の説明をします。
転移先は『ノキロール』という中世ヨーロッパ風の世界。
魔法が普通に使える世界です」
「テンプレ通りの世界ですね」
「ここでは凶悪な魔王が世界を支配しようとしています。
貴方は勇者となって魔王を倒し、この世界を救ってください。
以上」
「質問いいですか」
「どうぞ」
「どうして私が選ばれたのでしょうか?」
「真面目に生きてきたよう? だからです。
その性癖にも関わらず」
「もしかしたら私に特別な力が眠っているとか、覚醒する可能性があるとか?」
「それは無いようですね」
俺の詳細画面でも映っているのか、メル様が白いマウスを操作してディスプレイを見つめて答える。
「特殊な能力を持った尖った性格の持ち主より、
普通の真面目な性格の方が勇者向きかと私は考えています」
「そうですか……」
最後は思いっきり私見だな。
「設定終わりましたか。
もう時間切れにしますよ」
「はい只今スグにっ。
……出来ました!」
「それでは登録します」
メル様がパソコンのキーボードを叩くと、俺の周囲が七色に光る。
効果音と共に光の粒子が弾ける!
「登録完了しました、貴方のウィンドウのキャラクターと同じ姿になりました。
……ゲームでよくネカマ幼女になるとは書いてましたが、その通りですね」
そのPCの詳細にはそんな事まで書いてあるのかよ!
目の前のウィンドウには碧眼金髪ツインテールの、白いミニのフリフリワンピを着た幼女が表示されている。
見た目年齢:10才
身長:130センチ
職業:勇者
名前:ヤヨイ=アイリス
視線を下に向けると表示と同じ白のフリフリワンピが見えた。
俺は……幼女になれたのか!?
スカートを急いで捲くるとしましまパンツが現れる。
太ももの間に手を入れる。
女の子だ、女の子になってる。
「あ、やだ……!」
念入りに確認しすぎて、声が出た。
口から漏れ出た声は間違いなく変声前の高く可愛い少女の声。
「こら、女神の前で不埒な事をしないでください」
メル様がジト目で睨む。
「あ、はいっすいません」
「まあ、レベルはMAXでステータスはカンストですのでどんな容姿でも問題ありません。
が、勇者と言われてどうしてその姿にしたのですか?」
「あ、えーえっとえーっと……
小さい体の方が敵からしたら攻撃当てにくいじゃないですか!」
「……」
「異世界幼女に出会ったら警戒されずに近づけるととか、
考えてませんから、ホントに!」
さらに目を細めて強力なジト目で睨むメル様。
あヤバイ、話題を変えないと!
「そっ、
それでは、次はアレですね!」
「ん、なんですか?
登録は終わりましたよ」
「私固有の特殊スキルを授けて頂けるのが定石でしょう!」
「必要な魔法は私が適当に登録してあります。
中には強力な攻撃魔法もありますので、
それで魔王を倒してください」
「えーっ、特殊スキルとかギフト無し!?
では魔王の強さの情報を下さい!」
「大丈夫です、多分<ベリーハード>程度なので十分勝てます。
それでは異世界ノキロールに転送します」
「なんか急に雑!」
「わからない事があればナビを送りますので、
ナビに聞いてください」
メル様はキーボードを操作して最後に大袈裟にターンッとエンターキーを押す。
そして最後に可愛らしくも美しいスマイルを浮かべると。
「ゆめゆめ鍛錬を怠らぬよう。
健闘を祈ります」
足元に魔法陣が光り、身体が落下して視界が暗転する。
「あーっ!?
スカートの中を見せてくださいよぉーっ!」
「面白かった!」
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「つまらない」
等々
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