俺の田舎が……
俺の家にシギュン王女とエルフ王がやってきた。
ついでに俺がこの国の国王だったらしい。
わけが分からない。
そして追い打ちをかけるかのように、背後からさらなる来訪者が現れた。
「邪魔をするぞ人間。この地は余の領地になった」
「やっほー、クロイス君」
「ま、魔王とワルプルガさんっ!」
魔王とワルプルガさん。
つい先日魔王領で出会い、俺に求婚してきた元女神とその息子。
女神の力を使って
「き、貴様、まさか魔王っ!」
長命のエルフは魔王の顔を理解していたらしく、一瞬で魔方陣を展開させて臨戦態勢をとった。
「止めろ愚かな亜人よ。ここはもはや余の領地となった。ゆえに無駄な争いは禁ずる」
「とうとう人間の領地までやってきたのか。このままでは恐ろしい大戦に……。せめて我が盾となりこの世界をっ!」
「落ち着けと言っている」
魔王がパチン、と指を鳴らすと、エルフ王が展開していた魔方陣が一瞬にして霧散した。
「なにっ!」
驚愕のエルフ王。
どうやら実力差は歴然のようだ。
「クロイス君~♡」
突然、背後から俺に抱き着いてきたワルブルカさん。
その温かくも冷たい吐息に俺は鳥肌を隠せなかった。
「ひどいわ~、偽物で私をごまかそうなんて。あのヨハンナの入れ知恵ね。あの子性格悪いのよね~」
そう言って、ワルプルガさんは何かを目の前に投げつけた。
そこには、まるで干物のように干からびてしまった俺がいた。
これは……逃げるときに使った……鏡の……。
鏡の俺ええええええええええええっ! いったい何をされたらそんなに干からびてしまうんだっ!
「コロシテ……コロシテ……」
よく見ると至る所にキスマークと縄の跡が。なんて恐ろしいことにっ!
「やっぱり偽物は耐久力に問題あるわよね。本物はどれだけ耐えられるかしら」
「耐えられるわけがないだろっ!」
俺は逃げ出そうとした……。
が、なぜか突然魔王が俺の腕を掴んだ。
「貴様、ババアのことが嫌いなのか?」
「放せっ、このままじゃあ俺がミイラになって殺されてしまうっ! まー君俺のことが嫌いなら協力してくれよっ!」
「別にババアのことなんてどうでもいいんだがな、俺以外の奴がババアを馬鹿にするのはむかつく。逃げんな」
こ、こいつマザコンかよ。
「初めましてお義父さんお義母さん。クロイス君の妻のワルプルガです。ほら、まー君も挨拶して」
「俺はこんな奴を父親だとは認めねぇっ! 絶対にだっ!」
だったらこの手を放せよまー君。
挨拶をされても両親は何も帰さない。放心状態で突っ立ったままだった。魔族だとか魔王だとか、情報処理が追い付かないんだと思う。
「だ、旦那様の妻は私なんだよっ!」
と、これまでずっと様子を見ていたシギュン王女が反論する。
力の差は理解しているのだろう。体が震えている。それでも主張を曲げなかったことは、意志の強さを示しているのかもしれない。
「エルフの小娘。クロイス君は私の夫でまー君のパパになるの。どうしても妾にしてほしいというなら考えなくもないけど、態度で示して欲しいわね~」
「あ、あなたのようなおばさんにそんなことは言われたくないよっ!」
「あらあらあらあら~、困った子ね。こんなにかわいいワルちゃんをババアよばわりだなんて……」
「その年で自分のことちゃん付で呼ぶなんて恥ずかしくないのっ!」
「…………」
あっ、ワルプルガさんのこめかみに小皺……じゃなくて血管が浮き出てる。
「ちょ、ちょっと落ち着いてください二人とも。ここは俺の家なんです。まずはゆっくりと話し合いを……」
「…………」
「…………」
空中で火花をバチバチと鳴らす二人。
実力的にはワルプルガさんの方が格上なのだが、魔王と違ってあまり好戦的な性格ではないらしく……手を出す様子は見られない。
どういやら話し合いには応じてくれるらしい。
その後……。
シギュン王女とワルプルガさんと魔王はなぜか俺の家に居座ることとなった。
二人ともなぜか俺の妻だ嫁だのと言い争いをしている。魔王はそんな二人を無視してなぜか俺にぐちぐちと文句を言ってくる。物理的に争わないのは結構だがこの状況はいつまで続くのだろうか?
陛下は相変わらず例の動物園で働いているらしい。
子供達に人気のマスコットキャラとして、動物園の良い宣伝になっていると聞く。つがい(?)として連れてこられたエリーゼ王女とともに大人気だ。
魔王と仲良く(?)なったおかげで国家間での争いは減少し、魔族と戦う勇者としての役割は必要
なくなった。
つまり俺は歴代の王族のように勇者として働かなくてもよくなったということだ。
こうして世界は少しだけ平和になった。
俺の周囲は相変わらず騒がしいばかりなのだが……。
これにて完結です。
どこで終わらせようかと悩んでいましたが、このあたりが潮時でしょう。
次回作、『俺のスマホアプリ〈異世界ツクール〉で異世界創造』を投稿し始めました。
興味があればご覧ください。




