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全国国勢調査アンケートの依頼


 王都でトイレを直した俺は、すぐに故郷のスコッテ村へと戻った。

 テイラー大臣やシギュン王女、それからレベッカ教授にも若干引き止められたが、俺の決意は変わらなかった。

 なおガレインは盗賊として王国に引き渡した。今頃は牢屋の中で反省していることだろう。

 

 とにかく、俺はすべてを終わらせてこの田舎へと帰ってきた。

 

 実家、建物の前にて。

 草原を前に、深く深呼吸する。


「ふぅ」

 

 心地よい。 


 王都のような都会には憧れるけど、やっぱり田舎というのも悪くない。静かで、自然豊かで、何より思い出の詰まった良い場所だ。

 今後は両親の畑仕事を手伝いつつ、公共の建物とかのトイレ掃除を手伝うことにしよう。


 さて、まずは挨拶周りに行ってこようか。両親とはここに来た時顔を合わせてるけど、村の人たちとはまだだからな。

 そんなことを思いながら、俺は道を歩き始め……ようとしたのだが。


「ん?」


 目線の先から、見慣れぬ鎧姿の男が迫ってくる。

 鎧、なんてこの田舎ではめったに見ることのない代物だ。王都には兵士がいたから俺自身は見慣れているけど、この田舎は中央の物流や兵団から完全に除外されているからな。

 どうしたんだろう?


「クロイス殿おおおおおおおっ!」


 驚いた。

 どうやらあの兵士、俺に用があるらしい。

 俺はトイレ清掃員として王宮で働いていた。だからこちらが相手の名前を知らなくても、相手がこっちの名前を知っていることはある。見知らぬ兵士だが、王宮で会ったことがあるのかもしれない。


「どうしたんですか? 何か忘れものでも届けに来てくれた……なんてわけないですよね」

「こ、こちらの書類をご覧ください」

 

 そう言って、兵士は分厚い封筒を差し出してきた。

 書類?

 全く心当たりがなかった。まさか退職の証明書をくれるというわけでもあるまい。


 俺は受け取った封筒の中身を確認した。


「国勢調査……アンケート用紙?」

 

 と、書かれた三十枚ほどの紙がその中に入っていた。こんなものは見たことがない。


「あ、あの、この国勢調査アンケート用紙って、一体……」

「こちらはテイラー大臣からの手紙になります」


 テイラー大臣?

 この書類はテイラー大臣からのものだったのか? 一体どういうつもりなんだ。


「それでは、失礼します」

「ああ、ありがとう」


 渡すものを渡したので、兵士が立ち去っていく。

 俺は手紙に目線を移した。

 


 クロイス殿へ。

 先日は国王になっていただきたいなどという、非常識な発言をいたしまして申し訳ありませんでした。陛下不在のせいで目の回る忙しさでしたゆえ、頭がどうにかなっていたようです。

 さて、今後の我が国の方針ですが、国王不在のため貴族主導での共和制を敷く予定です。

 加えて貴族、学者・兵士・平民などの幅広い国民1000人程度へ国勢調査によるアンケートを送付し、その内容を国政に反映させます。

 クロイス殿はスコッテ村の代表として選ばれました。この国をよりよくするために、忌憚のない意見をご記入ください。

 お時間を取らせてしまい申し訳ありませんが、どうかこの国のより良い未来のためにご協力ください。


 ……と、いうことらしい。


 そうか、この国は本当に生まれ変わるんだな。

 国民、しかも平民の意見を国政に反映させようだなんて、以前の国王陛下では考えられなかったことだ。もしかするとポーズだけでかもしれないけど、前国王であればそんな気遣いすらもしなかったと思う。

 新しい時代の到来を感じた。

 

 俺もこの国に住む一人の国民として、しっかりと意見を反映させていきたい。

 さて、このアンケートとやらをさっさと記入して、大臣のもとに送り返そう。

 俺はアンケート用紙に目線を移した。



 ****全国国勢調査アンケート*****


 このアンケートは国政に反映させるための重要な書類になります。回答者の皆様は国王になったつもりでお答えください。


 問一、税について。

 現在、作物に対する税として作物の五割を収めるように定まっています。この割合をどう思いますか?


 ①高い。 

 ②ちょうどよい。

 ③安い。

 

 

 ……ふむふむ。

 税、か。

 王都にいたことは気にしていなかったが、この田舎では主に作物で税を納めるのが普通。半分持っていかれるんだ。村人から何度も不平や不満を聞いたことがある。

 俺の感覚としては……高い、んじゃないかと思う。


 よってここは①に丸だ。



 ①または③に丸を付けた方は、その理由をご記入ください。また、あなたが適切だと思う税率をも併せて記載し、根拠も説明してください。


 

 …………ふむふむ。

 まあ、アンケートなんだから思ったことを素直に書いておこう。


 

 問二、身分制について。


 現在、わが国では貴族、兵士、学者、平民と四つの身分に分けられています。あなたの身分をご記入ください。


 ①貴族。

 ②兵士。

 ③学者。

 ④平民。


 あなたが所属する身分以外の三つの身分についてどう思いますか? 経済格差、仕事、尊敬または軽蔑、思ったことをそのままご記入ください。


 ……ふむふむ。

 国王になったつもりで、って書いてあるのに身分を聞くんだな。

 

 と、こんな感じでアンケート用紙を頑張って書いていき。

 結局、半日近くかけてすべての記入を終えることができた。


 新しい国の門出なんだ。初回ぐらいは気合入れて書いてもいいだろ。


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