表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/65

9話

       9


「何ダコレハ。コンナ児戯ニ等シイデ我ヲ捉エタツモリカ」

 尊大に言い捨てて、ファルヴォスは右の竜旋棍を振るった。だが、十二面体の内表面に至るとぴたりと止まる。

 ファルヴォスは停止した。考えを巡らしているかのようだった。数瞬ののち、今度は左右両方の竜旋棍を振り回す。だが十二面体はびくともしない。

 ユウリははっとしてフィアナに目を向けた。すると、たらり。額に汗が一筋流れた。やがて顔の至る所が発汗し始める。尋常でない量だった。

「フィアナ!」ユウリは思わず叫んだ。耳に届いた自分の声は悲鳴のようだった。

「あいつを覆っているのは神気(ルークス)よ。外からも内からも攻撃は通らない。初めての技だけど、直感的にできそうな気がして試してみたの。だけど、これは──くっ。予想以上に、きついわね」

 眼光こそ鋭いが、フィアナの顔は苦痛に歪んでいた。ファルヴォスに向ける両手もわずかに震えを帯びている。

 高速飛行や黒炎による攻撃。ファルヴォスは色々試みているが、十二面体は傷一つつかずにファルヴォスの周囲を囲み続けていた。

 一分近く経っただろうか、ついにフィアナの両手が落ちた。直後にふっと表情が緩み、落下を始める。力の酷使で気絶したのだ。

 ユウリは慌てて後を追おうとする。だが一人の女子生徒がフィアナに向かって飛翔。身体を抱き留めて地面に軟着陸する。

 ファルヴォスに視線を戻した。予想通り十二面体は消失していた。

「雑魚ガ。下ラン時間稼ギヲシテクレル」

 冷め切った語調で呟くと、ファルヴォスは竜旋棍を肩下で構えた。

「フィアナ嬢の孤軍奮闘、わたしの心にガンガン響いちゃいました。負けず嫌いのカノンさんとしては、あいつに食らいつく以外の選択肢は存在しませんね」

 近くをホバリングするカノンが決然と言い切った。

「当たり前だ。行くぞカノン! あの思い上がった竜野郎に、狩る側がどっちかを思い知らせてやる!」

 ユウリは叫び、雷槌(らいつい)を胸の辺りに掲げた。

ブックマークや評価をぜひお願いします。

ブックマークはページ下部の「ブックマークに追加」をクリック、評価は「ブックマークに追加」のすぐ下の【☆☆☆☆☆】をタップすればできます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ