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6話

       6


雷槌旋(グラザステッラ)!」ユウリは唱えた。雷槌(らいつい)が雷そのものになった。上手投げで即座に放り投げる。

 雷槌(らいつい)が円を描いてファルヴォスに迫る。仲間たちからも、色とりどりの遠距離攻撃が飛んだ。

 だが再び黒炎の壁が出現。着弾の寸前で阻まれる。

 一秒、二秒。ユウリたちは弾幕射撃を続けるが、炎壁に完全に阻まれていた。

 ファルヴォスの翼が動いた。ユウリたちとの距離を瞬時に詰める。

(まったくの無傷かよ)ユウリが苦々しく考えていると、ファルヴォスの全身から無数の黒粉が発生。ファルヴォスを中心とした約十ミルトの球状範囲が黒に染まる。

(炭塵爆発か?)即座に推察し、ユウリは黒粉の範囲から逃れた。仲間たちも退き始める。

 ファルヴォスが右手を薙いだ。すると黒粉が同方向に流れ始める。やがて黒粉は煙のようになり、ファルヴォスの姿が完全に見えなくなった。

 ごうごうと音を立てて、黒粉は恐ろしい速度で流動し続ける。帯熱しているのか、離れた位置にいるユウリにも熱気が来ていた。

 黒粉の球の下から何かが飛び出した。ユウリは視認し瞠目する。

 二人の人間だった。仲間が逃げ切れず巻き込まれたようで、全身に火が点いている。

「詰マラヌ意地ヲ張ルト、無残ナ末路ヲ辿ル羽目ニナル。『ケイジ』トヤラトノ一件デ警告シタツモリダッタガ、何モ学ンデオラヌヨウダナ」

 感情の読めない声がすると、黒粉が減速し始めた。完全に速度がゼロになり、悠然と佇むファルヴォスに吸い込まれ始める。

「こいつがケイジ先生を!」近くにいるフィアナが悔しそうに声を荒げた。

「くそっ! 罪のない人間を雑草でも引きちぎるみたいに殺しやがって! 神代(かみよ)の戦では、大勢でかかれば勝ててたんだ! どこかに突破口はあるはずだ!」

「甘イ。アノ屈辱ノ敗北ヨリ数百年。我々ガ何ノ研鑽モ積ンデオラヌト思ウカ。現在ノ我ノ力ハ、貴様ラガ打チ倒シタ者ヲ遥カニ凌駕シテイルト知レ」

 ユウリの鼓舞に、ファルヴォスはすかさず返答を被せてきた。

「だめだユウリ! 校門から外に出ようとしたが、半透明の膜から先に体が進まねえ! 膜は士官学校の境界全部を覆ってるから、おそらくどこも同じ状況だ!」

 校舎の入口近くにいるシャウアが、焦ったような声で叫んだ。

「了解! シャウアは巻き添えを食らわないようできるだけ遠くに逃げろ! こないだしてくれた話は良く覚えてるが、くだらない意地は張るんじゃあねえぞ」

 ユウリは思い切り叫び返す。

 だがシャウアは、歯を見せて力強く笑った。

「いいや、逃げねえよ! 『俺でも戦闘に貢献できる方法』がつ・い・に完成したんだ! 逃げてなんかいられるかっての!」

 シャウアは一度言葉を切り、ユウリから視線を外した。

「エデリアからの交換留学生、いるよな! その中でも男子学生、今すぐ全員、俺のところに来てくれ! ファルヴォスを倒すとっておきの方法の手助けをしてほしいんだ!」

 高らかなシャウアの呼びかけに、ファルヴォスが反応した。するとその周囲で黒炎が渦を巻き始める。

「やらせない!」フィアナがぴしゃりと言い放ち、翼を成す子ユリシスを飛ばした。

 ファルヴォスから黒炎の熱線が飛ぶが、子ユリシスの障壁に衝突。霧散して、シャウアには到達しない。

「サンキュなフィアナ! たまには役に立つじゃねえか! 本当に悪りいが、しばらく食い止めてくれ! 起死回生の一撃を、あのすかした無感情野郎にお見舞いしてやるからよ!」

 シャウアはぐっと、右拳をユウリたちに突き上げた。表情は、決意に満ちた笑顔だった。

 ユウリは大きく頷いて、ファルヴォスに向き直った。エデリア出身の男子生徒が、次々とシャウアに接近し始めた。

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