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4話

       4


 一体の悪竜(ヴァルゴン)が橋を通り抜けた。低空を飛んでくる敵に備え、ユウリは水盾(すいじゅん)を身体の前に置いた。姿勢を低くし、攻撃を待ち構える。

 悪竜(ヴァルゴン)が頭から激突した。ユウリの足は衝撃で地面を滑るが、体勢は崩さない。

 押し合いが始まった。数瞬ののち、ユウリは力を抜き横に避けた。意表を突かれた悪竜(ヴァルゴン)は数歩進んで転倒する。

 ユウリは即座に振り返り、前方に跳んだ。前転宙返りで勢いをつけ、左踵を叩き込む。

 首に命中した。悪竜(ヴァルゴン)はびくっとして動きを止めた。

 すかさずユウリは水盾(すいじゅん)を再生成。自らの頭の上に持っていき、一気に振り下ろす。

 悪竜(ヴァルゴン)の頭部にぶち当たった。重量物による打撃を受け、悪竜(ヴァルゴン)はわずかに地面にめり込み、瞳は光を失った。

(二匹目も撃破完了!)ユウリはぐっと拳を握る。

 悪竜(ヴァルゴン)の強襲を受けたエル・クリスタ軍は、あちこちで戦闘を開始した。皆、熟練の戦い手なようで、遅れは取っていなかった。

 ユウリは振り返った。フィアナが悪竜(ヴァルゴン)と向かい合っており、背後にはシャウアの姿もあった。

 悪竜(ヴァルゴン)が炎を吐いた。火球ではなく、口を起点に広がる火炎だ。

 フィアナは子ユリシスの壁を展開。炎はぶつかるも、フィアナたちの側には一筋も漏れてこない。

(キラーヴォ)!」ユウリは高らかに叫び、雷槌(らいつい)を出現させた。ぐっと握って振り被り、思いっきり投擲する。

 縦回転しつつ雷槌(らいつい)は宙を行く。悪竜(ヴァルゴン)の翼に当たると、電撃がその身体に走った。

「ありがとユウリ!」フィアナは早口で礼を言い、右手に槍を作り投げた。

 胴体に当たり、悪竜(ヴァルゴン)はぐらりとよろめいた。すぐにズゥゥン! 巨体が地面を揺るがす音が響く。

 ユウリはフィアナたちに駆け寄った。二人とも無傷で、ユウリは安心する。

「驚いたぜ。あんためちゃめちゃ戦えるんだな。同年代で、暴れん坊フィアナと同じぐらい強い奴がいるとはな。世界は広いぜ」

 やんちゃな笑顔とともに、シャウアはユウリを讃えた。

 フィアナは手を腰に当て、むっと苦い表情をシャウアに向ける。

「聞き捨てならない語が出たわね。だ・れ・が、暴れん坊ですって? あなたは時々忘れてるみたいだけど、私も一応年頃の女の子なの。そんな男性的な形容をされるときっちり傷つくのよ。忘れないで」

(大丈夫だよ、フィアナ。その少年は誰よりも君を女の子として見てるから)

 抗議じみた返答を耳にしつつ、ユウリはクールに思考を巡らしていた。

「そういえばユウリ。メイサ先生とルカさんは大丈夫かな。ちょっと離れちゃったみたいだけど」

 フィアナは不安げに呟いた。シャウアも幼い顔に心配を滲ませている。

「先生たちはほっときゃ良いよ。俺たちは俺たちで先に進もう」ユウリは軽く答えた。

「ユウリ? 何かしらその言い方。仲間でしょ、助けに行くのが当たり前。そんな人だとは思わなかったわ。あなたちょっと薄情じゃあ──」

 フィアナの責めるような台詞の途中だった。ドゴォォォン! 爆音が轟いた。ユウリは音源へと顔を向けた。

 悪竜(ヴァルゴン)が眼前をすっ飛んでいった。ユウリは目で追う。首から上と両翼が完全に消失していた。

(この馬鹿げた威力。もしかして、いや十中八九──)

 冷静に思考を巡らしていると、「三人とも無事みたいだな。上出来、上出来」不遜で余裕たっぷりな童女の声がした。

 ユウリは小さく息を吐き、声の主に注目した。

 予想通りメイサだった。後ろにはルカを引き連れており、自信たっぷりな微笑を浮かべている。背中には青白二色の翼があり、清らかな煌めきを見せていた。

「何、今の……。もしかして、メイサ先生が……」フィアナの口から呆然とした風な言葉が漏れた。

「そうか、フィアナは初めてだったな。メイサ先生は燕の神鳥聖装(セクレドフォルゲル)を持っていて、とっても強い。具体的に言うと、ルミラリアの絶対的頂点、唯一無二の最強護人(ディフェンシア)だな」

 ユウリがあっさりと告げるが、フィアナは固まったままだった。

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