第7話 入団?
「ただいま。みんなこの方を魔物の巣の駆除に連れて行くわよ」
帰ってきて警護団の皆が注目するところからのお嬢様から突然の無茶振りであった。
『よろしいでしょうかルーク?』とモジモジとした態度でお願いされたら聞くしかない。それが男というものである。
さらにいうなればドワーフの街へ行くのを阻む元凶を自らの手で駆除できる。ここの団員達を待つよりはるかに手っ取り早く済みそうで願ったりかなったりだ。
「連れて行くのはいいがその男は役に立つのかい団長?」
「外に引っ張りだしたと思いきや突然連行させるなんてどうしたんだ?」
などと団員から疑問の声が上がる。当然と言えば当然であり彼らからしたら突然足手まといが増えたらたまったもんじゃないからな。
チラリとサレンさんの方をみると、サレンさんはコホンと咳をひとつ
「えぇ彼の実力は本物よ。たった今わたくしは彼に一騎打ちで手加減までされて負かされたところよ。」
一団がざわめく。そりゃあんな空間と爆裂の合体魔法があって負けることなんてこの街ではまずないだろう。
付け入るスキはあるにはあるがそれがまた難しい。
「それでルーク、あなたはどうしてわたくしのショートワープを破ったのかしら?」
「あぁ、あれは簡単で戦闘中にさりげなく空中に空間魔法の魔法陣が出現していたのに気付いたんだ。だからいくつかの効果を予測して取り敢えず俺の風魔法を割り込ませておいたんだ。その結果ショートワープしたサレンさんが俺の方へ吹き飛ばされてきたんです」
「はぁ?アナタ、わたくしの術式に気付いただけじゃなくて割り込みまでしていたの!?そんなの超高等技術じゃない!」
淡々と説明したが信じられないという顔をされた。実際は空間魔法だからこそ干渉しやすい訳であって俺だってなんでもかんでも割り込めるってわけではない。
空間魔法の数少ない弱点だが師匠曰く、干渉を防ぐプロテクトを掛けることも可能だそうである。だが爆裂魔法と組み合わせてる彼女ではさらにプロテクトまでするなんて出来ないのであった。そんなことが出来たら人間じゃないよね!
彼女の場合は本来は足元に現れる魔法陣と爆裂魔法による派手な爆発、この二つを警戒して上空を意識する余裕を与えないという強みを生かした連携術式だから空間魔法を上手く使いこなしていると言える。
「団長を倒しただって?」
「あの理不尽の権化が倒された?」
「それだけ強いから姉さんが惚れたのか」
「俺はこうして男の方が無事に帰ってきてることから強いって知ってたぜ!」
「姉さんにもようやく伴侶が・・・」
などと団員に好き放題言われているサレン団長が『べ、別に惚れてなどいないし伴侶でもない!!!!』と反論してたがツッコむのはそこじゃないだろう。
「俺の名前はルーク。成り行きではありますが力になりますので団員の皆さんよろしくお願いします。こっちはパーティのミィだ。多分この中じゃサレンさんと俺を除いて団員全員より強いから安心してくれ」
「皆さん初めましてミィです。この男が変なこと言いましたがそんなことありませんので気を留めずにしてください!」
空気だったミィの紹介もして団員達から歓迎の拍手を受けた。ミィが強いのは本当なのに・・・
こうしてニバンガイ市長、元貴族、理不尽魔法使いで警護団の団長サレン嬢から正式なクエスト申請を受けた。申請手続きでチラチラこちらを見ては顔をそらされてたのが気になる。
「じゃあ出発は明日!ルークとミィはよかったらわたくしの家に泊まってちょうだい。大切なお客様だしお話も聞きたいわ」
「はい!宿まで提供して下さるなんてありがたい限りですサレンさん!」
「サレンでいいわよルーク。これから一緒にクエストに出るんですし、よろしくね!」
「わかった、こちらこそよろしくなサレン!」
「え、えぇ・・・」
サレンが顔を赤くして俯く。
ミィは冷たい視線を俺に向け、団員たちはニヤニヤしている。まったくなんなのだろう。
サレンの家に着いた俺たちは水浴びとこれまでの旅の話をしながら食事をとり寝床についた。
俺とミィの部屋はサレンの気遣いからか別々の部屋となっている。
久々の柔らかいベットに飲み込まれて瞼が落ちかけた夜。
ガチャリ
扉が開く音がした。
「どうしたミィか?寂しくてこっちの部屋に来ちゃったのか?」
と冗談半分で言ったが返事がなかった。
そして雲の切れ間から覗く月明かりで見えたものはミィではなく薄く綺麗なネグリジェを纏ったサレンの姿だった。月明かりでネグリジェが透け、その細くしなやかで少し大きな胸を持った極上のボディラインが見える。
おいおいおいおい死刑判決の次は夜這いですかサレンさん。急展開すぎて俺ついていけませんよ。
「ルーク・・・わたくしもっとあなたのこと知りたいの・・・いい?」
俺の長い一日はまだ終わらなさそうである