第5話 ニバンガイとお嬢様
イチバンガイを出て俺ルークとミィはニバンガイへの道を歩いていた。
そこにはイチバンガイまでの道中とは少し違う光景があった。
「そう!半身を崩すな!ダガーを前に構えて急所は狙われないように!まずは構えを整えて回避する癖をつけるんだ!」
「は、はい!」
道中の魔物に俺ではなくミィが相手をしていたのだ。
相手をしているといってもひたすら回避しているわけだが・・・
しばらく魔物の攻撃を凌ぎきれたら俺が倒すといった体制をとっている。
霊狼戦から戦闘を教えて欲しいと言ってミィに頼まれたためこのようなことを行っており、ミィでは敵を倒すほどの攻撃は繰り出せず反撃の糸口になりかねないのでこうして回避から教えているのである。
「よし!いい感じだ!じゃあちょっとのいてねミィ」
ヒョイッ
俺が一振りしてミィを取り囲んでた魔物の群れを吹き飛ばした。
「相変わらずの理不尽っぷりですねホント・・・」
ミィから冷たい視線を浴びながら俺たちは歩みを進めていった。
雑木林に広い平原、山道と様々な道で様々な魔物を倒して進むこと2週間。
「この前の宿屋のおじさんの話からすると、もうすぐニバンガイですかね~」
「そうだな~」
サクッ
雑談をしながら道端の狼の攻撃を華麗に紙一重で躱し相手の攻撃の勢いをそのまま利用して喉元にダガーを突き立てる。
喉にダガーが食い込み道端の狼を仕留め、即座に体勢を立て直し、ダガーを構えて次の攻撃に備える。
多脚を器用に動かし動き回る種吐虫がミィをめがけて種を吐き飛ばしてくる。
その種を前に突き出したダガーで弾きながら距離を詰めて弱点である口を一閃。
う~ん。成長が早いなんてもんじゃないなこの犬耳娘。もともとセンスはあったが教えるのは当分先だと思っていたダガーによるカウンターまでマスターしている。
これならこの道中は困ることはないだろう。
「ミィおまえホント強くなったな・・・」
「なんせ師匠がスパルタですからね。魔物の群れに頑張れ~って回避だけさせる鬼の前じゃこうもなりますよ!」
風蝙蝠の攻撃を躱しながら、もう一匹の種吐虫の種を弾き飛ばす。
この犬耳族特有の能力であろう耳と嗅覚のよさを活かしての回避行動は流石の一言である。
「安心しろミィ!俺の時はそれに加えて全滅させられなければ魔王に特訓という名の地獄を見せられてた!」
「人外達とか弱い私を一緒にしないでください!!!!!」
種吐虫へ怒りの一撃を放って風蝙蝠が逃げ出したのを確認して一息つく。
人外認定されてしまった・・・。
ミィの成長著しい道中を経て、もうすぐ着くと言ってから道に迷うことさらに1週間。
「ついたああああああああああああああああ!」
「つきましたああああああああああああああ!」
俺とミィは無事にニバンガイへたどり着いた。
取り敢えず街についたら宿屋へ向かう。
イチバンガイの時から比べたら宿屋に行けることに成長を感じるなとミィと談笑しているところに声が聞こえてきた。
「もう一度言ってみなさい!わたくしがなんですって!?消し炭になりたいのかしら?」
「す、すまねぇ許してくれサレン嬢!まわりが言ってたからつい言っちまったんだ」
「やっぱり言ったのね!没落貴族ってまた!!!!!!!!」
「ひ、ひええええええええ許してくれえええええ」
その声のもとに行ってみると赤髪で比較的長身の女性がヤンキーをシバいていた。
普通ならこの光景は逆なのでは・・・?
「まぁまぁ落ち着いて・・・」となだめにはいる
「なによアンタ。この変じゃ見ない顔ね、どこぞの冒険者かしら?」
「俺の名前はルーク、こっちはミィ、南から来た冒険者だ。この街に着いたら声がしてな」
「へぇようこそニバンガイへ。私はサレン、王都の貴族、ナーヴァ家の一人娘でここの市長をしているわ」
「つまり落ちこぼれ(ボソッ」
ミシィィィ・・・・!
禁句であろうセリフを性懲りもなく言ったヤンキーがサレンのボディーブローワンパンで沈む。
このヤンキーもアホなやつである。
これが元貴族のお嬢様サレンとの出会いである。
これからのひと悶着を考えると声をかけなければよかったかなと後悔するのはもう少し先のことである。