第4話 討伐報酬
「お待ちしておりましたぞルーク殿!それで依頼の方はどうなりましたかな?」
イチバンガイに帰ってきた俺たちは着替えて市長のところへ向かった。
市長の想定よりもはるかに早く帰ってきてしまったのか訝しい顔をされたがちゃんと依頼を達成してきたので堂々と答える。
「おう!無事ちゃんと頼まれた通り道端の狼が群れで現れた元凶であろう霊獣を討伐してきたぜ!!」
グッ!と親指を立ててアピールするが市長の険しい顔がさらに険しくなる。
そんなに睨まれても居たのものはいたわけだから・・・
「・・・・・はい?霊獣ですと???この街の近くの森に霊獣がいたと?」
「あぁ!道端の狼の霊獣種がいたよ。あんなのこの街に来たらひとたまりもなかったな!」
そう言ってドロップした霊狼の牙と毛皮を見せる。普通の道端の狼からは比較にならないほど大きいその牙は何かに使えそうだなと大事に懐にしまっておいたのだ。
この街の兵士の練度から見るに本当にひとたまりもなかったと思う。
「し、信じられない・・・この街に霊獣が・・・・この者がいなかったらこの街はどうなっていたか・・・それにしても駆け出しの装備で霊獣を・・・・」
何やらブツブツと呟いている市長だったのでしばらくミィをからかって遊ぶことにした。
『ミィも色々と大変だったもんな』と笑いながら言ったら鬼の形相で睨まれた・・・・霊狼より怖いよこの子。
「ハッ!?皆の者この英雄にこの街で出来る一番のおもてなしの準備をせい!報酬も可能な限り高価な物を!!!」
市長の一声で皆が慌てて一斉に動き出した。ニコニコして愛想のいいおじさんだと思っていたが流石市長といったところなのだろう。
報酬も契約した時よりも豪華になりそうでラッキーである。
しばらく控室という名の応接室で待っていると声がかかった。
「お待たせしました英雄殿。さぁさぁこちらへ」
「英雄は気恥ずかしいからルークでいいですよ」
「は、はぁ・・・。それではルーク殿案内しますぞ」
市長に先ほどやり取りをしていた市長の部屋に戻ってきた。
そこには先ほどはなかったピカピカの鉄装備一式と狼の毛皮を利用したのであろう布装備一式が用意されていた。
「まずはわたくしどもが用意できる一番の装備です。霊獣を倒せるほど腕の経つ勇者様には物足りないでしょうがご勘弁ください。もっと良い装備があるにはあるのですがいかんせん古びてガタがきておりとても人にお譲りするようなものでは・・・」
「すごい!ありがとうございます市長!これで十分ですよ!」
さっそくウキウキで報酬である装備一式を装備する。もちろん兜は置いていった。
ルーク[剣士]
[頭]なし
[胴]~[脚]アイアンシリーズ
[武器1]アイアンソード
[武器2]アイアンショートソード
ブロンズシリーズより一つ上のランクのアイアン装備はブロンズより若干重いものの作りがしっかりとしていて切れ味も鋭い。重い分威力もでてこれはこれでいいものである。
ミィ[おもらし犬耳少女]
[頭]~[腰]狼のローブ
[脚]狼皮のブーツ
[武器]アイアンダガー
ミィも全体が一段階ランクがあがり狼の柔らかいながらも切断に関して強い防御力をもつ装備をまとっており安心感が増した。
ダガーを包む布も上質なものになり一気に冒険者らしくなったというのが俺の感想だ。
すっかり日も暮れ次に案内されたのは街一番のレストランである。
美味しそうな臭いにつられ入ったら目の前には肉に魚に野菜、この街でとれた新鮮な素材をつかった山盛りの料理が映し出された。
「これ全部・・・?」
「そうですぞ!ウチの街一番の料理人が腕によりをかけて作らせましたぞ!」
「さすがにこれは俺とミィでは食いきれないなぁ。そうだよかったらこの街の話を飯でも食べながら聞かせてもらえませんか?みんなで食べた方がごはんも美味しいですし!」
「そ、それは構いませんがよろしいのですか?」
「あぁぜひ!窓から見える村の人達も入れてさ!」
先ほどから霊獣を倒したと噂を聞きつけた村人たちが一目姿を見ようとこのレストランに集まっていた。
田舎は情報流れるの早いよね。
「では皆の者、街を救ってくれた英雄ルーク殿の霊獣討伐を祝して乾杯!」
「「「「乾杯!!!!!」」」」
その日の夜は村人達と盛大に飲み明かした。未成年は飲めない?そんな法律はこの街にはない。
村人から質問攻めにあいたじたじだったがそれでもこうして自分のチカラが街の人達の笑顔に繋がるのは嬉しいものである。
ベロンベロンに酔った市長に『ルーク殿は変わったお方だ。それだけの力がありながらこんな隅っこの街に』と絡まれたりしたがさらに隅っこの村から来たんだから仕方ない。
街の人から師匠であるシリス=アルベルトについて聞いてみたが誰も知らない様子だった。
あの師匠魔王倒した伝説の剣士とか言ってたが、そうだったらもっと噂になるはずだから嘘だったんじゃね?と酔いながら思ったり思わなかったりした。
宴も終わり市長が用意してくれていた宿に着いた。
一息ついたところでミィがつぶやく
「ルークさん・・・私、強くなりたい。もうあんな醜態をさらさなくて済むように・・・」
「これから一緒に強くなっていこうぜミィ!」
動機はアレだが、あんな酷い目にあったミィが強い瞳をしていたことに安心した。
こうして俺たちの長い一日が終わった。
翌朝
「それじゃあ装備に飯、こんなたくさんのお金までありがとうございました市長」
「とんでもない!これでも少なすぎるくらいで申し訳なく思っておりますぞ。ルーク殿もこれからの旅をお気を付けて」
「それじゃもうひとつお願いがあるのですが、この霊狼の牙を加工できる装備屋ってどこかにありませんか?」
「装備屋ですか・・・。そのクラスの素材となるとこの辺の街ではとても・・・。それならドワーフの街に行ってみたらどうですかな?」
「ドワーフの街?」
「えぇ。この北の道を行った先にニバンガイがあります。そこから都ではなく鉱山の方に向かえばドワーフの街があり、そこなら加工もしてくれるのではないですかな?」
ドワーフの街があるなんてそんなの心が躍ってしまう。これはもう向かうしかない。
「ありがとうございます市長。じゃあそのルートでドワーフの街まで向かってみます」
「では良き旅を」
目的地も決まり再び俺とミィの旅は始まった。次はニバンガイ、そしてドワーフの街である!!