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第3話 霊獣

俺とミィはまず被害のあった畑のひとつに向かう。魔物の群れたちが帰っていく森に一番近い畑で最初の被害を受けた畑で話を聞き、出るかもわからない魔物を待つのではなく

コチラから森に行き巣を叩き潰そうと思ったのだ。チバン市長は危険だと止められたが装備も整っているし、これまでの道中レベルの敵くらいならなんとかなるだろうという判断である。

ミィの方も「まぁ、こんな理不尽パワーマンなら心配しなくても大丈夫ですよ」と納得してくれた。理不尽なのはミィの俺に対する物言いだと思ったりもしたがまぁいいか。

というわけで畑に到着。畑の持ち主が涙ながらに魔物の話をしてくれた。畑を荒らしたのは道端の狼(ロードウルフ)とのこと。道端の狼(ロードウルフ)は森に生息する狼で大きさは一回り大きな柴犬といった感じであり、獰猛な性格で群れで行動することは滅多に見られないとのことである。単体ならまだ対処しようもあるのだが、今回のように群れで畑を襲うという例のない事態に街の対応が遅れていると。

群れで行動してるという点から拠点となる巣があるのではないかと考え駆除して欲しいという追加の説明も貰った。


「なるほど状況はわかりました。群れと巣は見つけ次第八つ裂きにします。群れが帰っていった道はどっちですか?」

「八つ裂きってルークさん・・・」


呆れ顔のミィを横目に畑の主は森の入口へと案内してくれた。


「じゃあ行ってきます」

「行ってまいります」


俺とミィはそういって真昼間、森の中へと入っていった。


--------------------------------


「静かだな」

「静かですね」


森に入って一時間程経ったのだろうか。道らしい道ではない獣道を歩いていた。俺もミィも田舎の山育ちは伊達ではなく苦も無くスイスイと森を進んでいく。

結構森の奥に入ったと思ったが強烈な敵意は感じるものの道中に敵が出ないことに妙な違和感を感じていた。その違和感を感じた時にはすでに遅く


「ルークさん!四方から敵です!囲まれました!!」


そうミィが発した声に反応し木の陰から前後左右と8体の道端の狼が現れ前方の二匹は俺たちに襲い掛かってきた。


「おっと山育ちは相手の方が一歩上だな」


ブロンズソードを構えその直後ーーーー


「えっ・・・・」


俺はまるで止まっている時のなかを動くように二匹の狼の真ん中に踏み込んで距離を詰めた。

その出会い頭に一閃

目の前の道端の狼(ロードウルフ)二匹の首を刎ねた。

一瞬の出来事で何が起きたのか理解出来ずに困惑するミィ。


「ちょっとルークさーーーー」


ミィが声をかけ終わる前に左側の狼の首が飛ぶ。


「お?どうしたミィ?」


ミィをチラリと振り返って見てみた。なんか焦ってるのか怒ってるのか困惑してるのかワケのわからない表情でいる。ちょっと面白い。


「どうしたじゃなーーーー」


またもやミィが声をかけ終わる前にミィの後ろ側にいた狼に斬りかかり首を斬り落とした。敵に背を向けてると危ないからね、仕方ないね。

そのままショートソードを退路を断っている位置に陣取っていた狼二匹に投げつけ綺麗に二匹の首を串刺しにした。


「いですよ!えっ・・・?」

「よし。全滅させたな」


そういって投げたショートソードを回収し鞘に納めた。お金ないから装備は大切にしないとね。


「待ってくださいルークさん!!!何したんですか!?気が付いたら狼の首が吹き飛んでいったんですけど!??」

「何と言われても踏み込んで斬っただけだけど?」


ミィは驚愕した。無茶苦茶である。そもそもこんな田舎の駆け出し冒険者もいないような街で自分の反応できる速度の遥かに超える速度で動く村人がいるわけないのである。

力だけは強いと思っていたが、これまで見せていた力なんてほんの一端であり速度も技術も異常だった。実際は知覚できてないので異常”かもしれない”であるが、誰の目に見てもおかしかった。

処理しきれない目の前の状況にミィは


「ドン引きです・・・・」


考えるのをやめた。


「ここで出る感想がドン引きってお前・・・俺、結構張り切ったのに・・・」


まぁ所詮犬ッコロってとこだなと言いながら笑ってるところに


ガキンッ!!!


先ほどまでとは比べ物にならない強大な殺意とともに振り降ろされた爪を剣で受け止め受け流す。

そこにはこれまで相手してきた狼の十倍の大きさの狼がいた。

「我が子供達によくも手を出してくれたな死をもって償うがいい」

「嫌だね。死ぬのはオマエだ犬ッコロ」


あまりにも自然(?)なやり取りを行ったが落ち着いて考えると目の前に対峙しているのはデカい狼だ。


「ミィ!なんか俺、狼の言葉がわかるようになったんだけど!?」

「ルークさん落ち着いてください!あれは霊獣と呼ばれる普通の魔物とは一線を画す存在で、その地の神霊の加護を受けた魔物です!知能も戦闘力も桁違いです。流石のルークさんでも村ひとつ潰せる霊獣相手では分が悪いです!すぐにでも撤退しましょう!!!!」


こんな辺境の地でなんで霊獣が・・・と怯えるミィ。

その狼の霊獣の威圧によって大気が震えているのがわかる。なるほどこれはとんでもない敵だ。


「この我から逃げられると思っているとは愚かな。お前らはココで死ぬのだ」


霊狼がその太い脚を振りかざす。ミィは死を覚悟した。

爪と剣が交差した一瞬


「遅い。死ぬのはテメーだ」


まともに受け止めたらブロンズソードではひとたまりもない一閃を受け流し、逆に霊狼の脚を斬り飛ばす。


「なにっ!??」


霊狼もまさか初心者丸出しの装備相手に自分が傷を負うなんて思ってもいなかったのか一瞬の動揺を見せた。

その一瞬の動揺を見逃すはずもなく追撃に入る。脚を斬り上げた剣を返す刀で振り下ろしもう一閃。

片目を切り裂き同時にショートソードを抜いてもう一斬り、首元に浅い傷を負わせる。

霊狼は大きくバックステップで距離を取る。


「調子に乗るな小僧!」


大きく息を吸い込み霊狼が巨大なブレスを吐く。

しかしそれは俺ではなくミィの方にーーーー

強大なブレスを前にミィはその場にへたりこむ。とても回避動作に移れる様子ではない。


「あぶねぇミィ!!!!」


まだ会って日は浅いが一緒に冒険してきた仲間を殺させるわけにはいかない。

敵を殲滅し、仲間を守るために師匠から授かった技<<スキル>>を行使する。

魔法の風を身にまとい疾風のごとく駆け抜けるそのスキルは


<<魔風礼装>>


ミィは自分が死んだと思った。死後魂は天に上るのは本当だったのだなと、こうして私は空中に飛んでいる。

どこか聞き覚えのある声がする。優しく包み込むようでありながらしっかりとした強さを持つ声が。


「間一髪だったなミィ!しっかり俺に掴まってろよ!」


声を認識するのにタイムラグがあったものの確かにその声は聞こえた。

そして自分がその男にお姫様抱っこで抱きかかえられて空を駆けていること、なによりも生きている奇跡に驚きが隠せない。


「ルークさんどうして!?私・・・生きてる??」

「話は後だ、この状態じゃ攻撃できないからちょっと背に掴まれ!」


霊狼のブレスを華麗に回避しながら空中で体勢を変える。

絶対に離しはしないと小さな女の子からは考えられない強い力で抱きしめられる。

これなら大丈夫そうだ。


「見とけよミィ!あのデカワンコに決着をつける」


腰の剣に手を添えて集中する


「じゃあな霊狼、あの世で会おうぜ」


<<疾風一閃>>



ルークと自分は地面に着地しており、通り過ぎただけに見えた霊狼は悲鳴をあげながら切り刻まれていた。

見とけよと言われてたが気が付いたら死の概念と言わんばかりの相手が倒れていた。何がなんだかわからないミィであった。

死と生の激しい振り幅で揺られたミィはもう限界であった。


「終わったなミィ!ミィ?」


俺の背中に生暖かい液体を感触を感じる。これはまさかと思いミィの方を向くとミィは顔を真っ赤にして俯いている。

あっこれは言及しちゃいけないやつだ。

音がやみ、彼女から液体が流れ終えるのを確認したら彼女をそっと地面におろす。

確かにこの年で女の子で今まで自分より何倍もデカい狼に襲われてたら無理もない。


「さて依頼も終わったし帰るか」


何事もなかったかのように帰る提案をした俺だったが・・・・


「死にたい・・・」


ボソッと声が聞こえた。あーーーーうん。そうだよね。

気まずい・・・とてつもなく気まずい・・・・


「まぁコレは事故みたいなもんだから気にするなって!帰ろう!ホラ!なんか狼がレアドロップも落としてるみたいだし!」

「そうですね・・・帰りましょう・・・・」


今にも死にそうな声で返事が返ってきた。

こうやって俺たちは依頼の討伐を終え帰路につくことになった。しばらく無言で。

ミィの相手に手いっぱいで、この時俺の手の甲に紋章が浮かんでることに気付かなかった。


添削する時間も添削してくれる相手もいないのでよかったら誤字脱字みつけたらコメントください。

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