第2話 初めての依頼
最初の街までの道中は比較的平和であった。平和といっても魔物が出てこないという訳ではなく出てきたが敵が木の棒一振りで吹き飛ぶからだ。
「ルークさん!来ました敵です!」
「おうっ」
ヒョイッ!棒を振り敵が消える
「ルークさん、きました」
「まかせろ!」
ヒョイッ、群れが消える
「ルークさーーん」
「ヘイヘイ」
ヒョイッ(以下略
俺をルークさんと呼び敵の位置を教えてくれる赤髪の犬耳少女ミィ。
ミィに名を呼ばれ木の棒で吹き飛ばす黒髪の剣(棒?)士こと俺はシリス師匠の弟子であるルーク。
最初は俺が敵を蹴散らす光景に目を丸くしていたミィだったがドンドン目が死んでいき、街につく頃にはもはやその光景が当たり前のような扱いとなっていた。
戦闘丸投げだったが俺が敵意を感じる前にミィが発見するため処理がスムーズというパーティープレイのような場面に俺は少しテンションがあがった。
魔物が落とす素材を回収しながらも旅は続き歩くこと3日、無事に村から一番近い最初の町「イチバンガイ」に着いたのである。
「おーー!ここがイチバンガイか!初めてきたな」
「おーー!ここが街というところですか!ワタシも初めてです!」
感動した俺とミィの二人であるが、入って一番に感じたことは住民達の視線が俺たちに向いているということである。ヒソヒソ話をしてる内容をミィに聞こうとするとミィは顔を真っ赤にしていた。
「どうしたミィ」
「ルークさん・・・・装備屋に行きましょう。今すぐに」
強い瞳でこちらに訴えかけてきた。よくわからないまま俺たちは装備屋へと直行した。
「らっしゃい!おやっ遠くの方から来た冒険者さんかな!すごい格好してるねぇ~。ぜひウチで装備を揃えて行きな!」
なるほど。街の人は俺たちの格好に注目していたのか。この街にたどり着くまでの戦闘に野宿で服はボロボロだし、ミィに至っては元がボロ布なのも相まってすごい露出となっていた。
冒険中に色々と見えてはいけないトコロがチラチラ見えていたのは俺の心の中にしまってある。
「ありがとう。じゃあ二人分一式取り繕ってもらおうかな」
「毎度ありぃ!ところでダンナは棒を持ってるアタリ武闘家、嬢ちゃんは武器も持っていないし前衛って感じでもないから魔法使いってところかい?そうならそれ用の装備を用意するよ」
言われてみると俺は木の棒持ってて剣士には到底見えないし、ミィにいたってはボロ布まとった犬耳少女である。
装備屋のおっちゃんの予想は妥当と言えば妥当である。
「いや、俺は剣士でコッチは無職のニートだ。だから軽い鎧と普通の剣と短剣を一本ずつ。あとコッチのニートのために身軽な布系の装備を用意してもらいたい。」
「おい、誰がニートだ誰が」
俺をベシベシ叩きながらツッコンでくる。俺が頼んだ装備については特に文句はないようだ。
「ハッハッハッ!アンタ達面白いことを言うねぇ!見るからに北の都の方から来た感じではないってことは整備のされていない南の方面から来たとみた。そっちには魔物だって現れる。その道を通って木の棒だけで魔法もなしにこの街まで来たってのかい?」
驚いた。この装備屋のオッチャンこの一瞬でものすごい観察眼に考察である。俺らの来た道まで考えた上での先ほどの装備の提案だったようだ。商売をする上ではこういう観察は
必要不可欠なのだろう。そう思いながら俺は「そうだよ」といって道中の魔物の素材詰めた袋をカウンターの上に置いた。ミィがコツコツと集めておいてくれたもので、マメなもの
だなと感心した素材たちだ。装備屋の主人は信じられないという顔をしていた。
「コイツは驚いた・・・。アンタ達見た目はアレだが実はとんでもねぇ冒険者だってのかい?」
「そうでもないさ。ところでオヤジ、実は装備を頼んでおいてなんなんだが今そんなにお金を持ち合わせてなくてこの素材を装備代のかわりってわけにはいかないだろうか?」
「ソイツはかまわねぇし装備もすぐに準備する。その代わりと言っちゃなんだが少し頼まれごとをしてくれるかい?」
俺とミィは目を見合わせて同時に頷いた。そしてオヤジの頼みごとの内容を聞くことにした。
装備屋のオヤジからの依頼は以下のようなものであった。
街の近隣の森から魔物の群れが降りてきて畑を荒らしていおり、街に滞在してる兵士では対処が困難で被害が拡大しているらしい。
群れを追い返し可能ならば巣を見つけて駆除して欲しいとのこと。巣まで駆除してくれるのであれば相応の報酬もしっかりと支払われるとのことだった。
ちなみに装備屋のオヤジが用意してくれた装備は
ルーク[剣士?]
[頭]なし
[胴]~[脚]ブロンズシリーズ
[武器1]ブロンズソード
[武器2]ショートソード
頭は紙一重で避ける際に邪魔になるという理由で無し。全身は初心者が主に使用する少々頼りない防御力と攻撃力を持つブロンズシリーズ。
そして俺の要望によりブロンズソードよりも短いショートソードも用意してもらった。
ブロンズソードを侍のように腰にぶらさげ、背中の腰あたりでショートソードを横向きに装備するといった、よくある盗賊が短剣を装備してるイメージである。
全体的に金属になって重くなったものの動きには何も影響はないといった感じである。
ミィ[ニート?]
[頭]~[腰]旅立ちのローブ
[脚]旅立ちのブーツ
[武器]ブロンズダガー
ミィの方は犬耳が目立つとのことで頭まで隠せるワンピースのような太ももまでのローブ。旅立ちと名の付くだけあってほとんどただの布である。
そして柔らかい獣の皮でできたブーツ。ブーツとローブによって絶対領域が発生しており太ももが眩しい。服の中は黒インナーを着ている。
武器の方のブロンズダガーは何もないよりマシだということで持たされ、太ももに装備されている。
このようにミィの素早い動きの邪魔にならないような軽装で統一された装備となった。
といった感じである。
正式な依頼であり装備を整えた俺たちはイチバンガイの市長であるチバン市長のいるところに向かった。
そこで一通りの今回の依頼の手続きを踏み出発した。市長は「期待していますぞ」と目を輝かせていた。
こうして初めての依頼が始まった。