理不尽なプロローグ
「うおおおおおおおおおお!」
「甘い」
必死の叫びと斬りつけは目の前の女剣士によって虚しくも吹き飛ばされた
なぜ俺が女剣士に全力で切り込んで吹き飛ばされているのかというとーーー
「ふむ、そこの君私の弟子とならないか!」
「えっ・・・・?俺ですか?」
「そうだ。私が今から君を剣士として育てる」
突然風のように現れて突然わけのわからないことを言ってきたその金髪の女。
話を聞くとどうやら”都ではそれなりに有名なパーティーに属していたが何故か仲間たちが自分を悪人だなんだと言い放ちパーティーから追放された。信頼しあってた仲間が理由も離さずに私を敵視するのはありえないから原因を突き止めて欲しい”というらしい。
「それで何でこんな辺鄙な村の何の取り柄もない農作業しかできない俺なんです?都のギルドとかで探せばいいのでは?」
俺は素直な疑問を口にした。そもそも、それなりに有名なパーティーの一員というならギルドでも顔が広いのだから原因を探ろうとすればどうにでもなるだろうと思ったのである。
「私だってそうしようと思ったさ。しかしなギルドどころか都のモノたちまで一様に私を避け、誰も話を聞こうとしてくれなくなったのだ。さすがの私もこれにはお手上げで影響の受けてなさそうなこの村まで赴いてお願いを聞いてくれそうな人を探していたのだよ」
なるほど、納得である。彼女なりに手を打とうとしたがダメでここまで来たと・・・。
そして新たに浮かんでくる疑問がある。
「原因を探るのはいいとして何で弟子になる必要があるんです?別にそこまでの必要はないでしょう?」
「いいかい少年。ギルドというのはだなーーー」
彼女の説明によるとギルドでは個人やパーティーのランク、つまり強さの指標となる階級がすべてと言っても過言ではなく強さがを示さないと誰も話なんて聞いてくれないとのこと。だから弟子として特訓をし”ある程度”の強さになってから調査を頼もうということなのだ。
「事情はわかりました。俺だって男です。強くなりたいし英雄にだってなりたいと夢をみたこともありました。しかし何で俺なんです?まさか剣士だからこそわかる才能があったr・・・」
「君が見た中で一番動きに癖が少なく剣技を仕込みやすそうだったからだ。仕込むのに癖が強いのは邪魔以外の何物でもないからな。農作業のおかげか基礎体力がしっかりしてそうってのはポイント高いぞ!」
つまり無個性で平凡だからだと・・・。いや、彼女から言わせるとそれも才能らしいから落ち込むのはまだ早い・・・はず。
「わかりました。ちょっと特訓して、都に行って原因さえ探ってくればいいんですね。」
「よし。契約は成立した」
そう彼女が言うと地面から魔法陣が浮かびあがり俺と彼女を光が包み込み彼女と俺の右手の甲に紋章が現れた。突然の出来事に戸惑う俺だったが一方で彼女は満足げな顔をして言い放った。
「さて今から君には私のすべてを伝授し魔王をも撃ち滅ぼせようチカラを与える。そのために君には修行し過酷な試練を乗り越えてもらう。途中で死ぬかも知れんな試練だけに。ハッハッハッ」
「え?????ちょっと剣の使い方教えてもらうのでは???魔王?御伽噺で出てくるあの魔王?俺そこまで壮大な覚悟してないのですが!?」
なんか彼女は変なギャグで笑っていたがコチラは笑えない。なんせ彼女の言い出したことが辺鄙な村の村人Aである俺には完全に別次元のことであったからだ。
「もう遅い。契約のもと弟子として契りを結んだ君に拒否権はない。なぁにちょっとこの世界の深淵を覗く程度だ。一緒に頑張ろう!!ちなみに君の名は?」
「そんな理不尽があるか!!!俺の名前はルークだよ!名前も知らない少年に変な契約するなあああああああああああああ!!!」
「ルークか良い名だ。私の名前はシリス=アルベルト。シリス師匠と呼んでくれたまえ」
こうして俺ルークと謎の女剣士シリスの出会いにより面白おかしいひとつの物語がここに始まった。
「というわけで早速この剣で私に斬りかかってみてくれ」
「えっ!?これマジもんの剣じゃん・・・大丈夫なんですか?えっとシリス師匠?」
「構わん。全身全霊をこめて打ち込んで来い!」
了承を得たので、俺は持てる力を刀に乗せ目の前の女剣士に斬りかかる
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」
「甘い」
グェフッ!?甘いじゃないよ。なんで切り込む試験で俺が吹き飛ばされるんだよ・・・。
そもそも俺の実力みるんじゃないのかよ。やっぱどこかおかしい、この女・・・。
こうして村人Aだった俺ルークと頭おかしい女剣士シリスの出会いにより理不尽な物語が無理やり幕を開けた(ルーク談)
師匠との修行風景は気が向いたら幕間でやっていこうと思います。