親友はめっちゃいいやつなんだ。だから可愛い彼女ができるのは当然だ。(短編版)
※こちらは短編版です。
長編版から来られた方がもしいらっしゃいましたら、この短編には長編のストーリーのネタバレが含まれています。
ネタバレを嫌う場合は読まないことをお勧めします。
上記問題ない方は是非読んでいただけたらと思います。
「真人、大事な話があるんだが」
「なんだ孝平、改まって」
「実は俺……好きな人が出来た」
「へぇ、好きな人ねぇ……え、好きな人?」
わたくし橘真人16歳、親友からの突然の告白に驚愕する。
だって結構長い期間こいつ、藤本孝平の親友やってるけど、一度も好きとかそういう浮ついた話聞いたことないし。
逆にこいつを好きってやつもいなかったからなぁ。良いやつなんだが。
「ず、随分と唐突な話じゃねぇか。さては漫画みたいなことでもあったな?」
「お前エスパーか? 実はそうなんだよ」
「え、マジで?」
適当に言ったのにあたっちゃったよ。
なんでも、子供を避けて転んだ時に手当してくれたのがその人らしい。
同年代くらいだろ? 出来た人がいたもんだ。
「そりゃまた随分とベッタベタなことで」
「うっせ、制服を見る感じここの人じゃないみたいだけど。優しくて可愛い子だったなぁ……」
おーおー、完全にホの字だなこりゃ。しっかり出来上がっちゃってるよ。
しかしそうか、こいつにもようやく恋の季節がやってきたかー。
「まー好きなのはいいが、他校の人とはなかなか会えんぞ」
「大丈夫! 手当てしてもらうときにあの子のハンカチ汚しちゃってさ。それの代わりを用意するってことで明後日に会う予定だから」
「おお、やるじゃん。んじゃあその時に相手と仲良くなって連絡手段を手に入れないとな」
「う、うん……そんでさ、ちょっとお願いがあるんだけど」
――時は明後日
『やべぇ、緊張する』
『気持ちは分からんでもないが、醜態だけは晒すなよ』
『わかってるよ。……くれぐれも頼むよ?』
『前も言ったが、スマホいじってばかりだと印象悪いぞ。あんま期待すんな』
『そんなぁ』
何故か尾行する羽目になってしまった。
いや、遠くから見てアドバイスしろって言われたからだけども。
ほぼ初対面の人らに何をアドバイスしろってんだ。そもそも会話聞こえないし。
はぁ……厄介なことに巻き込まれたもんだ。
******
お、きたきた。
ほーあれが孝平の好きな子か。確かに可愛い女の子だ。ちと見た目が幼いが。
ありゃ彼氏いたりしてもおかしくないぞ。大丈夫か?
「おま……した。わざ…………」
「…………だし! お、おひるは…………」
おーおー結構きょどってんな、大丈夫か?
親友の面白いところを見れて楽しい反面、行く先の不安もあって複雑だ……
喫茶店に入っていったからついていったが、なんだかんだ孝平のやついつも通り話せてるみたいだ。
一応待機はしとくつもりだったが、女の子の反応も悪くなさそうだしこりゃオレは必要ないか?
……うん、マジで順調だ。ずっと話してる。
本当に帰っても良さそうだな。
ハンカチ買いに行くところでお暇するかねぇ。
さて、割と良い雰囲気のまま百貨店に向かっていったし、帰るとする、か……なんだあの人?
何やらコソコソしている人がふと目に入る。
離れたところから見てもわかるほどの相当な美少女だ。
そういえばあの人……さっきの店にもいたな。
美女はよく記憶に残るもんだ。
親友はそこそこうまくやれてるみたいだし、美女を見れて目の保養にもなったし、良い日だなぁ。
その日は適当にぶらつきつつ良い気分で家に帰った。
――次の日
「どう会話していいかわかんないよ……」
「まだ言ってんのかよ。良い人そうだったし、ただの世間話でも返してくれるって」
「うー難しい」
昨日の夕方からずっとだぞ、それ……
何が好きな人相手に軽々しく話しかけられないだよ。
なんだかんだ積極的に行動できてるのに、そこでヘタレるのは今更過ぎるぜ。
「難しいのはわかるが、アプリでのやり取りを続けたってあんまり仲良くなれないぞ? 早く次の予定を取り付けねぇと」
「うっ……厳しい、んですけど」
その初々しさは見てる身からすれば面白いが、関係が疎遠になったらおしまいなんだが。
全く、仕方ねぇなぁ。
「ほら、つべこべ言ってないでとりあえずなんか送れって。例えばだなぁ――」
こういうのはスピードが命ってことで、少し無理やりではあるが適当に会話をさせ、毎日やり取りするのが当たり前になるように仕向けた。
強引って言われても仕方がないが、相手は他校で美少女だぞ?
さっさと彼氏の有無確認して行けそうであれば早く攻めないと。
まあ……親友の恋が上手くいってほしいっていうオレの勝手な願いがあるからってのは否定できないけども。
******
『やったよ真人! 佐倉さんと会うことになった!』
『おーよかったな! ついにデートだ!』
『や、やめてよ! (怒っているスタンプ)』
あれから半月以上が経ち、自然に会話しあう仲になったところでようやくお誘いに持って行けた。
まあ会えはしなくても会話するだけで楽しんでたみたいだからよかったけど。
ちなみにお相手さんは佐倉真宵っていう人らしい。
『んで、いつ?』
『次の日曜日に前と同じ場所で』
『ほー今から楽しみだな』
『うん(照れている棒人間のスタンプ)』
なんだそのスタンプ。センスあるな。
――日曜日
はい、今回は何も頼まれていないが来てしまった橘です。
いや、最初しか見るつもりないから。つける気はマジでないから。
相手さんの反応とかが見れたら退散しますって。
待つこと数十分。待っていた孝平の下へ佐倉さんが到着した。
……うん、佐倉さんも楽しそうな表情してるし、緊張こそしているが孝平も見るに堪えないレベルではない。
今夜の報告は良いものになりそうだな。これを確認したかったんだ。
さて、尾行は褒められた行為じゃないし、さっさと退散しよ……う?
「ちょ、ちょっと。そんなに近づいていいと思ってんのあいつ。やっぱり直に話して説得しないと……」
……なんかすっげぇ見覚えのある美女がコソコソ隠れながら物騒なこと言ってんですけど。
っていうか近づくって普通に並んで歩いてるだけじゃん、普通じゃん(二度目)。
「……」
やべぇ立ち上がった。マジで行くつもりだこの人。
「あの、ちょっといいd「ひぇあ!? ……な、なによあなた! 今忙しいのよ!」……明らかに不審な行動をしてますが、何してるんですか?」
「……え、不審? あ、いやその……別に私は怪しい者ではなく……」
めっちゃきょどりだした。
「ちょ、ちょっと事情があるって言うか……」
しどろもどろしている美女を見て、さっきまで怪しいとか思ってたのになにやらほっこりとしてしまう自分であった。
これだから美女は。
******
「んじゃあアンタは佐倉さんの親友さんってことか」
「ええ、それであなたはあの男の親友なのね」
前回と同様に孝平たちは喫茶店に入っていったので、バレない位置に座りつつ事情を聴く。
どうやらこの人は白石沙希というらしく、佐倉さんの親友らしい。
んで、佐倉さんにつこうとしている悪い虫を追い払おうとして、コソコソ隠れながら追ってたんだとさ。
随分と過保護な人だ。なんだよ、あの子に恋愛なんてまだ早いって。父親か!
「さて、いろいろと言いたいことはあるが、一番許せないのはオレの親友を悪い虫と言い切ったことだ」
「ふん、あの子に付きまとおうとしているのなら関係ないわ」
「あ? 勝手に判断してんじゃねぇよ。お前孝平のことなんか知ってるのか?」
「知らないわよ。でもあの男真宵のこと好きでしょう? その時点で悪い虫よ」
チッ。好意をもって近づいた時点で害虫ってか?
親友をバカにしやがって、腹が立つ。
「佐倉さんのことを大切に思うのは大層な事だが、佐倉さんは嫌がってる風には見えんぞ」
ほら、すごい楽しそうに会話に花咲かせてるぞ。
上手くやってるようでよかった。
「それはそうだけど……あの男がどんな人かもわからないわ」
「それはアンタが知ったってどうしようもないだろ。佐倉さんが判断することだ」
「あの子はいい子だけど世間知らずだわ。悪い男に引っかかりかねない」
アンタがそんなこと言ってるから世間知らずなんじゃねーの?
「だからアンタが判断すると?」
「そうよ。私はあの子の親友なんだから」
いよいよをもっていってることが過保護な父親だな。全く理解できねーけど。
「言いたいことはわかった。つまりアンタにとっては佐倉さんが孝平と仲良くすること自体が駄目だと」
「ええ、そうよ」
「だが、アンタが今更行動してるってことは佐倉さんが自分で判断して行動しているからだろう? それでもやめさせようとするのか」
前回二人が会った時からそれなりの時間が経っているのにもかかわらず、今回のを止められてないのがよい証拠だ。
「うっ……」
なんかすごい落ち込んでしまった。
触れられたくなかったのな……
「あー……すまん、余計なことを言った」
「いいわよ……なんか最近距離間わかんないし……」
やっべ、完全に地雷踏んだ。
さっきまであれだけ険悪な雰囲気だったのに。
「えと……その……」
なんとかせねば……そうだ!
「い、いい考えがある。佐倉さんが自分でやりたいからアンタに相談しないで今に至ってるんだ。それを見守ってみようと思わないか?」
「……見守るって何よ。私はあの男を認める気はないわよ」
「それはアンタが孝平のことを知らないからだろ? オレはあいつの親友だ」
「だから何よ」
「オレが孝平のことを教える。それなら直接話さなくても孝平のことを知れるだろ?」
「本人じゃないと意味ないわよ。だってあなたが本当のことを言うとは限らないじゃない」
「なら佐倉さんに聞いて確かめればいい。彼女の言い分なら受け入れられるだろ?」
「……本人じゃないとわからないことだってあるでしょう」
「馬鹿にすんなよ。ちゃんとあいつの親友なんだ。あいつの肉親を除けばオレが一番わかる自信がある。アンタだって佐倉さんのことをわかっている自負があるだろ?」
「当り前よ。幼稚園からの親友よ? 私以上に真宵のことをわかってる人なんて」
「なら問題ないはずだ。オレが隣で孝平のことを教えてやる。それで判断してくれたらいい。佐倉さんにも迷惑かけないし悪くない考えだと思わないか?」
「ま、真宵に迷惑……なら今日とりあえず同行しなさい。それで判断するわ」
「ああ、了解した」
ふう、なんとかフォローしつつ邪魔を阻止できたな。
オレは必要以上の負担を背負ってしまったが……
まあ、親友の恋路を応援するためなら仕方ない。むしろこの壁をとっぱらって援護してやろうじゃないか。
あと、なんかこの人ポンコツな気がしてきた。
クール系の完璧美人系だと思っていたんだけどなぁ。
******
というわけで白石と一緒に行動することになった。
孝平のことを誤解されないようにしっかりアイツのこと教えてやらないとな。
「最初に言っておくが、孝平はいいやつだ。二人が会った時のことだって立場が逆だったら孝平が同じことしてたさ。アイツはそういうやつなんだ」
「随分と高評価ね。でも素が良いとしても異性が絡むと男はダメになるものよ。少なくとも私の経験上ではね」
確かに女が絡んだ時の孝平は知らないな……少し不安になってきたが大丈夫だと信じたい。
てか、こいつの異常な偏見は経験から生まれてるのか。
ただただ過保護なだけと思ってたんだが、これほどの美女なら仕方ないのか。
「まあ……アンタほどの美人なら言い寄る男も多いだろうな」
「なによ、そんなの言われ慣れてるから。良い反応を期待したって無駄よ」
「んなもん期待してない」
わかってますって、この現状はあなたにとって不本意であることは。
孝平と佐倉さんがいなけりゃ生まれようのない接点なんだ。あわよくばなんて思ってねーよ。
オレは孝平のためにアンタと行動を共にするんだ。
ん、そろそろ移動するみたいだな。
「あの男が変な行動をとろうとしたらすぐに引き剥がすからね」
「そんなことしないから安心しろ」
******
「やっぱ楽しそうじゃないか、佐倉さん」
「……そうね」
それなりの時間、孝平のことを教えつつ歩き回る二人を追っていると、映画館についた。
今回は映画デートであり、佐倉さんが見たい映画を見に行くそうだ。
当然席は隣になり、距離もぐっと近づくのだが佐倉さんにそれを気にしている様子はない。
「なによあの男、自分で全部払おうとして。懐深いアピールなわけ?」
「アイツがポップコーン食べたかったんだろ。それを全部出そうとするのは変じゃないと思うが?」
映画のチケットは普通に個人で買ってるしな。
「むぅ……私たちも入るわよ」
当然、シアター内へもついていくことになっている。
しかも、二人のほぼ真後ろの席を取ることで薄暗いシアター内でも監視するつもりらしい。
すごい執念だ(ちなみに二人が座る席は盗み見た)
「入るのはいいが……何かないと寂しくないか?」
「別に何もいらないわ……あ、イチゴ味のポップコーンだ。なにあれすごい惹かれる」
イチゴ好きなんですね。さっきもイチゴのケーキ食べてたし。
……めっちゃ目がキラキラしてる。
「……買うか? 半分出すけど」
「え、いいわよ。私が食べたいんだし……あ」
「くふっ……さっきオレが言ったまんまじゃねーか。いいよ、半分出すから食べようぜ」
「むぐぐ」
なんだ、正直嫌な奴と思ってたんだが、結構いいやつなのかもな。
******
「不覚……つい映画に見入ってしまったわ」
「まあまあ、楽しめたんならよかったじゃねーか」
最初はイチゴ味のポップコーンを美味しくいただきつつ二人の会話に集中していた白石だったが、映画が始まってからはその集中力はスクリーンに向かった。
やっぱこの人ポンコツじゃね?
「大丈夫だ。聞いてる限りじゃ変なことをしたそぶりはなかったよ」
「ふん、信用できないわね。ほら見なさい、変な雰囲気じゃないの。きっと嫌なことがあったんだわ」
そう言って白石が二人の間に飛び込もうとする。
「待てって。冷静に考えろ? 異性二人っきりで恋愛映画見たら変な雰囲気にもなるだろうし、そもそも険悪って感じではないだろ?」
今回佐倉さんが指定したのはこってこての恋愛映画だったのだ。
恋人なら良い雰囲気になるかもだが、そうでないなら微妙な雰囲気になる自信がある。
だが、白石はそうは思ってないようだ。
「そんなのあなたの勝手な判断じゃない。そんなの信用できるわけ……」
「あーあ、リア充どもが初々しい雰囲気出しやがって、ケッ」
俺たちの隣を通り過ぎた男が孝平達を睨みつけながらそう呟く。
「ほら、な。他の人からも険悪そうな雰囲気には見えてないみたいだぞ」
「というより私怨が強すぎるだけなように感じるけど……」
「綺麗な女がいると思ったらそいつの隣にも男がいるし、どいつもこいつもイチャイチャするんじゃねーよ」
さっきの男が今度はこちらを睨みながらそう呟いて去っていく。
「……どうやらオレ達もそう言う風に見えてるみたいだな」
「ええ、短絡的な判断だわ」
「ま、仕方ないのかもな。逆に本当にデートするか?」
「は? 調子に乗ってるんじゃないわよ。あなたとデートなんて絶対にお断りだわ。そういうつもりならどこかへ消えなさい」
「いや、冗談だから。もう少し優しくあしらってくれよな……」
いやまあ問答無用で離れないあたり察してくれてはいるんだろうけども。
「まったく、私と行けばあんな雰囲気にならずに済んだのに」
「タイミングが被っただけだろ。とりあえず不穏な雰囲気ではないってことでいいよな?」
「ふん。仕方ないわね……」
めっちゃ不服そうだが、なんとか留まってくれた。
下手な介入を防げてよかったよかった。
さて、時間的に今回のデートはここまでだな。
ちなみに、彼女の家はそこまで遠くはないため、近くまで送って行くとのこと。
というか前回そうしたらしい。
ちなみに、あの後変な雰囲気はすぐになくなり、楽しそうに感想を言い合いながら二人は残りの時間を過ごした。
この間も少しではあるが、孝平のことを伝えられたと思う。
「どうだったよ? 孝平が良いやつで、佐倉さんに釣り合う男だってわかってくれたか?」
「わかっていないわ、全然。私は認めないわよ」
「さいですか……」
やっぱ今日だけじゃ無理か……
「まあでも、あなたが言うことは割と、ちょっと、ほんの少しだけど説得力があったわ」
「つまり?」
「少しは見守ってあげてもいいわ。でもあなたが意味わからないことを言った時点でこの契約は破棄するから」
「契約、ね。とりあえずは今日と同じようにすることを認めてくれるんだな」
「とりあえずは、よ」
よし、なんとか最低限の信頼は得られたみたいだ。
今後も気を抜けないが。
「ほら、教えなさい」
「ん? 何を?」
「連絡先よ。ないと連絡できないじゃない」
「あ、ああ。そうだな、頼む」
確かにそうだが、まさか向こうから言ってくるとは。
「言っとくけど、これは契約のためだから。関係のない連絡をしてきたらすぐに破棄するから」
「わかってるよ」
そんなつもりは全くないし期待してない。
そういうのにはあれ以来しばらく興味ないんでな。
******
この日の後も孝平と佐倉さんが会うごとにオレは白石に同行し、孝平のことを伝えながら誤解を解き続けた。
軽いお食事デート(主観)の時も
「なんでよ、私と行けばいいじゃない……」
「まあ、ちょっとボリューミーなところだしな。男がいる方が安心なんだろ」
「じゃあ私以外にも誘えばいいじゃない」
「そんな友達佐倉さんにいるのか?」
「……」
スポーツデートの時も
「いいところ見せようとしてるわね。あの男」
「そりゃあな。アンタだって佐倉さんからすごいって言われたいだろ?」
「あーうーん……確かに?」
「だろ? というか、いいとこって言っても孝平はそんなにスポーツ万能ではないからなぁ」
「ほんとね、そこまで突出してないわ」
「普通に楽しみたいだけだって」
「そうかもね……あなたのスコアすごいわね」
同じく映画デートの時も
「な、なんで私と……」
「そりゃあ……アンタとホラー見るのはきついからじゃないか?」
「べ、別にホラーだろうが関係、い、い、いやぁぁ!?」
「痛いいたいイタイ!!! 力入れすぎだって!! ……どう考えても怖がりじゃん」
お勉強デートの時も
「なんで他校同士で勉強するのよ」
「一緒にいると集中できるからじゃないか?」
「どう考えても同じ学校の方がいいと思うけど」
「孝平は結構頭いいからな。勉強しやすいレベルと雰囲気ってものがある」
「なによそれ……あ、橘君。そこ間違ってるわよ」
「あ、本当だ。……って、自分の勉強に集中しろよな」
あんまり孝平のこと教えられてない気もするが……大丈夫なんだろう。
とりあえずなんとか契約を続けられている。
そして今日も今日とて二人のデートの尾行に同行する。
……そろそろ付き合ってもいいと思うんだけどな。
そう思えるほどに二人は親密になっており、正直もう不安はなかったりする。
白石もどこかで認めているような、諦めているような。そんな感じがしている。
「……相変わらず藤本君は気配りができるわね」
「うむ、気を使っているのではなく素でやるのが孝平だからな」
「そうね……はぁ」
今までの積み重ねは無駄じゃなかったようで、実際に孝平と会った時を機にだいぶ認められるようになったと思う。
孝平への嫌悪感も感じなくなってるしな。
「さて、今日も無事終了だな」
「ええ、今日もご苦労様」
「気にすんな。ちょっとトイレ行ってくるから待っててくれ」
******
ふう、すっきりした。
いつになったら二人は付き合い始めるかな。もう少し、何かきっかけがあればすぐだと思うんだが。
……ん? なんだアイツら。柄が悪そうな連中だな。
白石の知り合いか?
「だから、付き合わないって言ってるでしょ」
「相変わらず偉そうな物言いだな。いいじゃんか、たまには一緒に飯でも食おうぜ」
「嫌よ。集団で来ないと女一人も誘えない人たちに興味ないわ」
「……よぉく考えろ? 俺がやさしく言ってるうちに」
うん、知り合いだろうが仲は良くないな。明らかに不穏だ。
「……最低ね」
「ふん、もう一回聞くぞ? 俺に付き合うよな?」
「……いy「はいストップ。集団で女一人誘ってどうすんだよ」橘君?」
「なんだお前。今俺はこの女と話してんだ。状況がわかんねえのか?」
「わかってないのはそっち。オレは白石の連れだ。連れがいるのに勝手すんなよ。あと、どう考えても嫌がってるだろうが、やめろ」
「……やっぱ状況わかってねーな。拒否権なんてこの女にないんだよ。おい」
男が指示すると、少し離れていた四人の男達が近づいてくる。
「おいおい、無理やり連れていくのか? ないわー」
「お前も早くどっか行け。じゃねーとどうなるか……わかるよな?」
「いや? まったくわからねーわ」
「ちょっと橘君! 私のことはいいから!」
「まあまあ、男はカッコつけたがる生き物ですし」
「こんな時に何を言って……」
「おーおー仲がよろしいことで。いい加減キレたわ」
男たちに気にせず白石と話していたことが気に障ったのか、男の表情に血管が浮かぶ。
過去に白石を好いていたのだろう。んで、無理やり自分の女にするために今ここで舎弟か何かを率いてきたってところか。
……ダッサいやつらだ。
「これが最後だ。引け」
「カッコ悪いぜ、アンタら」
「舐めてんじゃねーぞおらぁぁ!!!」
「ガッ!?」
「橘君!」
いってぇ……いきなり顔面かよ。
あーあー。血出てるし。
「すぅぅ、はぁ……白石、下がってろ」
「何言ってんのよ! 早く逃げなs「下がれ」……!?」
驚愕と恐怖が入り混じった表情で白石が後ずさりする。
首を振って行けと伝えると、硬い表情をして素直に下がっていった。
「良いとこみせよーとしたことを後悔するんだな」
「……」
五人全員がオレに向かって近づいてくる。
さて、一発いいのもらったし。
「はっはー。しねぇぇガハッ!?」
やるか。
******
「うぅ、ぐぅぅぅ」
「痛ってぇなー全く……」
「嘘……」
男たちが呻きながら倒れている中、オレは口や頬から流れている血を拭う。
「た、橘君……? だい、じょうぶ?」
「いっつー……ん? ああ、だいじょう「て、てめぇ……なにもんだ」あ?」
まだこいつしゃべる気力あったのか。あんだけボコボコにしたのに。
「なにもんとか関係ねぇよ。ただの白石の連れだ」
「なんでてめぇみたいなやつが……そいつは俺のものにするはずだったのに」
「……徹頭徹尾イラつくやつだな。お前みたいなやつがいるから白石は男を嫌い、男に偏見を持つようになったんだよ!」
少しでもまともな奴がいれば、あの二人の恋路がもっと楽なものになっていたかもしれないのに。
本気で白石と恋人になりたいと思う人がいれば、少しは白石の価値観も変わってたかもなのに。
こいつらのような奴のせいで白石はオレの親友をも嫌悪し、一時期は害虫と言い放った。
あの時の白石にとって孝平はこいつらと同じような扱いだった。
オレの親友にクソみてーな嫌悪をぶつけさせやがって!
「お前みたいに無理やり迫るやつ、付きまとうやつ、性根が腐ってるやつ……そんなやつばかりが白石に近づくから、白石は苦しむことになったんだ」
「なんで白石を普通に好きになれなかった。真っ当な方法で恋人になろうと努力しなかった。積み重ねて仲良くなろうと思わなかった」
「態度がきついからか? あまりにも美人すぎるからか? なんにせよ、結果的に白石を不快にしかしないお前らはただの害虫だ! そんなやつらが二度と白石に近づくんじゃねーよ」
ああくそが、気分がわりぃ。
「白石、行くぞ」
「……」
「おい……白石?」
白石は驚いたような表所で固まっている。
ああ……こいつには些か刺激が強すぎたかな。
遠くに行かせとけばよかった。
仕方ないから手を引っ張る。
「行くよ」
「っ!? え、あぅ、うん……」
「悪いな、今はついてきてくれ」
白石は何も言わないままオレに引っ張られ続けた。
******
近くの公園にて血を洗い流した後、ベンチに座っている白石の横に腰掛ける。
「嫌なもの見せたな」
「え! いや、その……怪我は? 痛い、よね?」
やはり色々と怖がらせてしまったようで、妙に白石がよそよそしい。
「そこは心配しなくていい。ちょっと痛い程度だからな」
「ご、ごめん。私のせいで」
「お前のせいじゃねーよ。オレが必要以上に煽っただけだ」
「で、でも……」
「いいから。少しは落ち着いたか? 落ち着いたのなら帰ろうぜ」
ここから白石の家は近い。
ここで別れても大丈夫だろう。
「じゃあな白石」
「まって! 怪我してるんだし、手当てするから……」
「あー別に気にしなくt「だから! 家に来て」は?」
何とか拒否しようとしたが、結局白石の家に連れていかれることになってしまった。
家では大した会話はなく気まずい雰囲気だったが、手厚い手当てをしてもらってオレは早々に家に帰った。
******
あの日から少しの間ギクシャクした関係だったが、時間が解決してくれたのか、孝平達が間に入ってくれたのか、元にまではいかないまでもそれなりに良好な関係を取り戻すことができた。
そして今日は二人の遊園地デートであり、運命の日である。
「ついにこの日が来たが……止めなくていのか?」
「なにを?」
「今日がどういう意味を持つかわかるだろ?」
「知らないしわからないわ。だから止めようがないわよ」
「……そっか」
知らないから勝手にやってくれってか。
長かったな、ここまで来るのに。
自然な流れで(向こうも察しているだろうが)二人っきりにしつつ動向を追う。
「もう慣れたもんだな」
「そりゃあ、長いもの」
「くふっ、最初はあんだけ不審な行動してたのにな」
「や、やめなさい! あの頃を掘り返すのは!」
笑うな―と迫ってくる白石をあしらいながらあの頃を思い返す。
時間としてはそんなに昔でもないのにとても懐かしく思えるのは、それだけこの期間が充実してたからなのだろうか。
「ありがとうな」
「な、何よ急に。何に対してよ」
「全部だよ」
言いながら白石の方を向くと恥ずかしいのか白石はそっぽを向く。
相変わらずストレートに礼を言われるのが苦手な奴だ。
「わ、わたしも……感謝してるわ」
「おお……そっか」
まさか白石がこんなにストレートに礼をしてくるなんて。
こいつも変わったんだなぁ。
******
さて、舞台は観覧車。当然、カップルの定番場所だ。
ここで孝平は佐倉さんに告白する。
当然、失敗したときの気まずさは計り知れないが、心配ないだろう。
だってほら――
「真人! 行ってくる!」
「沙希ちゃん! 上で手を振るからね!」
「ああ、行ってこい」
「ええ、しっかり見ておくわ」
――あんなに幸せそうなんだから。
******
「ついにやったな、孝平」
「ああ! 真人のおかげだ」
「沙希ちゃん! 藤本君が私のこと!」
「ええ、良かったわね」
当然のように孝平の告白は受け入れられ、孝平と佐倉さんは晴れて恋人となった。
幸せいっぱいの二人は互いを離さないようにがっちりと手をつなぐ。
「ほんと、良かったな」
予定調和だったとはいえ、内心でとても感動している自分がいる。
ああ、やっとこいつに彼女ができたんだな。
佐倉さんはとてもいい人だし、孝平もそれに相応しい。
やっぱりいい人にはいい人がそばに来てくれるんだ。
だから孝平に佐倉さんという可愛い彼女ができるのは当然だ。
「さて、幸せいっぱいの二人に申し訳ないし、オレらは退散するか」
「そうね。カップルの邪魔をして馬に蹴られたくないし」
二人して「邪魔なんてそんな」と慌てているが関係ない。
せっかく幸せいっぱいなのに申し訳ないしな。
「じゃ、じゃあ二人に甘えて俺たちはデートしてこよっか」
「うん! まだ時間はあるしね!」
うんうん、存分に楽しんでくれ。
「あ、そうだ」
ん? なんか孝平のやつこっちを見てにやにやしてないか?
「真人も白石さんとデートしてきなよ!」
「え」
「ちょ! おい!」
「あ、それがいいよ! いってらっしゃい!」
「佐倉さんまで……」
いくら余裕ができたからって親友をからかうもんじゃねーぞ孝平。
佐倉さんも楽しいのか同調しちゃってるし。
おかげでなんか知らんが白石のやつ完全に固まってんじゃねーか。
まったく、仕方ねぇなぁ。
「だとよ、白石。オレらもデートするか」
そう言いながら二人から離れて歩き出す。
もちろん冗談だったが、あの時のように白石は冷たくあしらうと思っていた――
「べ……別に私は構わない、けど」
――のだが?
「え?」
聞こえてくるわけのない言葉が白石の声で聞こえてきたため、確認しようと振り返る。
そこには少しうつむきながら顔を赤くしている白石がいた。
「……ぇ?」
かすかにうめいたオレに対し、白石は更に顔を赤くしてうつむくのだった。
ご拝読いただきありがとうございます。
自分は元々、モテモテの主人公気質の隣にいるそいつの親友が、モテる男をからかいつつ実は自分もモテていることに気づいていない、みたいなストーリーが好きで。
親友に視点を置いたものが好きなんです。
なので、今回みたいな親友のために頑張ってたらいつの間にか自分が、みたいな話を書いてみました。
所々ご都合主義的展開だったかもですが、自分好みのお話ができたと思います。
言ったやつとはちょっと違う気もしますが、他の人の恋愛応援してたら自分も好かれていた、みたいな展開はとてもいいと思うんですよね。
皆さんはどうでしょうか?
自分と似た好みをもつ方がいらっしゃればうれしいです。ではでは。




