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死処を求め異世界順道  作者: 飴口
黒白の砂城
28/49

砂塵


 槍の長さは二から三メートル程の超長物に加え、()の部分が一般的なひし形ではなく船の(いかり)のような形状をしている。それ程の長い槍で穂がデカければ先と持ち手の真ん中辺りが重力に負けて撓るが筈だが、ダァンの(ソレ)はピンっと真っすぐな状態を崩さない。


 「イェッハァー!!!」


 「ッ!」


 まだ対して間もないが、槍の使い手としてもダァンは超一流とわかる。一撃一撃の間が早く、戻しも早い。近付こうと足を一歩踏み入れた途端に碇の槍を横に振るい牽制(けんせい)を掛けてくる。

 真面に穂と鍔迫り合いをしようものなら、葉昏の軽い体など堪らず後方へと吹き飛ぶ。故に攻撃を躱し、流さなければならない。


 「(豪傑と相対した時、相手の力を利用して距離を取るのが何時もの儂じゃが……周りに風の結界がある限り、そうやすやすとは使えんか)」


 初撃時、ダァンは地面を一踏みした。

 普段ならば何気ない動作の一つと捉えるが、その後すぐに二人を囲むように台風の結界が張られ、外界から遮断されてしまった。


 「どうしたァ~? 守りばっかし固めてても、私には勝てないわよ!!!」


 「(一介の兵士が振るう槍であれば、突き出した槍を戻すまでの間に太刀打ち部分を斬れるが、この速さと穂が邪魔で出来ん。二撃目の時、強度を測ろうと刀を這わせてみたが、アレは鉄ではない。それ以上に難い鉱物。この世界で流通している砂戈(サ・カ)とかいう槍の高級品なのか? それとも母様から受け渡された特注品か……)」


 まだ葉昏には余裕があった。なければ話にもならない。異能力や逸脱した身体能力から(かんが)みても、敵が化け鳥であることは明白。葉昏のように敵の行動を観察してこそいないが、相手も本気の半分も出していない。


 「ッテャ!!!」


 「! (地面が爆発した! やはりあの槍は砂戈(サ・カ)だというのは間違いないか。だとすれば下に流すのも危険……)」


 「……フゥー」


 ダァンが攻撃を止めた。

 あれ程までに激しい突きを繰り返していた槍を戻しもせず、地面につけた状態のままため息をついていた。


 「……」


 「どうした、の一言も無いのね。まぁ予想はついてたけど」


 「(変化を誘っとるな。短い間とはいえ、奴の性格からすれば当然の行動か。今は探りの時間。何方の優位という訳でも、劣位でもないからな)」


 「ねぇいい加減本気で(かか)ってきてよォ。じゃないと()り切れな~い」


 「……」


 何も答えず、この間を利用して構えを見直し次の攻撃に備える。それが終われば敵の観察。今見えている情報から得られる事や駝鳥の時の情報を照らし合わせる事で、別次元の攻撃が来た際の動揺を0.1秒でも減らす。


 「(出雲の剣の腕は相当なモノ。だがそれをもってしても敵の化けの皮を剥がすキッカケを与えるに過ぎなかった。人間状態での両断は厳しい。眼球や咥内(こうない)を狙ったとしても、内の姿がその通りとも限らん。実際駝鳥は人間時では想像も出来んほどデカかったからな)」


 「ねぇねぇ聞いてる~???」


 「(相手は云わば鎧を付けているようなモノ。ならば化け鳥状態にするのが手か? だがもしその状態が人智を超えた力を有していたらどうする? 手の施しようもなく、無残に死ぬ……否! 儂はこんな所で死んではならんのだ!! 我が人生の頂を確かめる為。死合いに赴くまでは!!!)」


 「……はぁー。しゃぁーないか……!!!!」


 砂戈(サ・カ)とは簡単に言ってしまえば砂の槍である。

 小粒だが強度がある砂靭(ザ・ジ)と別の砂と交わると結合する砂雑(ザ・ザ)。そして穂の部分には砂炸(ザ・ザァ)という砂を用いている。砂炸は強い反発性を持ち、砂雑以外の砂に触れるとその砂は(たちま)ち弾け飛ぶ。これら三つを型に入れて数日待つと砂戈(サ・カ)が完成する。


 何故この説明をいましたか。

 理由はダァンが周りの地面目掛けて砂戈を乱突し始め、周りが砂埃(すなぼこり)で覆われてしまったからだ。


 「(目眩ましか……! だが予想の範疇。そして獲物が槍ならばやる事は一つ!)」


 自然発生した霧の中であるなら、多少は面倒だったかもしれないが、これはかなり楽な部類に入る。砂埃が濃くなる、つまり破裂する際には破裂音が当然付き纏って来る。耳を塞いでいても聞こえる大きな破裂音。加えてその音はほぼ等間隔で鳴っている為、攻撃が来るタイミングは判別しやすい。


 「(来た!)」


 予想通り煙の中から槍が飛び出て来た。

 当然予見していた葉昏はそれを軽く()なす。


 「ッ!! 何!!?」


 正面から来た槍は去なしたし、敵であるダァンの気配も前にある。

 だというのに葉昏は血を流している。痛みを感じている。驚愕している。

 受けた場所は右大腿部(みぎだいたいぶ)(すんで)の所、といっても四センチ程刺し込んだ辺りで回避行動を取ったため、貫通は避けたがかなりの傷を負ってしまう。


 「これは……槍!?」


 傷付けた正体は槍だった。

 何の変哲もない只の槍が地面から竹の如く生え、葉昏の足目掛けて刺さってきたのだ。


 油断はしていない。ただまだほんのちょっぴり、常識という縛りに縛られていた。敵が目の前にいて武器は槍で視界不良。見慣れた光景、やり慣れた光景に思わず今いる場所が異世界で、敵が化物だという事を欠落してしまった。


 「ッ!!」


 痛みを実感している暇もなく砂戈が振り下ろされ、爆発が襲い掛かる。


 「(体勢が……!) ッハァ!!!」


 堪らず大振りに刀を振るい、周りの砂埃を振り払う。


 「(ダァンにこれといった変化はない。生える槍はとっておきという訳でもないのか)」


 「ふっふ~ん、先制した上に機動力を削いだ。だいぶ辛くなってきたんじゃないの???」


 「(あの生える槍、儂等がバクサに叩き落された時のモノだ。だが周りにこの男の姿も気配も無かった。何かしら発動条件がある筈)」


 「……ま~だだんまり決め込む気? そんなんだから男は嫌悪されるんだよ!!」


 再び砂戈を地面に当て砂を撒き散らす。

 先程と全く同じ状況だが、葉昏の心境は違う。春先、縁側で座禅を組み桜を見ているかの如く静かな心持。緊迫した状況には似つかわしくない程落ち着き払っている。


 「(ダァンの動きに変化はない。変わらず地面を叩き続けている……)」


 精神を落ち着かせ、集中状態の葉昏は完全防御と周囲の索敵に特化している。その場で止まり続けなければならない為、乱用こそできないがこの状況には適していた。


 「……ッ!」


 槍はやはり地面から生えてきていた。その場所に何か種の様な物が撒かれた訳でもなく、予兆なく生えて来た。だが明鏡止水の前では、背後からの急襲も突発的な攻撃も意味をなさない。穂先の次の部位である口金(くちがね)が出来る前に居合で斬り離してやった。それとほぼ同時に、砂戈の爆発音が止んだ。


 「……」


 「ふーん、流石に弟を殺した奴のお仲間ってだけはあるみたいね」


 「……弟?」


 「あっ、やっと口開いてくれた~」


 「弟……駝鳥の事か……」


 「当然じゃな~い、烏も鷲鷹兄妹も所詮は『屑児(くずご)』で兄妹とはみなされていないわよォ」


 「屑児?」


 「そうよ~~~ォ。何の特殊な力も持たない人間の延長線でしかない児未満の奴をを『屑児(くずご)』って言うのォ。で~ェ、私やギリギリ能力持ちだった駝鳥は『早児(はやご)』と呼ばれる、母様の児として認められた幸運な生命なのよォ~~~~~。でも人数は私と駝鳥含めて今は四人しかいないけど~」


 「……槍を地面から生やす能力。そんな程度で」


 「馬鹿にしないでよ? 私は駝鳥なんかと違って生れながらの早児。実力も能力も段違なんだから」


 「ほう、では披露してくれるのか?」


 「それは考え所。少なくとも今の段階だと強いのかどうかって言うのも判断しかねるしィ。……だ~か~ら~、そろそろ真面目に()る?」


 「……」


 「刀を構え直したって事はァ、了解っていう事よね!!!」

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