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死処を求め異世界順道  作者: 飴口
黒白の砂城
21/49

不完全再戦


 「ママー、今日のご飯はー?」


 「今日はパパが帰ってくるから、奮発して砂漠ネズミの串焼きにしよっか」


 「わーい!」


 大好物が出てくると聞いて大喜び。

 だがそれ以上に、監視隊として働いている父親の帰宅が何よりも嬉しかった。

 彼女達は今日という日が幸福のまま過ぎ去っていくのだと、何処か確信していた。


 しかしその思い上がりは、とある一軒家から聞こえた途轍(とてつ)もない爆発音によって踏み躙られる。


 「な、何!? 何の音!!?」


 自然と視線が爆発音の方向を向くとその先には、音の通りの光景が広がっていた。

 一軒家から煙が上がっている。

 だが妙な事に、その場所とは別にもう一か所土煙が待っている。


 「あそこは確かアマンダさんの家! でもあっちは何もなかった筈……」


 「ママぁ、怖い……」


 「! 大丈夫、大丈夫よ。ママが貴方を守るか……」


 恐怖する子供を必死で守ろうとする母性本能が、それを見た瞬間自己防衛に変わりそうになった。


 家から舞い上がっている土煙から黒い影がぬるりと立ち上がった。

 だがそれはアマンダの陰ではないと素人目にも分かる。


 砂煙越しに移る巨大な影は、明らかに砂家よりもデカく異形だ。

 首と足が異様に長くて太いのに対し、両手と胴体は短く広い。

 数十メートル離れているというのに、それを見た瞬間から震えて体が力む。

 明らかに人ではない何かがそこにいた。


 「クルロォォオオオオオ!!!!!」


 「(夫から聞いたことがある! 戦士として砂漠へ赴き、初めて蠍と対した時、戦士は皆震え、体が凍り付いたように動かないと!! これがそれなの!? 私は、一体何を目にしているの!!!?)」


 「マ、マ? 痛い……」


 震えた足は立とうとはしない。

 ただ足の裏で砂を寄せるくらいにしか動きが取れない。

 母親は生涯で一番の恐怖を、今日この時味わった。


 ----- ----- ----- -----


 家が爆発する少し前。

 化物はまだ本性を(さら)け出し切ってはい無い。


 「殺ス!!」


 繰り出したのは拳。

 だがその拳速(けんそく)は一般成人より少し早い程度で、出雲にとっては余裕の攻撃。

 (ほど)けるのが遅い腕の皮膚を切り刻み、加速させる。


 「遅い遅い」


 「ックラァ!!!」


 化け物は片足を上げ、あからさまな蹴りの体制へと移ろうとしていた。

 わざわざこの場面でそういった行動を取るのだ、何かしらの訳があるという事は察知できる。

 十分すぎるほどの隙だが、癖が出てしまう。


 「(振り向き様に合わせて、首をサクッと斬るか)」


 出雲の技を凌いだ防御力といった点では、評価はしていた。

 だが実際の所、守りでは攻めには打ち勝てないというのが事実。

 今し方の拳速は常人よりも鋭く威力があったとはいえ、出雲の基準で言えば下の上か中の下辺り。

 そんな相手にわざわざ本気を出す理由が何処にある。


 「(固いってだけなら、前に戦った鳥兄弟の方が幾分かはマシだったな)」


 「喰ラエ!!」


 ----- ----- ----- -----


 「ッゲホ!! ……あー、クッソ痛ェ」

 

 そして現在、出雲は家から百メートル離れた場所で血を吐き倒れていた。


 「(成る程。本命は蹴りで、奥の手は蹴速(しゅうそく)ってか? しかも、あれでまだ本気じゃねぇのか)」


 出雲は攻撃をモロには受けてはいない。

 蹴りが来る瞬間、相手の攻撃は自身の繰り出そうとした技の速度よりも早いと勘付き、後ろに大きく飛び回避を試み、物理的な蹴りは回避できた。

 だが、蹴りから放たれた風圧を予期する事が出来ず、扉を崩き肉体を地面に擦り合わせながらここまで吹き飛ばされてきた。


 「……真面に喰らってたら死んでたな」


 立ち上がろうとするが、足がふら付き、蹴られた辺りがズキズキと痛みを主張してくる。

 刀を杖の様に突き刺し、立ち上がる姿は無様にも見える。


 「死んでいた、か。これが全力を出した結果だったら満足したんだがな……!!!」


 何を血迷ったか、出雲は刀を抜き、自らの左手を突き刺した。

 刀は手を抜け地面へと刺さる。

 痛みから脱しようと少しでも動けば、内に入った刃が傷口を鋭利に広げ痛みを増させる。


 「ッ!!」


 刀を抜いた所で、一陣の風が周りの砂煙を散らした。

 勿論自然風ではなく、生死の確認を確かめようとした敵の軽い一蹴りによるものである。

 そうしてみた光景が自らの手を刺している光景なのだから、動揺を隠せない。


 「何、シテル」


 「……気に、すんな。只のケジメだ」


 「ケジメ?」


 「お前に言ってもわかりゃしない。ただ言える事があるとすれば、てめぇ如きにこんな失態を晒した俺が情けねぇって話だ」


 「テメェ如キ? ソレハ、コチラノ台詞。只ノ風圧デ瀕死ノオ前如キニ、コノ姿ヲ晒ストハ」


 その姿は、先程の人間状態からは想像も出来ないほど異形で巨大だった。

 長く伸びた首だけでも子供一人分はあるがそれ以上に目立つのは脚部。

 大木と見間違えるほど太く屈強で、成人男性の伸長に匹敵するほど長々としている。


 対する手の部分は羽に覆われて見えないが、足とは対照的に短い。

 だがその羽は先の出雲の斬撃を受けても斬り切れなかった強度を誇る最高の盾である事は間違いない。

 胴体と両腕部分には黒く(つや)めく黒羽、両足部分は対照的な程白く澄んだ白羽。

 見た目からしても今まで戦った鳥の化物とは違い、数段上の存在だと主張してくる。


 「……互いに不完全燃焼。なら話は早い、再戦だ化け鳥」


 「化ケ鳥デハ無イ。我ガ名ハ【駝鳥(ダチョウ)】ダ白人」


 「白人じゃねぇよ。俺ァ出雲って名前がある」


 「ドウデモイイワ!!!」


 「こっちの台詞だっつってんだろ!!!」

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