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とある魔族の成り上がり  作者: 小林誉
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第141話 使役

「簡単に言うとね、私は魔物を使役する事が出来るスキルを手に入れたのよ」


城内の私室に場所を移し、仲間達が見守る中でアンジュはそう言った。最初は馴れ馴れしい態度の彼女に、シーリなどが警戒心を露わにしていたのだが、俺の幼馴染みだと知った途端態度を一変させた。


「魔物を使役? それはどんな魔物でも可能なのか?」


聞いた事も無いスキルに戸惑う。つまりは俺の支配と同じようなスキルなのか? それの魔物限定版と言ったところか。面白そうなスキルに俄然興味が湧いてきた。


「今の所どんな魔物も従える事に成功してるわ。数もどんどん増えてきてるし、ゴブリンぐらいなら千は下らないと思う」

「千!?」

「凄いな。軍隊規模じゃないか……」

「おいおい、一気に戦力増強じゃねえか。今までちまちま増やしてたのがアホらしくなる数だぞ」


俺と同様、仲間達も驚きを隠せない。今の領地の配下は総勢で五千程度。その中で戦力として使えるのは半分が良いところだろう。魔物とは言えそこに千も上乗せされるとあっては、今すぐにでも他領に攻め込む事が出来る戦力が整う事になる。しかもゴブリンは繁殖力が強くて成長が早い。いくら死なせても替えが利くのだ。


「アンジュ。もう魔物の群れは従えているのか?」

「大森林の北側に集落を作らせて待機させているわ。何なら案内しようか?」

「そうだな。一度直接見ておきたい。案内を頼めるか?」

「任せてよ。見たらきっと驚くと思うわ」


大森林に魔物が多いのは知ってるが、千匹近くのゴブリンが集落を作っていたなんて知らなかった。下手に交戦してたら危なかったかもな。内心胸をなで下ろしつつ、俺達はペガサスに乗ってさっそく目的の場所に向けて飛び立った。道中、後ろに乗ってしがみついていたアンジュと今までの事を色々と話していたのだが、やはり彼女は彼女で色々とあったようだ。


アンジュがスキルを手に入れたのは、予想通り俺と同じ麦神の像からだった。俺とヴォルガーが争っている時、流れ出た血が麦神の像に触れて俺がスキルを手に入れた事を覚えていたアンジュは、俺が村を去った後に自分で何度か試してみたようだ。


最初は指に針を刺した程度の数滴。効果がないとみるや、指を切って多めに、次は腕、足と言う風に、大量に血を流し続けたらしい。聞いてるだけでこっちの頭がクラクラするような恐ろしい話だというのに、アンジュはあっけらかんとしている。


大量に血を浴びせ続けた成果なのか、ある日アンジュは自分がスキルを手に入れた事に気がついたらしい。『使役』と言う名のスキルを手に入れたアンジュは、まず近場の動物で試してみる事にしたのだが、小動物だろうが大型の猛獣だろうが、一回も成功しなかったそうだ。それでもめげずに原因を探っていた時、ふと思った。動物で無理なら――魔物ならどう? と。そこからは早かった。見かけたゴブリンを視界に収めるだけで支配下に置き、一匹が二匹、二匹が四匹という具合に次々と数を増やしていった。おまけに種類も豊富で、コボルトやオークはもちろん、ハーピーやオーガーまで支配下におさめたそうだ。順調に数を増やしていったアンジュだったが、ある日自分の持つスキルの限界に気がついた。


「限界って?」

「あのね。たとえば百の力を私が持っているとするでしょう? その場合、ゴブリンは十匹で一の力を必要とするの。オーガーなら一匹で五と言った具合に。魔物によって必要とする力には違いがあるけど、私の百という力に変化はない。つまり――」

「その範囲内に収まるだけの魔物しか使役できない?」

「そう言う事」


なるほどな。やはり無限に魔物を支配下に収め続ける事は無理なのか。俺の支配も百人という上限があるし、似たようなスキルだけに制限も似ているのかも知れない。


「で、色々と集めるのもいいんだけど、やっぱり数を集めた方が色々と役に立つんじゃないかと思って、ひたすらゴブリンだけをかき集めたのよ。何かの作業をさせるにしたって、オークが十匹居るよりゴブリンが百匹居た方が便利でしょ?」

「確かに。数が多いのはそれだけで武器になるからな。力の弱い魔物でも使い方次第で脅威になる」


『使役』スキルの能力はアンジュの説明で大体理解出来た。しかしもう一つ気になる事がある。多数の魔物に対して、どんな方法で命令を下しているのかだ。俺が支配の影響下に置いた人間達は、俺に絶対の忠誠を誓っている事を別にすると、全て自分達の意思で行動している。別に傀儡(くぐつ)のように意識のない人形と化すわけじゃない。その辺を質問すると、アンジュはよく解らない答えを返してきた。


「うーん……何て言ったらいいんだろ? 私は全ての魔物と意思を共有させる事が出来るんだけど、大ざっぱな命令だけ下せば、後は勝手に動いてくれるよ。だから人形に近いのかな?」

「命令を下すのは口頭か? それとも何か特別な方法があるのか?」

「距離は関係無く私が考えただけで動いてくれる。意思と同時に視界も共有できるから、何処に居ても魔物達が何をしているのかわかるし、魔物だけで何処かを襲わせる事も出来るわ」


便利すぎるスキルじゃないか! 軍事という面で考えれば俺の支配より上だと断言できる。


「しかし、多くの魔物の意思と視界を共有って、頭が変になりそうで怖いな」

「慣れない内は何度も酷い頭痛に悩まされたよ。気持ち悪くなって何度も吐いたし、体調が悪くなったのも一度や二度じゃない。最近は慣れたから平気だけどね」


そう言ってアンジュは笑う。俺が戦っている時に、彼女も厳しい戦いをくぐり抜けていたようだ。


「あ、ケイオス。あそこ! あそこがゴブリンの集落よ」


アンジュが指さす先には、開けた土地にいくつもの薄汚れた天幕が張られてあり、その周囲では多数のゴブリンが整列して、俺達に向けて手を振っていた。驚いてアンジュを振り返ると、彼女はイタズラが成功した子供のように笑う。


「ちょっと並ばせてみたの。様になってるでしょ?」

「……ああ。驚いたよ。本当に凄いスキルを手に入れたなアンジュ」


ゴブリンに見守られながら俺達を乗せたペガサスは高度を下げていく。さて、ここでゴブリン達がどんな生活をしているのか、少し見せてもらうとしよう。


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