最終話 その後
3日後、三鷹の姿は病院にあった。成岡の母がいる病院だ。
三鷹は看護婦に病室をきいて成岡の母の病室に向かった。
コンコン。三鷹は軽く扉をノックして中に入った。
中には、静かに眠っている老婆がひとりいた。おそらく成岡の母だ。
三鷹はおばあさんを起こさないようにそっと手紙とパンパンになった封筒を二つ横のテーブルの上に置いて静かに病室を後にした。
手紙にはこう書いてあった。
母へ
やっとお金ができたので送ります。
遅くなって申し訳ありません。
本当は自分の手で渡したかったんだけど渡せなくなってしまったので、友達に頼んでおきました。
話はコロコロ変わりますが、封筒の中には二つあわせて2000万円入っています。それで手術を受けて元気になってください。
長生きしてください。
充より
三鷹が病室をでたらそこには会田がいた。
「渡せたか?」
「眠っていたから、おいてきたよ。」
「それが一番だな。」
「だろ。」
「それにしてもお前があんなこというとはな。やさしいところもあるんだな。」
「まぁな。」
三鷹が会田に頼んだのは『成岡の保険金を自殺だけど支給して欲しい。』というものだった。三鷹は成岡の母に手術を受けさせるためにどうにかできないかと会田に頼み込んだところ、会田は素直にこの頼みごとをきいてあげた。
会田は保険会社に電話して、保険金の一割でも払ってくれないだろうかと頼んだところすんなりOKしてもらい、3000万円を手に入れることに成功した。
だが、ここで問題が発生する。成岡の母にあげたのは2000万円。残りの1000万円は何に使ったというと、現場の清掃費だ。壁紙から床まですべて変えたため、けっこう費用がかかってしまったという次第だ。
「会田、今から飲みに行こう。」
「おい、今からって昼だぞ。本当に飲むのか。」
「当たり前だ。夜まで飲みつづけるぞ。」
三鷹があまりにも張り切っているので仕方なく会田も付き合うことにした。
「仕方ない。ただし割り勘だぞ。」
「文句はない。」
二人は笑いながら病院を去り、無機質なビル群に消えていった。




