第5話 燃えカス
マンションから出て日の光を浴びるのは3時間ぶりだった。
「どこか、喫茶店あるかな。」
会田は三鷹ともに街路樹の並ぶ道を歩き始めた。
歩き始めた瞬間だった。突然三鷹が足を止めマンションと雑居ビルの間をじっと見ていた。
「あれ、ゴミ捨て場だよな。」
「ああ、そうだな。」
三鷹がみていたのは、アメリカンコミックなどでボケ役が頭から突っ込む大きなゴミ箱だった。
「会田ちょっと来てくれ。」
三鷹はゴミ箱のほうに歩き出した。
三鷹はゴミ箱まで行くと突然しゃがんだ。
「おい、三鷹ゴミ捨て場なんかに何があるんだよ!それにゴミ箱の中身は今日ゴミ回収の日だから中は空っぽだぞ!」
会田の言う通りにゴミ箱の中身はなかった。だが三鷹はそこを動こうとはしなかった。
「これなんだろ。」
三鷹は黒い何かを手にとった。
「どこで拾った?」
「ここに落ちてた。」
三鷹はここだ。という風に指で下の地面を差していた。
「なんだろう。この黒いのは。」
会田がきいてみると、三鷹は手触りを確かめながら
「多分何かが燃えたあとだな。」と答えた。
「何かが燃えたあと?」
「そうだ。放火かなんかかな。ほら今都内で連続している。」
「そうか!」
会田はわかった顔をしたが、その顔はすぐに元に戻った。
「それはないな。」
「どうして。」
「それはだな。昨日はここでの放火の通報はきいてない。昨日は別の場所が放火されてたからな。」
「そうか…」
三鷹はポケットに燃えカスを押し込み、立ち上がって歩き始めた。
「おい会田。喫茶店、探すぞ。」




