第2話 捜査開始
三鷹は机に突っ伏して眠っていた。そんなときだった。
プルルルルルルル。プルルルルルル。
事務所の電話が、けたたましく鳴った。
「ったく…なんだよ・・・・」
三鷹はうっとうしそうに電話に答えた。
「はい、三鷹後始末請負店ですが。」
電話をかけてきた相手は、知り合いの刑事の会田だった。
「おお、三鷹か。」
「そうだが、何か用か?」
三鷹は眠くて眠くて仕方ないのだ。
「そんな言い方していいのか。仕事をやろうと思ったのに。」
「本当か!」
三鷹の睡魔が吹き飛んだ。
「ああ、今すぐ都内のマンションに来てくれ。」
「わかった。今すぐ行く。」
三鷹は、いつも着ている黒のダウンジャケットを羽織って、仕事用具を持って現場へと走り出した。
「鑑識、入ります。」
会田が腕組をしている横を鑑識の行列が通っていった。
そんなときにきたのがあの男だった。
「おい、入れてくれって!俺は会田に呼ばれてきたんだって!」
「ダメです!そんな嘘ついたって。ここは警察関係者以外立ち入り禁止なんですから!」
みると、玄関で佐藤が必死に黒のダウンジャケットを着た男を止めていた。
「佐藤。その男は俺が呼んだんだ。入れていいぞ。」
佐藤はきょとんとして、会田を見た。
「…ええ?」
「俺が呼んだの。こいつは三鷹っていうんだ。ある仕事のために呼んだんだ。」
佐藤が呆然と立ち尽くしてる横を、三鷹が通りすぎていった。
「よう、会田。ホテルシルベスタ以来だな。」
「そうだな。」
ホテルシルベスタとは、彼とはじめて会った場所でもあり、彼が初めて事件を解決した場所でもあった。
「で、今回はどんな事件なの?」
「今回は単純だ。ただの銃殺さ。お前には掃除を頼みたいだけ。」
「何だ。そうか…」
三鷹はつまらなさそうにつぶやいた。
三鷹はポケットに手を突っ込みながら現場の書斎に足を踏み入れた。
「うわあ、また派手にぶちまけてくれたな。」
三鷹が嫌そうな顔をしていると、鑑識のひとりが話し掛けてきた。
「おお、あなたが三鷹さんですか。ホテルシルベスタの件であなたは警察の中でちょっとした有名人ですよ。」
「そうですか…ところで、もう掃除していい場所あります?」
「あっありますよ。あの窓の下の血痕とかならふき取ってもらってもかまいませんよ。」
「あ、わかりました。」
三鷹は作業に取り掛かった。
三鷹は口笛を吹きながら、床を拭いていた。その間会田は、することがなく暇だった。
「会田。この部屋の真下ってゴミ捨て場なんだな。」
三鷹が、窓の外に体を乗り出しながら会田に問い掛けた。
「そうだな。うまくいきゃここからゴミ捨てれるんじゃないか?」
会田が冗談を言いながら、三鷹に近寄った。
「ふーん。いけるかもな。」
三鷹は、窓のサッシを拭きながら言った。
「さぁ、聞き込み行こうか?」
会田は、佐藤に呼びかけた。
「はい。行きましょうか。」
佐藤がコートをとって先に出て行った。
「おい、三鷹。聞き込み行くぞ。」
「何で、俺が?」
三鷹がうっとうしそうに言った。
「おい、三鷹。俺はお前を現場の清掃のために呼んだと思うか。」
「ああ、そう思ってるよ。」
三鷹は、窓のサッシをまだ拭いている。
「ホテルシルベスタの事件解決してくれただろ。今回も頼むよ。」
会田は手を合わせて、頼む!というしぐさをしている。どうやら掃除を頼みたいというのは冗談だったらしい。
「やってもいいけど、報酬は?」
「そりゃ、たんまりと。」
「俺、近江牛が食べたいな。」
「えっ…まぁいいさ。」
三鷹は窓のサッシを拭くのをやめ、会田についていった。




