第1話 事件発生
「今日もか…二件もやられてるな…」会田の上司、小牧がコーヒー片手に新聞を読みながらつぶやいた。
「そうですね。都内の放火。いったい誰なんでしょうね。」
会田は、上司に相槌を打った。うちの上司は無視されることを一番嫌う。
ここ最近おきている都内放火事件、一ヶ月前から始まり、今日まで30日間すべて放火事件がおきている。しかも狙われているのはいつも決まってゴミ捨て場。
幸い、死人が出ていないので捜査一課としては助かっているが、殺人事件も放火事件も犯罪は犯罪だ。必ず捕まえて、刑務所にぶち込まないと。
そんな朝のひと時を過ごしているときだった。署内に無線が響いたのは。
「渋谷区3丁目のマンションで、殺人事件発生。捜査一課は至急出動してください。」
会田はまだ何も言われていないのに、コートを手に取った。
「おい、会田と佐藤行って来い。」
小牧が拳で自分の肩を軽く叩きながら命令した。
「はい、行ってきます。」
会田と佐藤は、早足で捜査一課を立ち去った。
「おい、佐藤。被害者は?」
会田は愛車のスカイラインを現場にとばしながら、後輩の佐藤にきいた。
「はい、名前は成岡充、42歳。職業はタレントです。」
「成岡――知らないな…」
会田はもともと芸能界にあまり興味がなかった。
「で、他には?」
「他には、ですか…」佐藤が警察手帳を忙しくめくる音が聞こえた。
「あ、ありました。噂によると、成岡さん。暴力団とのかかわりもあったとかそうで…」
「そうか…」
会田は頷きながらスカイラインのアクセルを踏みなおした。
30分ほど走ると、事件現場のマンションについた。
落ち着いた感じの色が印象的なマンションだった。
会田は車から出た後、白い手袋をコートのポケットから出しながらマンションのエレベーターのボタンを押した。
会田は事件があった153室の扉を勢いよく開けた。
会田が、部屋にゆっくりと足を踏み入れると殺人事件に漂ってるにおいに襲われた。
事件があった部屋は一番奥だった。そこは書斎のような場所で、一番奥にある窓のすぐ手前に被害者はいすに座って死んでいた。死因は頭を銃で撃ち抜かれたと誰が見てもわかる。傷口が額にくっきりと残っているからだ。
窓は、12月だというのにあいており、とても寒かった。床には血が飛び散り白い床を真っ赤に染めていた。
「うわ…」
佐藤が少し気持ち悪そうにしていた。
「あれ、お前現場初めてだっけ。」
「いいえ…絞殺の死体とかなら見たことあるんですけど、ここまで血が出てるのは初めてです…」
佐藤は今にも吐きそうだった。
「誰だって、そんなものさ。佐藤、少し外で休んでな。」
「ありがとうございます…」
佐藤は、腹を抱えて苦しそうに部屋を後にした。
「鑑識はいつ来るんだ?」
近くの刑事に聞いてみた。
「あと五分ほどで到着するみたいです。」
「そうか…じゃあ、そろそろあいつを呼んどかなくちゃな。」
会田は携帯電話を取り出し、三鷹の事務所に電話をかけた。