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面倒

また陣内のくよくよ悩み回です

 3匹目の魔石魔物は狼型であった。


 俺はその魔物も野良冒険者達だけに攻撃させた。

 ‥ある縛りをかけて。


「何で放出系WSウエポンスキルは禁止なんだよ!」

「こんなの近寄れないだろうが」

「やり辛くて仕方ねえよ!」

「やってられっかよ!戦いってのわかってねぇよコイツ」



 冒険者達は戦いながら愚痴を吐いていた。

 確かに彼等の戦い方を否定しているようなモノなのだから仕方ないだろう。

 

 だが、この放出系WSウエポンスキルに頼った戦いをしていくと今後辛くなると判断した俺は、放出系WSウエポンスキルの禁止という縛りを設けたのだ。


 俺の考え方が正しいかどうかは判らないが、現状ではレベル50にも満たない冒険者の放出系WSウエポンスキルなどは、ちょっと堅い魔石魔物相手だとクソの役にも立たないのだ。


 50を超えると、放出系WSウエポンスキルも威力を増して来るのだが。現状で放っても、ただ攻撃を当てている程度なのだ。だから俺は‥


『クソの役にも立たない放出系WSウエポンスキルは使うな、使うならこのパーティから抜けてもらう』と、ハッキリと言ったのだが。


 現在。


「ならお前が戦ってみせろよ」

「そうだそうだ!口よりも行動で見せてみろよ」


「わかった、」


「「「「‥は?」」」」



 俺は戦闘中の狼型に正面から切り込んだ。

 時間をかけても良く、周りを気にしなく良く、ただ倒せば良いのだから、然して問題などなく正面から打ち合い魔石魔物を黒い霧へと変えてやった。


「――っな!?」

「マジか、」


 

 俺を煽っていた冒険者達が、一様に黙る。

 俺はこの時に、”これで冒険者達も俺を認めるのでは?”と少し期待をした。

 WSウエポンスキルなどに頼らない強さを見せ付けてやったのだから。これなら、冒険者達も素直に俺の指示に従うだろうと。


 しかし、その考えは甘かった。


 押し黙るように、何も言わなくなってはいたが、その目は明らかに反抗的であった。黙りはしたが納得はしていない様子である。




 それから5匹目の魔石魔物を倒した。

 次までの湧き待ちの間、殺伐とした雰囲気が充満していた。その原因は、先程の俺と冒険者達のやり取りであろう。

 そんな中、レプソルさんが俺の隣にやってくる。


「ジンナイ、ちょっといいか?」

「ああ‥」


「やりたい事は解る‥けど、やり方が拙いね」

「‥‥」


「想像してごらん簡単な事だから。ジンナイがやった事を、もし自分がやられたのならと、相手の立場ならどう思うのかと」

「‥‥‥」


 ――くだらない、

 そんな教科書みたいな事は理解してるっての、

 正論過ぎるんだよ、でも、やらないといけない事だろうが、

 判らせないと駄目だろ‥弱さとか、使えなさとか、



「ジンナイの言っている事は正しいのだろう。今のままじゃ駄目なんだと」

「‥‥‥」


 ――だから無理矢理黙らせたんだろが、

 それの何が‥



「あいつ等も理解はしていると思うよ、だけど‥」

「‥‥‥」


「感情が納得してないのだろうな、」

「――ッ!?」


「だから、やりたいことは判るけど、あのやり方が不味かった。あれじゃ相手のメンツとか、そう言ったモンを潰しただけだろ?相手の感情汲んでやれとは言わないが、無視しをしすぎだ。ジンナイが高名な人物とかなら通用するかも知れないが‥」


「‥‥」


 ――戦犯じゃ無理だってか?

 んじゃ、どうすりゃいんだよ‥

 言う事聞かせるとか無理じゃねえかよ、何か他に方法でもあるのかよ‥



 俺は今、学校でも習わないような、この異世界でも直面した事の無いような、そんな面倒な事と対峙する事となったのであった。


 ――ああ、脳筋のように戦うだけでじゃ駄目かぁ、

 別に俺はコミュ障じゃ無いけど、これハードル高いなぁ、



 

 そして、7匹目を倒し終わった後に問題が発生した。


「なぁ、もっと魔石置こうぜ、」

「ちんたらやりすぎだろ、18人も居るんだぜ?」

「何をビビッてんだよ?これだけの戦力がいるのによぉ」

「ちゃんと放出系も使ってねえだろ?」

「だから俺達がさぁ――」



 再び、魔物を湧かすために置く魔石の数に不満が噴出をしていた。

 今回はレプソルさんは何も言わなかったが、他の冒険者達が訴えてきたのだ。


 待っている時間が惜しいとか、折角魔石で稼げるんだから、もっと稼ごう等であった。


 普通の冒険者が一日かかって稼ぐ魔石が金貨1枚分。だが、この魔石魔物狩りだと、一度の戦闘で金貨2~3枚稼げてしまうのだ。規模の小さいルリガミンの町では、魔石の相場が一気に崩れ価値が1/8まで下がった程である。


 

 稼げる時にしっかりと稼ぐ、それは冒険者としては当たり前の事であり、やらなければ食べていけなく事なのだろうが。今回の俺の目的とは方向性が違った。


 少し偉そうな言い方だが、俺は今だけでなく、先を見ている。

 刹那的な考え方をしている冒険者とは、視点が違い過ぎたのだ。


 ふと、レプソルさんに言われた事を思い出す。

 『やりたい事は解る‥けど、やり方が拙いね』と、俺の仲間はラティとサリオ、この2人は俺の奴隷なので、俺に従ってくれていた。ミズチさんとスペシオールさん、この2人も問題ない。アムさんからの紹介なので、俺に合わせるようにと言われているのだろう。



 なら簡単だったのだ。

 俺に合う相手、やりたい事を解ってくれる相手とだけパーティを組めば良いのだと。それは酷く独善的な考え方だ。いつかきっと後悔する日や、咎められる日が来るかも知れない。


 だが、それ以外に方法が無いのだ。

 もしかすると、物語の主人公のようにズッバっとした解決方があるのかも知れない。世の中には数多くの解決法が溢れているのかも知れない、だが、その解決法を使えない者もいる。だから‥


 ――無理なモノは無理だな、

 テストで難しい問題があったらそれはほっといて解ける問題を解けばいい、

 きっとそれでは100点が取れないが、少なくとも点は取れる、



「文句があるなら、出て行けばイイ、」


「――っんあ!」

『戦犯野郎が‥、言うじゃねぇかよ、」

「おいおい、俺達は参加してやってんだぜ?レベルだって一番高い方だぜ?」

「全くだ、その俺達が抜けたら困るのはそっちだろ」

「お前なんてただ、瞬迅と焔斧の主ってだけじゃねえかよ、」

「ちょっと魔石魔物倒せるからって調子乗ってんのか!」

「そうだそうだ!槍なんて使いやがって、剣を使えよ剣を!」



 俺と冒険者のやりとりにサリオはビクッとし、ミズチさんとスペシオールさんは静観して、レプソルさんはもっと距離を取った位置で全体を眺めるようにしており、そしてラティは‥。


「申し訳ありませんが、ご主人様が、ああ申しておりますので、ご不満の方は速やかにお引取り下さい」



 ラティは俺の横に立ち、冒険者達にそう言い放ったのだ。

 先程まで、いきり立っていた冒険者達は、冷や水を浴びせられたように鎮る。

 

 よく見ると、ラティは静かに殺気までも放っていたのだ。

 もしかすると、彼女は冒険者達の言葉に腹を立てていたのかも知れなかった。


( 確かめるすべは無いけどな、いや訊いてみるか、)


 ラティの気迫に押されていた冒険者達であったが、その内の1人が息を吹き返したように、再び怒りを露わにしだす。


「なんだよ!おかしい事に文句言って何がワリィんだよ!簡単に倒せて、それで稼げるチャンスなのにそれに文句言って何がいけねぇんだよ!」


 まるで自分1人で魔石魔物を倒せるかのような言い草である。


 この咆えている男の名はアクセル。

 実力で言えば、芋虫型の魔石魔物でも1人では倒せない程度の力量だ。はっきり言って、おんぶに抱っこ状態のこの男が吐いてよい言葉では無い。

 

 だが、再び一触即発の空気がその場を漂う。

 そして、まさにソレを感じ取ったかのように、あるモノが弾けた。


「後ろからぁぁ!?」

「わあああああああ!」

「って2体!?」

「は、はやく倒すぞぉ」  

「ま、不味いっ!」


 突然の魔石魔物の出現に混乱し慌てふためく冒険者達。

 ラティは一瞬で反応し武器を構える。だが、サリオ達は反応が遅れて身構えるのが遅い。


 そしてその隙を突いて、二匹の狼型の魔石魔物が蹂躙するとか思った瞬間――


「土系拘束魔法”シバリ”!」

「は!?」


 

 互いの言い争いにより、魔石の事を失念し、それで奇襲を掛けられる形となっていたが。1人だけ、それを予測をしていたかのように動く人物が居たのだ。


「レプソルさん、」

「早く!オレの束縛じゃさすがに長くは持たないぞ」


 

 地面より伸びた蔦のようなモノが2体の狼の脚を縛り、動きを止めさせる。


 ――助かった!さすがレプソルさん

 だが、湧く位置がおかしい、



 そう、魔石魔物のが湧く変だったのだ。

 魔石を置いたのは壁際で囲み易い位置なのだ、だが、今の魔物は冒険者の背後。魔石を置いた位置ではないのだ。


「っわ!?このタイミングで湧いちまったのかよぉ!」

「アホ!何も言うな!」



 俺は急いで置いた魔石を確認する。

 そして、二つ並んで魔石はまだあった。


「置いた魔石からじゃない‥」


 ――まさか、

 アイツ等が隠れて勝手に置いたんじゃ、!?



 それを確信させるかの様に、追加で2体の魔石魔物が湧いたのだ。

 しかも1体は‥


「ワーウルフ?」



 湧いた1体は明らかに上位魔石魔物であった。

 それは身の丈3㍍はある、人の形を象った巨体の狼男であったのだ。


 ――ちきしょう、最悪だ、

 

読んで頂きありがとう御座います


宜しければ、感想など頂けましたら、幸いです。

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