北が
お待たせしました、
過去の話を書き直したり、うっかり消したりで手直しに時間かかりましたです
俺は現在、ラティの頭を撫でている。
理由は、心がやさぐれて、それを癒す為である。
反省会の時に、その対象となったのが俺である。
俺は冒険者にハッパをかけ、そして地下迷宮通路で押しとどめろと叫んだのだ。
はっぱをかけた事に問題はなかったのだが、通路での戦闘指示は拙かった。これは完全に悪手であり、戦闘が非常に芳しくない状況へと陥ったのだ。
その後は赤帽子の男が、地下迷宮からの撤退の指示と援護を行い、それで盛り返すことに成功し、魔石魔物を倒す道筋が出来たのだ。
そして勇者の援軍で魔石魔物を殲滅は出来たが、俺は戦闘終了後に最初の指示の件で、今回の戦犯野郎として罵られる事になってしまったのだ。
確かに、戦闘の時はあまりの人の多さに身動きが取れず、目立った活躍をすることもなく、ただの駄目な指示を出した奴と言われても仕方ない状況ではあったが‥
やはり納得がいかない所があり、どうしてもやさぐれてしまったのだ。
しかも最後のラティ突貫作戦は、勇者が出した指示となっていたのだ。
だが、それを俺が出した指示ですなどと言うのも情けなく、そのままである。
因みにラティとサリオの評価は爆上がりである。
――ラティも目立つけど、
サリオの魔法も超目立つからな、炎がぼわ~っと、
俺は、黒い姿で目立たないと‥
そして重要なのが、ガレオスさんからの北領地の情報も驚きの話しであった。
その内容は。
北ボレアスでは今、フユイシ伯爵家がボレアス公爵家を乗っ取った事により、法律などが一部変わったり、他の貴族に対しても強硬な態度になっているそうだ。
まず法律では、魔石の買取が北ではボレアス家の特権になったと。
他は貴族など他の町はボレアス家から魔石を売って貰う形になったそうだ。
魔石が石油みたいな物と言う認識の俺には、それはとんでもない事のように感じた。反発があるだろうと思っていたが、それは力で黙らせているらしい。
普通は中央の王族などが権力などで介入して来るものだと思っていたが、中央の王族にはそこまでの力がなく、北ボレアスはやりたい放題であると。
しかも、勇者の2人がボレアスの雇われている状態で、”正義はボレアスにあり”と言った形にもなってしまっているそうだ。
勇者の柊 雪子は北から抜けて何処かに行ってしまったらしいので、北にいる勇者は、荒木と早乙女の2人だそうだ。
北防衛戦に向かっていた伊吹も、かなり強引にボレアスに誘われていたらしいが、あまりにもその態度が不穏だった為に、逃げる様にして北からルリガミンの町に向かったらしい。
他にも細かい事が色々とあるらしいが、ガレオスさんからは、『今の北には近づくな』だそうだ。
当然、暗殺されるかも知れない場所に近寄る選択死は無い
それと北の支配下に入ったルリガミンの町も、今は危険だと。
前は、ルリガミンの町に入るのに、通行税やチェックなどは無かったが、今はそのどちらもあり、魔石を売却する場所も決められ、その場所でしか売れなくなってしまったらしい。
他の場所で魔石を売ると処罰対処となったのだと。それにより嫌気の差した冒険者達がかなり多く、ルリガミンの町を離れる者が増え、熟練の冒険者ほど町を出て行ってしまったらしい。
ガレオスさん曰く、あの町はそろそろ何かしらが破綻するだろうと。
それ位に北は不味い事になっていると言うのだ。
俺はこの話しを聞いて、廃坑で出会った9代目勇者のパーティであった、イリスさんの言っていた事を思い出していた、『勇者同士の争いもありました。貴族同士も』この言葉を。
――もしかすると、今回は‥
貴族同士の争いに勇者が巻き込まれるのか?
どちらにしろ、面倒だよな、
俺はこの話をラティとサリオに伝えてた。
それを聞いたサリオは。
「ほへ~これは北には行けないですね~です」
とてもシンプルな感想が返ってきた。そしてラティは。
「あの、そろそろ頭を撫でるのを‥」
現在ラティは完全完璧頭撫で状態であるのだが、今回はサリオに見られているので、羞恥心の為か、膝に顔を埋めるようにして顔を隠していた。因みに、首筋まで朱に染まっているのでかなり本気で恥ずかしいのであろう。
当然、それはそれで良いので撫でるのは止めない。
反省会《吊るし上げ》により、ささくれていた心が癒されていく。
癒された心により、ある事を思い出す。それは――
俺に向けられた暗殺者の事。
この話がガレオスさんからは出ていなかったのだ。
探るつもりは無いが、ガレオスさんからはその話しが出て来なかったのだ。
――これは、北は躍起になってまでは俺を追っていない?
正直手配書とか出てるかと思ったけど、逆に隠れて俺を狙ってるのか?
動きが読めない、暗殺を知っていたら俺に言うはずだよな、
俺が現在、懸念している事。
また暗殺者でも送り込まれないかという事である。
ラティがいる限りは寝込みを襲われる心配はないだろうが、それとは別で、やはり気になる事ではある。
「ラティ、暗殺者とか来たら察知出来るよな?」
何となくだが、ラティに聞いてみた。が
「あの、それでしたら撫でるのを止めてください、その色々と乱れますので‥」
その日は仕方なく撫でるのを止めた。
そしてある程度の意見交換を行い、その日は床に就く事にしたのだった。
次の日。
俺はアムさんから呼ばれる事になった。
どうやら昨日起きた魔石魔物暴走の件での事らしい。現場での詳細を知りたいとアムさんに呼ばれたのだ。
そして昨日の事を聞かれた俺は、把握している範囲の事をアムさんに報告する。
聞いていたアムさんは眉間にしわを寄せ、いかにも面倒なのが増えたといった表情をしながら俺に尋ねてきた。
「今回の魔石魔物の問題点は何だと思う?」
「それは、――」
俺は自分が分る限りの範囲ではあるが、アムさんにそれを説明する。
まず、単純に冒険者のレベルの低さ。
このノトスの地下迷宮に湧く魔石魔物に対しての戦い方。
そして、魔石魔物を安全に狩れる場所が無い事。
広い通路しかない場所なので、今回のように大群が押し寄せる事になったのだ。
中央みたいな入り口が狭くて部屋が広い場所といった所が無いのだ。これは今回の最大の原因だとも思う。
――まぁ、一番の原因は、
狩る実力が無い連中が魔石魔物湧かした事なんだけどね、
こればっかりは言っても詮無い事だ、
「むむ、やっぱりそうか、」
「ある程度は把握してたんですね?」
この程度の事は、アムさんも考えていた様子であった。
だが、何故俺にそれを聞いて来たのかと思っていると‥
「よし、決めた!じんない君、任せたね」
「へ?」
ららんさんといい、アムさんといい、ノトス気質なのか。
相談した相手に、まる投げに近いことをするらしい。そしてアムさんの眉間のしわは綺麗に無くなっていた。
期間限定であるが、俺に魔石魔物狩り全権を与えるとアムさんは言い出してきたのだ。
一瞬、断りたいと思ったが。俺の目的である、自身のレベル上げには都合が良かったのだ。
北に行けなくなっている状態では、北の防衛戦に湧く、経験値の塊のような巨人などを狩る機会が無いのだ。
あの巨人を狩れないとなると、どうしても地下迷宮で魔物から経験値を稼ぐ必要が出てくるが、レベル80を超えると、経験値を獲られる魔物は奥深くの魔物か、上位魔石魔物だけであり。その上位魔石魔物は強敵なので、3人で狩り続けるのは危険があるのだ。
だからと言って、奥深い下層にいる魔物を狩りに行くもの、荷物や休憩などの確保も3人では無理、勇者のように【宝箱】があれば荷物の運搬は楽かも知れないが、俺は持っておらず。
それなので、俺はこのアムさんの提案に乗る事にした。
上手く魔石魔物狩りを出来るメンツを20人近く確保する事が出来れば、俺達はレベルの高みを目指す事が出来、尚且つ、強い味方も出来るかも知れないのだ。
苦労も大きいが、その分、俺には今までに無かったメリットが生まれるのだ。
勇者達のように、俺にも陣内組が出来るかも知れないと。
これはハズレ勇者である俺が、早々に諦めてしまっていた事だ。
こうして俺は、ノトスの街でなかなかの仕事を持つ事になったのであった。
因みに、『俺でいいのか?』と尋ねると。
『ラティちゃんにさえちょっかい出さなければ、君は安全だからね』と言われた。
どうやら他の冒険者達だと、色々と派閥を作ったり、己の利益を優先させたりなど、下らない問題があるそうだ。その点、俺はシンプルであり、楽だと。
その後、三日間の地下迷宮の立ち入りは禁止となり。その三日間の間にアムさんがフル稼働で地下迷宮に関する決まりを決め。
三日後に、地下迷宮での新しいルールの発表と、魔石魔物管理の責任者として俺がブーイングの中で紹介されるのであった。
ブーイングの理由は。
前回の戦犯がそんな大役に付くのはおかしいと、言う理由であった。
――もうそれ許してくれよ、
ちくしょう、俺結構頑張ったんだけどな‥
こうしてまた俺の新しい魔石魔物狩り始まったのである。
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