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方針

 サリオと二人で見張り役を続けていると夜が明けた。


 サリオには何があったのか一応伝えて於いた。

 サリオもラティの表情から、ただ事では無いのだろうと思っており、俺の話を聞いてサリオは何処か痛そうな表情で納得していた。



 それから日が昇り、村人達も姿を見せ始める頃にラティが戻って来た。


「あの、ご主人様。見張り役が交代の時間になりましたら、少しお時間を宜しいでしょうか?事の顛末をお伝えしたいので」

「ああ、わかった。交代の時間になったらお前達の泊まっている小屋に行こう」

 

「はい、ありがとうございます」



 それから10分もしないウチに、橘達が姿を見せたので俺達は見張り役を交代し、ラティ達が泊まっている小屋に向かった。


 

 小屋の中は現在俺とラティとサリオの3人だけ。

 中に入ってからラティが一度周囲を【索敵】し、近くに誰もいないことを確認してから口を開いた。 


「あの、ご主人様、お耳汚しを失礼します」



 ラティは俺に一言断りをいれてから事の顛末を語りだす。



 その内容は。

 まず、彼女レイヤの純潔は守れたと教えてくれた。

 これには正直ほっとした。


 だた、今回の件は、村の知るところになってしまったと。

 どうやら、あの大声で村人も後から駆け付け、それで知られたらしい。


 これはレイヤ自身の証言ですが、と 前置きを入れ話し出す。

 それは、ジムツーから脅しがあったのだと。

 彼は南の大貴族ナツイシ伯爵の五男であり、『逆らうと、この村がどうなるか?』と、そう言って彼女を脅したらしい、その為に彼女は助けを呼ぶことも、叫ぶことも出来ず我慢していたのだと言うのだ。


 この話を聞いて俺は、あの時のレイヤの表情の理由が解った。

 諦めや絶望といった表情ではなく、声も上げず我慢し耐えている顔つきだった理由が。



 今の話は、あの場で介抱していたラティにレイアが打ち明けたそうだ。

 実際にあの場では、ラティが一番彼女を思いやった行動をしていたのだから、それに、この時間まで付き添っていたらしい。



 そして最後に、なんと今回の事は、村側は良しとしているそうだ。

 素行には多少荒いところがあるが、伯爵家の息子が来る可能性があれば、この村に取ってプラスになるだろうと。セコい男爵家とは違うだろうと言うのだ。



 俺は酔っ払いの男から、それらしい事は聞いていたが。

 此処まで本気だとは思っていなかった。どこか心の中で『まさかなぁ』と言う思いがあった。

 俺が宴の時の話を思い出していると――



「あの、ご主人様」

「うん?」


「ヨーイチ様がわたしを叱咤し。そして動いてくれたお陰で彼女、レイヤさんの操を護ることが出来ました。本当にありがとう御座います」


 

 ラティは俺を真っ直ぐ捉え、そして姿勢正しく凛としたお辞儀を俺にしてくる。

 俺はあの時、レイヤを助けたいが為に動いた訳ではない。


 もっと個人的な‥



「ラティ、俺はあの時お前・・のあの顔が見たくないから動いただけだ、決してラティに礼を言われるような事じゃないんだ‥」



 ラティの感謝に後ろめたさに、俺は自分の気持ちを吐露した。

 だがラティは、『それでもです』っと、ゆずりはしなかった。


「あの、それとレイヤさんは暫くは家にこもるそうです」

「仕方ないか、平気で外に出れるほうがおかしいよな」

「あうぅ、可哀想なのです」



 

 昼間の時間は俺達の睡眠時間なので、そのまま小屋で床に就くことした。

 あんな事件があったばかりの為か、今はこの二人から離れたくない気持ちが強く、久々に3人同じ小屋で寝ることにした。 

 

 




             ◇   ◇   ◇   ◇   ◇






 

 その日の昼は運が良い事に魔物の襲撃は無かった。

 今は、ジムツーと顔を合わせたくないので、戦闘がなく助かったのだ。



 だが、


「陣内、ホントはアンタも参加してたんじゃないんでしょうね?」

「‥‥‥」



 見張り役の入れ替えの時に、バッタリと橘に会ってしまったのだ。

 もしかすると、俺を待っていたのかも知れないが。


 いきなり俺を問い詰めて来たが、どうせ俺の話は聞かないだろうと思い、そのまま無言で無視をしてそのまま通り過ぎた。


 無視した俺に噛み付いてまではこず、橘もそのまま立ち去っていった。


 

 ――橘は昨日の件を聞いたのか、

 誰が橘に言ったんだ?村の住人か?

 つか、それよりもジムツーはどれだけ罵倒されたんだろ‥



 俺はそんな事を考えていた。

 俺にアレだけ罵倒してくるのだから、事案発生したてのジムツーはどうなったのだろうと。

 うっかり勇者権限とかで埋められてないだろうか?と考えていた。


 奴は未遂とは言え、女性を敵に回す行為をしたのだから‥


 ――そういや未遂とは言え、全部脱がしてたよな、

 ってことは、ちょっと揉んだり位はしたんじゃ?いや!もん‥‥



「あの、ラティさん何か?何故俺と見つめてるんです?」

「いえ、ちょっといささか不謹慎ではと思っていただけです、お気になさらず」


「サリオ、俺、独り言でも言ってた?」

「あい?ジンナイ様は何も話してなかったですよ?どうしたんです?」



 やっぱ一度ラティの【索敵】は検証した方が良いのでは?と 俺は思った。

 ちょっと高性能すぎる!




   

             閑話休題(また怒られた)






 そして俺達が見張りをしている夜に魔物の接近があった。

 数は今回は多め20前後。


 多いと言っても前と比較した話、普通に雑魚魔物20匹なら問題無いが、呼ばなくてならないので、寝ているであろう橘とジムツーパーティを呼び出す。


 俺が一人でこのまま待機。ラティが橘をサリオがジムツーを、それぞれ呼びに行って貰った。そしてすぐに集合して迎え撃つ準備を開始する。


 まずはサリオが生活魔法”アカリ”を光源強化で複数作りだし、そして歩く程度の速度で迫って来ている魔物の位置をラティが示す。しかし此処で問題が発生したのだ。


「おい!この方角だな?あ!見えて来た」

「お前何を‥‥?」


「行くぞお前達!打って出る!」

「――っな!?何を言ってるんだ」



 ジムツーは魔物が来るのを待つのではなく、打って出る方法を選択したのだ。

 それはよくある作戦の一つだが、守る場所があり、夜で視界も悪く、攻める必要のないこの状況ではハッキリいって悪手なのだ。だが――


「煩い!このまま待っていても、すべて手柄は取られるだけなのだ、だから!」



 俺が止める間もなくジムツー達は柵を越えて駆けて行ったのだ。

 一瞬ジムツーを止める手段として、”アカリ”を解除して頭を冷やしてやろうかと考えたが、今の奴の心境だと、暗闇だろうと闇雲の突っ込みそうなので取りやめた。



 あの魔物の数程度ではさすがにやられないだろうと思っていると。


「ふん!強姦二号が意気がって!全部ワタシが倒してやるわ、」

「馬鹿!何をムキになって!?」


「ええ、行きましょう橘様!あのような者に武勲など必要ありません」

「はぁ?止めろよ!」



 今度はジムツーに釣られ、橘パーティまで駆け出したのだ。

 ジムツーパーティは前衛2の後衛1で橘パーティは前衛1の後衛1に遠隔の橘。

 どちらも回復役をしっかりと居るので問題はないと思っていたのだが。


「あいつら、【索敵】持ちいるのか?この暗闇で突っ込んで行ったが‥」



 俺がそんな事を呟いているうちに、光源が届く100㍍よりも先に消えていった。

 そしてそれから3~4分後、ラティが反応した。


「ご主人様!魔石魔物クラス5匹来ます!」

「なんで!?ってかアイツ等何やってんだよ」


「速度かなり速いです来ます」



 ラティの声と同時に姿を現す魔物。

 サリオの”アカリ”がギリギリ照らす位置で5匹の魔物は一度停止した。

 

 その魔物は4㍍程の巨大な狼型の魔物。

 そう、初めての防衛戦の時に、最後に姿を見せた魔石魔物だったのだ。

 黒い靄のようなモノを纏っており、暗闇ではまず見えない。魔物ならではの迷彩と言ったところだったのだ。


「く、だからあいつ等見落としたのか‥」



 俺は橘達がこの魔物を見落とした理由を理解した。

 厄介な、と俺が心の中で感想を呟いている――


「ご主人様!中央の一体は上位魔石魔物です!レベル78強敵です」

「ぎゃぼう!78なんて地下迷宮ダンジョンでもそうそういないですよです」


 現在ラティはレベルが79でサリオが83なのだ。

 他の魔石魔物は50程度だ、それを考えるとかなりの強敵だった。

 もし、ジムツー達が遭遇していたら、1分もかからずに全滅していた可能性もある、橘パーティでもかなり厳しいだろうと予想出来た。



 冒険者でもまず、やられる強さ。この魔物がもし、村に入ったら‥


「サリオ!もっと光源を増やせ!それと魔物の手前に派手な音がなる魔法を当てろ、その音を聞いてあいつ等が戻ってくるかも知れない」

「はいいい、了解したですー」


 

 あの5匹を同時に相手にするには俺達でも厳しい。

 それなら全員で当たるのが一番と思いサリオに指示を出し、次に――


「ラティ、無茶を言う!親玉も含めて3匹を相手にして欲しい、無理に攻撃はしなくてイイから回避に徹底して戦ってくれ」

「はい、回避だけでしたら十分いけます、サリオさんアレをお願いします」


「あいあいです」



 ラティがサリオにお願いしたのは、事前に決めておいた一つの策。


「土系魔法”テントツ”!」



 サリオの魔法で地面から、高さ5㍍横幅1㍍ほどの円錐の岩で出来た棘が3本生える。 


「サリオさん、ありがとう御座います、これで足場がいけます」

「らくしょーです」



 ラティは攻撃を避けやすいように足場をサリオに作って作って貰ったのだ。


「よし、次ぎはサリオ俺がお前を守るように立ち回るから魔法で魔物を仕留めろ」

「あう、あの動きが速そうなのは苦手です」


「外しても構わない、連打してでも当てろ!」

「ぎゃぼー無茶言うですよです、でもやるしかないです」



 こうして俺達も戦いを開始した。

 ラティが先行して、魔物を引き付けるように動いた。


 岩で出来た棘は、魔石魔物の攻撃にも耐え崩れる事はなくラティの動きを助け、時には足場として上手く機能していた。



 俺はサリオを守るように前に立ち、巨大な狼と正面から対峙した。

 イワオトコのような豪腕ではないので、槍で十分に抑えることが出来た。


 そうして戦闘が開始された。



「火系魔法”炎の斧”!」


 3発は避けられていたが、動きに慣れてきたのか4発目で炎の斧が食い込む。

 

「やったです」

「次急げ!」



 サリオの炎の斧なら、当たりさえすれば一撃で倒せる威力があり、一匹目を黒い霧に変え、次の二匹目を狙っていった。


 戦いながら横目でラティを見ると、其処には、黒い狼と亜麻色の狼が戯れているように激しく動き回っていた。


 攻撃は気を引く程度に抑え、回避に徹するラティを、岩の棘を邪魔そうにしながら巨大な狼が追っていたのだ。すぐにやられるとは思わないが、長引くのは危険であり。


 ――ラティ、頑張れすぐ行くから、、

 これは‥ 俺も無茶をする必要があるか、



 サリオの魔法で出来た炎の斧を横に避ける魔石魔物の狼。

 俺はその瞬間に、地面に着弾した炎の斧に飛び込み、そしてそれを突き破るようにして巨大な狼に接近、そして狼が斧を避ける時に晒した横腹に槍を突き立てた。


「 ――ッ!!」


 槍を横腹に突き立てられた狼は怯む様に動きを止め、其処に――


「もらったーです!」


「――ッゴウゥゥ!!――」


 青白く燃える炎の斧が狼を真っ二つにカチ割った。

 魔物は次に瞬間には黒い霧となって霧散。



 だが、それと同時に横では、サリオが作り出した岩の棘が砕かれる音が響く。

 砕いたのは上位魔石魔物の狼。


 さすがのラティも足場兼障害物を失うとキツく、動きに余裕が無くなっていった。


「ラティ!今いくぞ!サリオも援護!」

「はいぃぃです!」



 戦闘が始まってから約3分が経過した。

 まずは普通の魔石魔物を先に倒したいが、上位の方が邪魔をしてくる様に動いて来るので、上位魔石魔物から先に狙う事にする。


 

 3対3の状況だが、ラティが3匹を引き連れて動く流れになっており、ラティに迫ろうとする上位魔石魔物を俺達が横槍を入れる形になっていた。



 激しく動き回る巨大な狼。

 正直これを避けきっているラティは並外れた回避能力であった。

 だが、さすがにこの状況で3分も動き回り続けるのは、体力をかなり持っていかれるのでラティもキツそうになって来ていた。


 俺はその状況を打開する為に。


「ラティ!上位は俺が相手にする、他の2匹を頼む!」

「はい、お任せします!」



 槍を刺すのではなく、横に大きく薙ぐ。

 さすがにこの攻撃では有効打にはならないが、ただ、当てる事は出来るのだ。

 上位魔石魔物は他の固体よりも一回り大きく、そして動きも素早いがなんとか槍を当てられ。


「かかって来いやぁ」


 更に声も張り上げ、その上位魔石魔物を引き付ける。


 俺が避けるとサリオが危険になる可能性があるので、今度も正面からのぶつかり合い。

 

 噛み付こうとしてくる顔は槍で突き立て、引っ掻いてくる前足は槍で弾く。

 体格差が激しいのですべて弾くのは無理があり、何回か転がされそうにもなったりした。

 だが、槍を持っている俺に警戒しているのか、狼も無理に追撃はしてこない。



 しかし、ついに俺の槍が、体格差を生かした横に薙ぐような前足に弾き飛ばされたのだ。


「ああ、ジンナイ様!」



 サリオが咄嗟に声を上げるが、俺は――


「サリオォォォ!魔法用意しろぉ!」



 槍を弾かれた俺に好機とばかりに、上位魔石魔物が顔を横に傾けその顎で俺を喰らおうとする。 が――


「ファランクス!」 


 目の前に一瞬にして展開する魔法陣の結界。


 俺はこの瞬間の為に、小手を一度も使わずに温存して於いたのだ。

 当然それを知らない上位は結界に阻まれ、動きが止まり――


「炎の斧!」


「 ――ッゴウゥゥ!!―― 」   


 深々と、狼の首筋に炎の斧が食い込む。

 さすがは上位魔石魔物なだけはあり、一撃では倒せないが。


「ッシャァァァァア!」


 俺は雄叫びを上げながら、木刀を奴の右目に突き刺し、そのまま更に押し込む。

 完璧な手ごたえ、そしてその手ごたえが正しかった事を示す、黒い霧。



 俺は疲労が激しかったが、もっときついであろうラティを見る。すると

 

「サリオさん逃げてください!」

「ぎゃぼーー」



 上位がいなくなった事で、統制が取れなくなったのか、一匹の魔石魔物がサリオに突進し始めたのだ。


「サリオ!ローブの結界!」

「あわわわ、それがありましたです、えい!」



 ローブの結界に阻まれる巨大な狼、だが、次には。


「待て!そっち行くな!?」

「あわわわ、です」



 今度は村に向かって魔物が駆け出したのだ。

 

「まずい、サリオ魔法で仕留めろ!」



 ラティはもう一匹を相手にしており動けず、俺も距離がある。なら魔法しかないが。

 

「あううう、駄目ですMP切れです、斧を出せるほどは、」



 それは当然であった。

 強力な”アカリ”を複数作り、しかも今回は炎の斧を連発し、最後にローブの結界を使用したのだ。

 MP枯渇も仕方ない。だが俺は――


「サリオ!加速の魔法俺に使えー!」


 俺は槍を拾い、狼を追って村に走りながらサリオに叫んだ。


「でも、でもあの魔法は、」

「いいから!俺につかえぇぇえ!」


 

 走りながら俺はサリオに怒鳴り返し、そして魔法を受ける為に一度止まる。


「はいぃぃ!風系支援魔法”ヘイストゥ”!」 



 止まっている俺にピンク色の風が纏いつく。そして――

 全力で【固有能力】の【加速】も使いながら駆けた。




 魔石魔物の狼は木の柵を簡単に押したし、村に侵入していた。

 遅い時間にも係わらず、村人は戦闘を見学しようと集まっていたが、迫り来る巨大な狼に怯え蜘蛛の子を散らすように逃げ始める。


 逃げ惑う村人を襲うと思ったが、その狼は近くの民家に体当たりを始めたのだ。

 村人は皆、見学していたのだから、当然家から出てると思っていたが。


「きゃあああああ!」

「――んな!なんで」

 

 崩された民家から、赤髪の女が転がり出て来たのだ。

 そう、彼女は今、家に引きこもっていたのだ、村人が皆いる時に出てくるはずも無く、家に居続けていたのだ。


 走る俺の目の前で、今まさに上から食い付かんとばかりに口を広げる狼。

 俺はその狼に――


 黒い一筋の鏃となりて、狼の脇下から首に向けて体ごと突き刺さった。

 勢いのあまりに、顔もぶち当たる。


 そして顔の横に当たっていた獣の毛の感触がふっと消え、黒い霧となった。


「っがぁぁぁぁ!」

「ひぃ!」



 俺はその場で口から吐き出すように声があげた。

 魔法の【加速】と【固有能力】の【加速】を同時使用の代償。

 今回は脚だけではなく、腕まで激痛が走る。


 崩れ落ちそうになるのを必死に耐える。

 まだ終わっていないのだ、ラティが相手にしている魔石魔物も居るし。

 横には――


 いつの間に、侵入したのか普通の狼型の魔物が一匹いたのだ。

 その魔物は、迷わずに俺ではなく、赤髪レイヤを狙った。

 魔石魔物を倒した俺を狙うはずも無く、レイヤに飛び掛る狼型の魔物。



 俺は自己犠牲精神など真っ平御免だが。 

 守れるモノは守りたい。もしかしたら昨日の晩に襲われた彼女を北原に襲われたラティと重ねたのか、俺はレイヤを庇う為に、腕を突き出していたのだ。



 忍胴衣に貼り付けてある鉄板が辛うじて牙を防いでくれたが、俺はそのまま仰向けに押し倒されてしまったのだ。


 普段なら膂力で押し返せるが、今は加速の代償を支払った後で、力を出せず。


「ぐうぅぅぅ」

「――!!」



 腕と肩は噛み千切れないと判断した魔物は、押し倒した俺の首筋を狙ってきた。俺は動かない腕をなんとか使い肘で防ぐ。


 その隣では、恐怖に腰を抜かしているレイヤ。

 俺はいよいよ力負けし、首に牙が迫る画――



「――シュバ!――」


 白い光の閃光が魔物を肛門から貫いたのだ。

 その光の筋の放たれた場所には、勇者橘が立っていたのだ。

 

 村が危険だった時にどっかに行ってた勇者橘は俺を見て。


「アンタ、雑魚の魔物一匹に何やってんよ」


 心底不思議そうにして、俺にそう訊ねてきたのだ。


( こいつ、マジ使えねぇ‥) 


 すぐ後ろにはラティが困りきった顔で立ち竦んでいた。

 

読んで頂きありがとうございますー

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[良い点] 主人公が相互理解の努力を放棄する、子供としての態度が良く書けていてとてもいい。 [一言] 相手が思い込みで難癖をつけたり罵倒したりを繰り返しているとしても、機会があるごとに俺はやっていない…
[気になる点] てにをはの間違いが酷すぎます。 文章全体は上手いのに一話で何回も間違いがあると、流石にちょっと…。 [一言] 話しはとても好きです。面白いです。
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