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村の話

スイマセン胸くそ悪い話です 注意です

 目が覚めると俺はラティの膝枕で寝ていた。


 霞がかった頭がハッキリとしてくると次第に寝る直前の事を思い出す。

 俺は激しい睡魔に襲われていたとはいえ、見せ付ける様に寝てしまってのだ。

 寝不足で思考が低下していたせいだろう。


「ラティ膝枕ありがとう、脚は平気か?」

「あの、途中で脚をズラしたりして、休めたりはしていましたので」



 彼女なりに膝枕を解いたりして休めるなどはしていた様子だ。それと横を見ると、暖房のように熱を発する炎が浮いている。


「ラティ、この炎ってアレ?」

「はい、生活魔法”ヒータ”です」


 

 俺が寝ている間に冷えないように、他にも色々としてくれたようだった。

 ラティの気遣いに感謝しつつ、俺はジムツーを探すと。


「やっと起きやがったか、私に見せ付けるように寝おって」

「そのつもりはなかったんだがな、」


 ――ちょっと優越感を感じるけど、

 コレは良く無いな、これは碌な事にならないよな、注意しないと、


 

 俺は心の中で自分を戒めた。

 こんな風な優越感は、この異世界ではトラブルの元になると。



 俺は少し気マズさを感じながら、ラティを連れてこの場を後にした。

 日が昇れば、明るくなり視界もよくなるので、張り付いて見張りをしなくても良くなるからだ。


 それに村人も外に出てくるので、村人も見張り役代わりにもなる。

 村人は、外への畑仕事は中止しているが、村の中で出来る仕事を行っている様子だった。



 そして俺はそれを横目に見ながら、勇者橘の豪邸に向かった。

 村の広場に【宝箱】から出された豪邸の前で、俺はラティと一緒に橘が出て来るのを待つ。


 さすがに、このままでは橘パーティだけ夜の見張り無しは不公平なので、昼は橘とジムツーのパーティにお願いして、俺達パーティが夜を見張るローテーションを提案する事にしたのだ。


 これなら、睡眠不足に悩まされる事もなく、体調を維持して防衛戦に望めると判断したからだ。

 当然、俺がそれを伝えに行くと、脊髄反射で反対されそうなので、その説明はラティに任せる事にして、その説明をいまラティにしている。


「あの、ご主人様、それですと昼間にわたし達が寝るのですねぇ?」

「そうなるな、日が出てるから寝づらいだろうけど、仕方ないかな」



 ラティに説明を終えて、暫く待つと橘パーティが姿を現す。


「ラティ任せた、俺がいると拗れるからあっち行っとくな」

「はい、お任せくださいご主人様」



 俺はラティに任せ、その場から逃げるようにして離れた。

 俺が視界に入っているだけで文句を言われそうだからである。そしてそのままサリオと合流する為に、彼女が寝ている小屋に向かった。



 そして暫くするとラティが了承を得て来たと報告にやってきた。

 ジムツーパーティには事後報告になってしまうが、勇者橘パーティの了承を得たと言えば、首を縦に振るしかないだいだろうと俺は予測をつけた。 

 


 その後、昼間は橘とジムツーパーティが見張り、夜は俺達。

 魔物が出たら、その数や規模に関係なく起きて防衛戦に参加で話が付いた。

 そして現在。


「ジンナイ様、起されたのに暇ですね~です」

「ああ、なんかこの村には魔物あまり来ないな、」

「あの、あまり油断は宜しくないかと、」



 昼の時間帯に狼型の魔物がやってきたが、その数は少なく、この村に近寄る前に橘の弓WSウエポンスキルで次々と倒されていったのだ。そして俺達に出番はなく。


「あぅ~ジンナイ様、帰って寝にいっちゃ駄目ですなんです?」

「いや、お前は昨日の夜しっかり寝てるよな?」



 出番の無い俺達は、暇なことを愚痴っていたが。隣では‥


「おい、私達に出番が回って来ないじゃないか!これでは武勲が得られない」

「ジムツー様、、」



 領主代行のアムさんから直接依頼を受けている俺達と違って、ジムツー達は魔物を屠った数などで報酬が変わる為か、橘だけの活躍を焦るように見つめていた。

 しかも不謹慎な事に、『村がつぶれる位の魔物来いよ』っと呟いてまでいた。



 『貴族なのにそんなに金が必要なのか?』と疑問を感じる程の焦りようだった。

 そして結局、橘一人だけで魔物を倒しきり、その戦闘は終わりを告げた。




 

           ◇   ◇   ◇   ◇   ◇






 それから五日が経過した。


 広範囲で、そしてバラついて来る魔物達は、全て橘一人に討伐されていた。

 纏まってくれば出番が回ってくる事もあっただろうが、今回は、一匹づつ近寄ってくるような形になっており、遠隔攻撃だけで済んでしまっていた。


 そのあまりの戦いの余裕さに、勇者の戦いを一目見ようと、村人達は避難などはしなくなり、見学をするようにまでなっていた。。


「サリオさんや、暇すぎだな」

「ジンナイ様や、もう帰って寝ても良いでしょうかです」

「あの、お二人もっと警戒を‥」


 若干だらけていた。

 夜の戦闘なら生活魔法で照明代わりに”アカリ”を使う出番があるが、昼の場合はサリオにはやることがなく、サリオは暇をしていた。俺は昼も夜も暇だが。



 だが、この流れは一つの問題が発生していた。

 俺達のサポートとして村が食事や寝床を用意してくれているのだが。

 橘パーティ以外は、ほぼ何もやっておらず。その姿は当然、村側の不満を買っていた。


「くっそ、私は、私は」

「ジムツー様、今回は仕方ないかと、」



 全く出番の回って来ないジムツーは日増しに焦りを見せていた。

 時折、ラティの方をギラついた目で見ることもあり、その都度俺が遮るように動いたりしていた。

 特に何か行動をした訳ではないが、焦りから苛立っているのも感じとれた。



 そしてとうとう戦闘が終わると。


「――ッ!!」


 物にアタリ、小屋の壁を蹴飛ばしていた。

 その姿には、最初は好意的であった村人達も怯えるようになり、そして避ける様に変わっていった。



 この村の隠れ目的のひとつ。

 この村に骨を埋める冒険者確保。


 それは、ジムツーがその対象から、疑問視される瞬間であった。


 その後、食事の用意などに露骨に村人の態度が出始めていた。


 


 その日の夜、深夜の時間にもう一度魔物の接近があった。

 ラティの索敵にひっかかり、すぐにサリオは大量の”アカリ”を用意し、俺がジムツーと橘達に知らせに走る。


 ラティの感知では数は多くなく、10体程度。

 きっと橘一人で終わる規模であった。

 

 自分達でも対処出来る数であった。だが

 抜け駆けでは無いが、後々絶対に揉めるし、予想以上に魔物が押し寄せていた時に危険なので、絶対に報告をするように決めていた。


 橘たちを呼んで現場に戻ると、サリオが魔力操作で目一杯に光源を強くした”アカリ”で、100㍍先まで照らしていた。


「相変わらす、この照明は凄いわね、」

「はい、この明るさは本当に凄いですね」



 サリオの”アカリ”に橘とパーティの男が感嘆の声を上げる。

 その褒められたサリオは、当然得意げに平らな胸を張っていた。


 そして俺の予想通りに、橘は”アカリ”の光源を頼りに、俺達と見学に来ていた村人達の前で、狼型の魔物を難なく倒してみせた。


「ふう、コレで終わりかしら?」

「はい、索敵だともう見えませんね魔物は」

「今回は狼型ばかりなのです」



 橘はラティの方を見ながら訊ね、それにラティが肯定する。

 しかし俺はこの時にある違和感を感じた。


 まだ魔物潜んでいると言うのではなく、奴が静か過ぎる事に違和感を感じた。

 普段なら寝ている所を起され、そして結局出番が無かったのだから、普段なら‥


 俺はそう思ってジムツーに目を向けると、奴は何処か視界が定まらず、まるで自分を落ち着かせる様に深呼吸を繰り返していたのだ。

 

 監視役の人もそれに気が付いたのか、無言でジムツーを見つめている。



 結局その姿には誰も声を掛けられず、そのまま、その場は解散となった。

 そして事件が起きた――




「ラティ!?どうしたんだ!」

「――っく!」

「ラティちゃん?どうしたです?」

 


 俺達はまだ夜なので、そのまま見張りを続けていたが。

 突然ラティが顔を歪めたのだ、その瞳は瞳孔がキュッと小さくなっていた。

 ラティが瞳孔が開くのは獲物などを目の前にした時、なら逆は‥。


「ラティどうしたんだ?魔物じゃないよな?」

「あの‥‥」



 ラティが判断しかねていた。

 あのラティが判断しかねるモノ、それが何か思い付かないが―― 

 

「ラティいいから言え!」



 俺はラティが嫌悪するモノだと直感したのだ。

 ラティが嫌悪するもの‥


誰かが・・襲われています‥」

「――ッその場所にすぐ案内しろ!早く」


 

 ――くそ!ラティに気付いてやれなかった! 

 北原の時は、思考が弾けとんでたから、表情を見てなかったが、

 ラティがこんな顔するなんて、それとコレは本当に【索敵】なのか?



 一瞬俺は、ラティの持つ【固有能力】である【索敵】に疑問を感じた。

 察知能力の幅が広く、説明を受けた【索敵】とはまるで別のモノのように感じたのだ。だが、今はそれよりも急ぐ事を優先し、思考を切り替えた。


「ご主人様!あの小屋です!」

「わかった!間違いだったら謝るか‥扉をぶち破る!」



 走り出してから30秒もかからずに目的の場所に辿り着き、俺は小屋の扉を迷わずに蹴り壊した。

 この異世界で強化された俺の蹴りは、木の扉を菓子で出来てるのかの様に粉々に吹き飛ばし、そして俺はその小屋に突入した。



 そして小屋の中は。

 一言で言うと汗臭い匂い。だけど、鼻腔の奥を擽るような甘さを感じる匂い。

 小屋のため、月明かりは中まで完全に届かず手前まで。そこの浮ぶのは、穿き物を膝の位置まで下ろしている男性の臀部。


 そしてその隙間に見える女性のほっそりとした白い足。


 俺がその光景に固まっていると、男が振り向き声をあげた。


「てめぇ!何入って来てんだ!出てけよ早く!ふざけんな!出ろよ」



 その男が焦りの声音で俺を激しく罵倒してきた。

 月明かりが腰の高さまでしか届いておらず、腹から上は暗闇で見えないが、その罵倒の声で誰だが分る。

 

 俺を今罵倒しているのは、ジムツーであった。

 


 ジムツーは膝立ちのままで、上半身と顔だけでコチラに振り向き、そのまま激しくわめき散らし続けていた。

 当然その大声に駆け付けて来る人物もおり。


「一体何があったんですか!?」


 そこに駆け付けたのは監視役の男だった。そして現状の確認の為か。


「生活魔法”アカリ”!」



 監視役の男はすぐさま”アカリ”を唱える。 だが――


「駄目です!」


 

 ラティが神速の速さで、発現しようとしていた”アカリ”を斬り飛ばしたのだ。


「何をするんですかラティさん!?」

「いや、今はアカリを点けないでください」


「はぁ?何を一体言ッ――!」



 生活魔法”アカリ”は斬り飛ばされたが。短い時間ではあるが、弾けるように明かりを放ち、そしてまわりを薄く照らしていたのだ。


 一瞬ではあるが、薄い光に照らされたには――

 裸で衣類を胸元に掻き抱き、涙を流しながら、それでも涙を流すまいと必死に耐る赤髪の女が照らされたのだ。

 その一瞬だが見えた表情は、何かに我慢し耐え忍ぶ顔だった。


 俺はその顔を見た瞬間に、ジムツーの髪を鷲掴みして小屋の外に引きずりだし、そのまま地面に叩き付けた。


 叩き付けられたジムツーは、顔の痛みよりもまず、穿き物を腰の位置まであげ、俺に喰って掛かろうとすいたが。


「ジムツー様、この件は記録させて頂きます!」

「っな、!?



 監視役の男は、俺とジムツーの間に体を割り込ませ、喧嘩の仲裁をする様に動いていた。

 もしかすると、こういう喧嘩仲裁もこの監視役の役目なのかも知れない。


「ジンナイさん、この場は私が預かりますので、監視の位置まで戻り、監視の仕事を継続してください」



 監視役の男は、俺とジムツーを取り敢えず離そうとするが。俺は


「ラティ、ここを任す」

「はい、ご主人様。では‥」



 ラティは返事をするとすぐに小屋の中に入っていった。

 俺がラティに出した指示の意味を、正しく理解した監視役の男は。


「お気遣いありがとうございます、助かります」



 そう返事を返してきた。

 何が遭ったのか、何が起ころうとしたのか、何が起こってしまったのか?それは俺の与り知らない所だが、ラティが必要だと思い、彼女をこの場に残した。


 きっと女手が必要だから。



 監視役の男にジムツーの事は任せたが、俺はジムツーの事を考えていた。

 奴は色々と溜まっていた。

 

 活躍出来ない不満だったりラティに袖にされたりとか色々あったのかも知れない。

 だが俺は、俺の正義感で止めに入った。


 もしかしたら、余計な事だったかも知れない。

 宴の時の酔っ払った村の男の村の話が頭によぎる、だが、だからと言ってラティのあの表情は絶対に無視出来ない。



 俺は自問自答をしながら、不安な顔をしたまま立っているサリオの元に向かった。



 そしてその夜、魔物の襲撃は無いまま夜が明けた。

読んで頂きありがとうございますー

感想やご指摘などお待ちしております。


この異世界の設定説明要りますか?

他の領地の簡単は話しとか、色々とか、(/ω\)

設定集的な説明の奴を、       (/ω・\) チラ

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