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大量の悪意

最近読んでくれる方が増えて嬉しい!

癒しキャラの小山君話し回です

 ボクの名前は小山 清十郎(こやませいじゅうろう)


 どちらかと言うと、いや間違いなくクラスで目立たない方だ。見た目は地味で性格も引っ込み気味で口下手なのだ。


 だけど、いつも心の中では目立ってみたいと思っていた。

 だが、何で?どうやって目立ちたいか?その考えもつかないし、やろうと思う行動力もなかった。



 そんなボクに転機が訪れた。

 異世界へ勇者として召喚されたのである。


 テンションが爆上がりだった。しかも一緒に葉月さんや言葉ことのはさんも居るのだ、召喚された女子はみんな顔で選ばれたんじゃ?と思えるメンツなのだ。


 ただ、1人だけ可哀想な奴がいた。

 その可哀想な奴とは、ボクの心の中での同士である陣内陽一だ。


 彼はボクと同じで目立たない地味なタイプだった。ボクにとても似ていたので親近感を持っていたのだが、どうやら彼は、この異世界でも目立たないハズレのようだった。

 


          ◇   ◇   ◇   ◇   ◇



 それからボクは西のゼピュロス領に招かれたのだ。

 ボクを支援してくれるのは、西の大貴族のひとつアキイシ伯爵家だった。

 そのアキイシ家からはお金に装備すべてを面倒見てくれた。しかもボクを勇者として丁重に扱ってくれるのだ。


 だから‥‥この異世界では目立ってやろうと思ったんだ。

 こんなチャンスは滅多に無いんだから。


 ボサボサだった髪は勇者らしく逆立てみて、口調も変えてみた。勇者らしく――

 


 それからオラ・・は勇者らしくなる為に頑張った。

 勇者らしく前に出て、魔物の攻撃を一身に引き受け戦い続けた。

 


 暫くするとオラは周りから鉄壁の盾と呼ばれる様になっていた。

 悪い気はしなかった、寧ろ嬉しくて堪らなかったのだ。

 自分で掴み取ったモノのように感じれたのだから、与えられた勇者ではなく、努力で手に入れたモノなのだから。


 

 ある日、自分の強さを他の勇者に見せてやりたいな~と思っていると、丁度良く他の勇者がやってきた。

 だが、ソイツは勇者とは思えなかった。


『よう、小山ちょっと頼みがあるんだけどよぅ、』

『北原君?』


『ちょっと一緒に陣内を殺さないか?』

『は?何言っているんだ?』



 唐突にやって来た北原は突拍子も無いことを言い出したのだ。

 しかも、とても承諾出来るような内容じゃなかったのだ、だから当然。


『勇者のオラがそんな事出来る訳無いだろ!何馬鹿なこといっ――!』

『お前こそ何言ってんだ!ハズレ野郎の駆除を手伝えって言ってんだよ!』



 それからの奴の吐く言葉は酷かった。

 『奴隷を犯して楽しんでる』『止めようとした俺を殴った』『あの狼人は俺が貰う』『アイツは卑怯な手をつかった』『王家もグルだ』『他にも襲っている』『人も殺した』『俺のパーティを見捨てて助けなかった』『他の町でも悪行を重ねた』『アイツは悪い奴だ』『アイツは悪だ』『アイツはいない方がいい』『アイツは俺を殺そうとした』『アイツは奴隷を』『アイツの奴隷を』『奴隷が欲しい』、と 言葉を垂れ流していたのだ。


 その後に貴族を紹介して欲しいと頼まれた。

 だが、とてもじゃないが紹介は出来なかった、目がおかしいのだ。

 さっきの発言もそうだったが、真っ当な人間の目をしていなかった。


 寧ろ、さっき自分で言った悪行をお前がしてきたのでは?と思うほどに。



 それから程なくして、オラは西を少し離れてみる事にした。

 そして陣内君と再会をした。


 その場に後からやってきた伊吹さんに、挨拶代わりに軽い気持ちで鷲掴みしてみた。まあ鎧の鉄の部分なので平気だろうと思ったら、首がもげるかと思う程の一撃を貰った。




  

 久々に見る彼は凄かった。

 スキルや魔法が一切無いのに、冒険者としてやっていっているのだから。

 しかも貴族に頼らずに。


 そんな彼を見ていると、ある事に気が付いた。

 普段は濁って腐った目をしている彼が、後ろにいる狼人の少女を見る時は、瞳が澄んで見えたのだ。


 ほほ~っ と 思いながら、もう一人の酷い目をした男を思い出した。

 そして後ろにいる狼人の少女を見て確信する。

 『彼女が北原君が言ってた子か』と、それと同時に北原の言ってたことが壮大な妄言だと確信する。

 


 だからオラは彼に忠告をしなければと思い、忠告をするのだった。

 悪い事が起きないようにと‥‥。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 小山との魔石魔物狩りを始めて5日が経過した。


 その間で小山はレベルを62まで上げていた。 

 意外にも彼等は魔石魔物狩りもすぐに慣れていた。レベルはともかく、今まで戦い続けていた実戦経験は中々のものだったのだ。

 決して油断もする事もなくレベルを上げていった。

 だだ、重ね(かさね)はともかく、繋ぎ(つなぎ)は習得出来ずに悔しそうにはしていたが。

 

 ――そう言えば、

 繋ぎと重ねを両方使いこなしてるのラティだけだな、 




 そして小山達とのお別れの夜がやってきた。

 小山達は、明日から北のボレアス領の防衛戦に参加しに行く事を決めたのだ。

 どうやら明日、北の防衛戦に参加する伊吹組に合わせたそうだ。


 そして我々は今は。

 

「明日からは北か~、オラをボレアス領が待っているぜ!」

「この方が噂の鉄壁の盾の勇者様ですか、凄く明るい人だな、情報情報っと」

「小山、北防衛戦は盾役出番無いぞ?WSウエポンスキル撃つだけだぞ?」

 


 折角の最後の夜なので、俺は知り合いのドライゼンを呼んで小山と最後の食事をする事にしたのだが。

 

 そこに――


「なぁ、野郎が4人も居るんだ、どうだい行かないか?」


 悪い大人が参加してきたのだ。


 魔石魔物狩りで伊吹組として参加していたガレオスさんは、元気でノリの良い小山と意気投合し、やたらと仲良くなっていたのだ。


「ガレオスさん行かないか?とはドコにですか?オラの感が疼いているのですが」

「オラ様、本拠地は西ですよね?でしたら階段の下と言えば通じるかと」



 ガレオスさんは小山のことをオラ様と呼んでいた。

 そしてオラ様と呼ばれている小山が。


「階段下ですか‥確かに西は聖地ですね、まだ数回しか行ってないですが」

「――!?」


 ――なにぃ!!

 未成年なのに、小山はすでに階段の下に降りたってのかぁ!!


「なら話しが早いな、行くかい?」

「本場を巡った実力を見せるぜ!」

「俺は前よりも綿密なルートを提案しますよ」


 

 多分絶対に俺は後悔する事になるだろう。

 だが、男にはそれでも行かねばならない時がある。



 そして俺は、その決断を下せる覚悟を積み重ねて来たのだ。だから‥‥


「よし!野郎共いくぞ!」



 俺達は迅速に行動した。

 兵は神速を尊ぶと言う、意味は速ければなんでも良いと言う意味だ。

( たぶん、)


 今回は盾役の小山がいるので先頭は奴に任せた。

 

 ガレオスさんには経験を生かす意味で司令塔に、俺は後方警戒でドライゼンは列の中央でルート指示役で配置に就いた。


 階段までのルートは、前回も隙が無いと感心させられたが、今回は前回以上に隙がなく、そして大胆なルートを選択していた。

 まるで道の石ころ一つ取っても意味があるのでは?と、感じさせるような見事な進行ルートであった。


 ガレオスさんは指令塔と索敵もこなしていた。 

 まさに熟練の冒険者の感で道の角に潜んでいる敵を警戒しつつ、迷いの無い指示を俺達に出してきた。


 今回初参加の小山は。

 頼もしく感じさせる大盾を構え、雄雄しく道を進軍していった。

 やはり経験者としての余裕なのか、どこか風格を感じさせるモノがあった。



 そして今回は最速で地下への階段がある建物まで辿り着く。

 だが、本当に戦いは此処からと言っても過言では無いだろう、油断できないのだ。

 

 そんな緊張の瞬間に小山が重い口を開いた‥‥


「陣内クン。先に言っておきたいことがあるんだ」

「‥‥」


 俺は無言で続きを話せと小山を促す。


「すまない!実は階段下なんて行った事無いんだ!オラはつまらない見栄を張ってたんだ!許してくれとは言わないが、すまなかった」


 

 小山からの、心の慟哭でたった。

 なぜ奴がそんな見栄を張ったのか、理解出来たのだ痛いほどに‥


「小山、謝る必要なんてないだろ?これから階段の下に行けば問題無いんだしさ」

「陽一君‥‥」



 ――陽一って呼ぶなよ、

 まぁ仕方ねえ、今回だけは許してやるか、



「おう、お前ら話は済んだか?そろそろ行くぜ」

「全く‥何やってんだか、」



 ガレオスとドライゼンは俺達を待ってくれていたのだ。

 口では咎めている、だが目を見れば解る、小山が落ち着くのを待ってくれていた事を。


「ああ、待たせたな行くか階段下へ」

「「「了解してラジャ」」」


 俺の号令に皆が声を合わせて返事を返してくれた。あとはただ階段を下るのみ。

 そう階段を下ると言う事は、時には登って来る人もいるのだ。


 俺はその可能性を失念していた、何処か油断していたのだ。


「あの、帰りましょかご主人様」

「はい‥‥」



 階段を登って来たのは、亜麻色の狼だった。

 透き通るような藍色の切れ長い瞳で俺を射竦め、そして右手を差し出してくる。

 俺はまるでワッパでも掛けられるようにのように両の手を差し出した。





 俺は願う――

 小山が下に降りて無事に当たりを引ける事を。


 そんな事を考えながら空に浮ぶ(時計)を見上げるのだった。

 

「あの、ご主人様 早く宿に戻りますよ」

「はい‥‥」



 こうして俺は宿に戻った。






             閑話休題(土下座しました)







 次の日、少し遅く宿の部屋を出た。


 大した理由では無いが、今日北に行く小山達と会わないようにする為だ。

 なんとなく、顔を合わせ辛かったのだ。


 ――そう、

 俺達に見送りなどは必要ないのだ‥ 



 完全に慣れて来たこの町。

 とても居心地がよく、最近は離れたくないと思うようになってきていた。

 俺達を受け入れてくれる町なのだから。



 いつものように装備などの用意をすませ、階段を下りて食堂に向かう。

 いつもの朝食を食べにいく為に。 だが――


「――ッご主人様!ご注意を囲まれている‥‥?」

「ラティどうしたんだ?」

「ほへ?どうしたんですラティちゃん?」



 それは突然だった。

 階段を警戒しながら下りたが、警戒がまだ甘かったのだ。

 

 相手が武器を持っていなかったので油断したのかも知れない。

 大人数、いや視界に移るすべてが敵になっていたのだ。すべてが


 階段を下りると大人数が迫ってきた、もし武器を持っていたのならすぐに槍で薙ぎ払ったかも知れないが、丸腰の相手には躊躇ってしまったのだ。


 まるでゾンビ映画のワンシーンのような光景。


 俺は3人の男に槍を掴まれて引きずられるようにして、宿の外の通路に引き出されたのだ。

 気付くとサリオも後ろから腋の下と支えられるようにして外に連れ出され、俺とサリオはラティと分断される形になってしまったのだ。


「ご主人様!」

「っく!ラティ!」

「ぎゃぼぼぼ」


 俺は7~8人に囲まれ取り押さえられそうなり、サリオは捕獲された形に、ラティは宿屋の中で状況は見えず。


 大混乱の状況だった。


「なんだよお前等!いきなり襲ってきやがって」


 俺は取り上げられそうになる槍を掴んだまま声を張り上げた。


必殺フェイタルすまねぇな、だが公爵様の命には逆らえないんでね」

「公爵に逆らって怒りまで買うとはね、」


 ――心当たりがない!

 伯爵なら分るが、公爵だと?公爵って言えばある意味一番権力あるんだよな、

 一体なにがどうなって、っは ラティは平気か?



 俺達は突然町全員に襲われる事になったのだった。 

 理由は不明なままで‥‥



読んで頂きありがとう御座いますー


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