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新しい雇い主

遅れましたー

 10分後に小山達は復活した。

 

 戻ってきたのは小山が一番遅かったが‥



「じ、じないよういち君。ちょっと聞きたいんだけど」

「誰だよ!じないって、で 聞きたいのはレベルの事か?」


「そうだよ!なんでレベル70超えてるんだよ!しかも3人も」

「いや、この町だと70超え他にもいるぞ?」


 驚きに再び固まろうとする小山。


「 ――パン!!―― 」 

「っは!?」



 猫騙しのように小山の目の前で拍手を打ち、意識を引き戻す。


「さっき言った魔石魔物狩りだよ、それで大量の経験値が獲られる」

「魔石魔物って、でけぇマリモみたいな奴を?アレを倒し続けるのかぁ」



 小山が腕を組みながら魔石魔物狩りを頭の中で想像している。

 予想はしていたが、やはり地下迷宮ダンジョンによって魔物の種類は違うようだった。

 

「湧く魔物の種類は違うみたいだけど、魔石を置いてワザと湧かすんだよ」

「危険じゃないのか!しかもマナー違反だろ、それって」


「この町ではすでに当たり前になってるぞ?」

「マジかよ!?断りナシの鑑定といい、魔石放置といい、なんでもアリかここは」


「モラルの崩壊みたいに言うな、いきなり胸掴みに行くような奴のくせに」

「んん?西だと割りとアリだぞ?さすがにやりすぎると怒られるけど」


 ――なん‥だと!?

 いや、地下への階段の聖地とも言ってた、だからか?だからなのか?

 これは真面目に西に移動も検討する‥‥検討の余地は無いな! ん? 



「・・じ~~・・」

「あの、なんでしょうか?ラティさん」


「いえ、何かご主人様が、真面目にどうでも良い事を考えていたようでしたので」

「そんな事ないよ?真面目に大事な事考えていたよ?」


「真面目に不純なことを?ですか?」

「――!!」


 ――オブラァァァト!

 すっごい薄いオブラートに包まれた言葉だよ!

 くそ!伊吹にも感づかれたか?なんか視線がキツく‥‥



 伊吹から怪訝な視線を受けていると、小山が何か思い出したのように口を開いた。


「そうか、その狼人の子があの話の子か‥‥」

「あの話?」


「陽一君。さっき西以外の勇者に会っていない言ったけど、1人だけ会ったよ」 

「うん?」



 小山が急に真面目な顔つきになっていた。 

 明らかに雰囲気が変わっていた。これから話す内容には巫山戯たモノは無いと示すかのように。

 そしてその雰囲気通りの内容を口にした。


「北原君に会ったよ。誤解の無いように先に言うと、オラはあの話信じてないよ」

「あの話ねぇ‥どんな内容だった?」


「言う必要がない、と 言うより話したくない」

「‥‥‥」



 小山は俺から目を外し、何処か虚空でも眺めるようにして語りだす。


「陽一君。何があったのかは知らんけど、北原君はヤバいぞ。西で再会した瞬間に気付いたよ、目が尋常じゃなかった。なんか薬でもやってるのかと思ったよ」


 ――あいつ西に行ってたのか、

 しかも話しの内容から、俺とラティの事を何か周りに言いふらしてるのか?

 小山の反応を見る限りじゃかなり酷い内容っぽいな、



「北原君とは二週間くらい前に会ったんだけど、言ってる事がおかしいし行動もおかしかった。あれは勇者とは言えないモノだったよ」

「だろうな、」


( 俺のことを魔法で殺しにきたしな、)

 

「あと、やたらと貴族を紹介しろって迫って来てたな。さすがにみんなひいて紹介なんてしなかったけどな」

( 前の貴族とは離れたのか )


「って 話が脱線しちゃったな。ただ奴は気を付けた方がいいぜ」

「ああ、わかってる」


 ――西に行くのは危険か、

 もし北原が西の大きな貴族の庇護下に入ってたら厄介だな、




 俺を狙ってきた3人の事を思い出す。

 あの3人は表向きは、何処にでもいるような冒険者としてアレ・・をした。

 だが北原は一応勇者として扱われている。



 ――襲ってきたからって返り討ちにして殺したらマズイよな、 

 特に街中じゃ絶対に目立つし、でもアイツは襲ってくるよなぁ、

 だからって北原をやってしまったら国中から追っ手がかかるよな‥


 西に行くは止めだな!



「話を戻すけど、陽一君。魔石魔物狩りの修行とやらを教えてくれ」

「修行って、それと俺の事を陽一とか呼ぶな、呼んでいいのはラティだけだ!」




         ◇   ◇   ◇   ◇   ◇




 その後。

 俺は小山に魔石魔物狩りを教える事になった。

 しかも指導代と傭兵代で一日金貨3枚と銀貨20枚で契約したのだ。


 最近渋る赤城を切ったのだ。

 俺は悪くない‥‥。



 新しい雇い主を得て俺はその日を終えたのだった。






           ◇   ◇   ◇   ◇   ◇






 次の日は昼ごろから魔石魔物狩りを開始した。

 朝のうちに赤城には助っ人傭兵を出来ない事を伝えておいた。


 そして現在。


「なんで伊吹まで来てるんだよ」

「うん?久々に一緒にやりたいな~って思ってね、繋ぎと重ねも見たいし」


「そっちが目的かよ」

「えへへ♪」



 狩の参加者は、俺達3人・伊吹1人・小山組6人の計10人である。

 どうやら伊吹組は今日は休日のようだ。


 そして今は魔石を地面に置いて魔石魔物が湧くのを待つ。


「なぁ陣内クン・・・・。本当に湧かすのか?ちょっと信じられないんだけど、」

「何回も説明しただろ?それよりも手順とか役目忘れるなよ」


「おう!それは任せてくれ」

 


 小山達には初めての魔石魔物狩りなので、対処法をしっかりと説明しておいた。

 特にハリゼオイには注意しろと、間違っても弱点の腹以外にはWSウエポンスキルと魔法を放たないように注意しておいたのだ。


 過去何度も冒険者達がそれで傷つきそして殺されてきたのだ。

 



 その後、魔石を置いて丁度一時間経過した辺りで。


「あ!陣内君。魔石が動き出したよ」

「伊吹、配置に就け!盾役任せたぞ小山!」

「おう!オラに任せろ!」

  

 

 小山は勇者にしては珍しく盾役だったのだ。

 持っている【固有能力】も【強盾】【捕縛】【重縛】【耐体】と盾役向きだったのだ。


 ただ、その能力の使い方は理解していなかったようだった。


「陣内クン。本当にこの盾でいいのか?鍵爪付いているけど‥」

「それで引っ掛けるようにするんだよ、動き止めるようにな、たぶん‥」


「おおい!陣内クン!たぶんって何だよ」

「多分は多分だ!」 



 グダグダで戦闘が始まった。

 湧いた魔物はカゲクモの魔石魔物だった。初戦には丁度良い相手だった。


「でけぇ!しかもキモイな」

「いいから、さっさと盾で押さえつけろ」



 小山が盾を構えてカゲクモに体当たりをする。

 カゲクモの足を上手に絡めるようにして盾に付いた鍵爪が掴む。


「おおう!マジで押さえれてる!すげぇ」

「よし押さえたな、WSウエポンスキルいけー!」


 

 【捕縛】と【重縛】の効果で動きが鈍くなった魔石魔物に、複数のWSウエポンスキルが叩き込まれていく。

 放出系WSウエポンスキルが着弾し、激しい光と音が響き、次にそのWSウエポンスキルを追い駆けるように亜麻色の獣が駆けていく。


 そして――


片手剣WSウエポンスキル”ウィズエッジ”!」


 ラティの近接系WSウエポンスキルが重なるように斬りつけた。

 斬りつけた位置が光を爆発させたように強く輝く。


「――んな!」

「ラティちゃんすっごーい」


 小山と伊吹が重ねの効果に驚きと感想の声をあげる。

 そして光に切り裂かれたカゲクモが黒い霧となって霧散していった。


 その光景に驚きに呆けて小山組が立ち竦む。そして――


「すげぇぇ!今の何だよ!?ただの片手剣WSウエポンスキルなのに、あの威力‥」

「ここ最近発見された方法だよ、名称は重ね(かさね)だ」


「しかも魔石魔物も本当に簡単に倒しちまえたし、」

「こればっかり倒してるから俺達はレベル上がるのが早いんだよ」




 そう、レベルを上げて貰わないとマズイのだ。

 出来る限り勇者達には均一に‥。



 勇者の誰かが魔王になっても倒せるように。

 9代目勇者と一緒にいたイリスさんが言っていた事、勇者が魔王になった事。

 経緯は分らないが、勇者が魔王になった時に、その勇者がもし飛び抜けて強かったら、他の勇者達では対抗出来なくなる。


 だから出来る限り勇者達のレベルは同じなのが望ましいのだ。

 まだ全員には伝えられない情報だが‥‥。



 こうして俺達はその日の魔石魔物狩りを順調に進めていった。

 小山はずっと驚きっぱなしだったが。



読んで頂きありがとうございますー


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