表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/690

3人の刺客

ちょっと引っ張ってます。

 

 彼は とある貴族の歪んだ刃。


 名は デッド。


 親に奴隷として売られ、すぐに貴族に買われた。

 買われた理由は、彼の持つ【固有能力】の種類に価値を見出されたから。


 【隠密】【無音】【隠殺】【死心】

 この四つを同時に持っている事が高く評価されたようだった。

 彼自身では無く、この【固有能力】を。



 一つ一つだとそこまで珍しいモノではないが、四つ一緒だと話は変わる。

 それは、とても才能に恵まれた暗殺者に成れると言う事だ。


 【隠密おんみつ】は気配を消せて存在を希薄に出来る。

 達人になれば、目の前に立っていても注視してないと気付かれない位になる。

 

 【無音むおん】は体から発する音を抑える事が出来るモノ。

 意識して忍び足であるけば、何処であろうと音が一切漏れないのだ。


 【隠殺いんさつ】は人を殺めようとする気配、殺気を消せるモノ。

 感や気配に鋭い相手でも殺気を察知され難くなるのだ。


 【死心ししん】は酷いモノだ。

 誰を殺しても心が一切揺らがなくなるモノ。


 

 そう【死心】だけは、特別だった。

 コレ(死心)のおかげで彼は両親に売られたのかも知れない。

 だが、それを確かめるすべはもうない、【死心】効果は絶大だったのだ。



 彼は十何年も貴族に飼われ続けた。

 

 買われた貴族の後ろに、常に付き従うのが彼の仕事だった。

 何かあるとその貴族は、彼を顎で指して暗に恐怖を振り撒いていた。

 そして周りは恐怖した。


 彼の主は常に暗殺者を後ろに控えさせている、どうしようもない貴族だったのだ。

 『腰に剣を差しているよりも効果あるわい』と言葉を吐いた事もあった。


 彼はその貴族に目に見えて分り易い、脅し道具として使われていたのだ。

 そして持っている【固有能力】がその説得力を増していた。


 解りやすいく優秀であろう暗殺者として、周りに見せていたのだ。

 本当は暗殺者としての訓練などしてもいないのに。


 情け無いことにハリボテの暗殺者なのだ――



 彼は誰でも殺せるような、ぬるい暗殺しかやってきてないというのに‥‥





「デッド仕事だ、あの野郎‥ワシの可愛いジャアをちょっとの罪で捕まえおって、その捕縛に協力した冒険者を殺して来い」

「はい主様」


 ホントは嫌でも逆らえない。

 買われた時からそう扱われていたから――


 

「忌々しい、ボレアス公爵め‥あとあの女アゼルめぇ、許さんぞ」

「‥‥‥」


「早く行かんか!その冒険者の情報はアレに聞いておけ」

「はい主様、行ってまいります」


 彼は何故かこの貴族には逆らえなかった。

 他の周りの人達も――



 この貴族の権力なのか。

 彼は怪しまれても、誰もそれを咎められる事は一度もなかった。


 たまに命令される暗殺の任務。

 アレとは、執事をやっているカールの事。

 仕事の内容を聞いてデッドはその冒険者を追うことになった。




 目的の町に辿り着き、ジンナイと言う男を発見する。

 喧嘩なのだろうか、天下の往来で二人の男が睨みあっていた。

 その二人のうちの黒髪の男がターゲットの陣内だった。


 

 もしこの喧嘩が大きくなって大乱闘にでもなれば、そっと近寄りすっと刃を刺し込めば仕事が終わるのだ。

 殺れるチャンスが無いかと、彼がターゲットの男を見つめていると。

 ターゲット(陣内)の隣の狼人の少女が、こちらを射るように見つめていた。


 たまたま彼を見ていたのでなく、彼の意を読み取るかのように。

 デッドが慌てて人ゴミに紛れて位置を変えても、デッドの視線に反応するかのように、彼を視線にて射抜いてくるのだ。


 

 鈍い奴であろうと絶対に気付く。

 あの狼人の少女は彼を警戒していると――

 


 彼は予定を変更した。

 あの狼人がいる限りターゲット(陣内)には近寄れない。

 いつもの、そっと近寄って刺殺するのは不可能であると。


 だがそれは、彼にとって手詰まりを意味するモノだった。

 彼にはそれ以外の暗殺方法は無いのだ。


 彼は飛び道具も適正が無く全く使えない。

 彼は食事に毒を入れるとかもやったことも無いし毒も持ってない。

 彼は寝込みを襲うにも鍵開けも出来ないし、あの獣人の少女も怖い。

 

 そう彼に出来るのは、気付かれてない相手にそっと近寄り刺す事だけ。

 他は一般人レベルなのだ。



「詰んだ‥‥」


 だが、次にある事を思いつく。

 

「誰か協力者が居れば‥」


 彼はそう呟いて、喧嘩で倒されているエルドを見つめていたのだ。

 1人では無理だと判断して。




 彼は目に見えて解りやすくターゲットを恨んでいるエルドに声を掛けた。

 もちろん駆け引きなど出来る訳もなく。


「あの男に復讐しないか?」


 エルドが付き添われていた警備隊と別れたのを確認してから声を掛けたのだ。

 幸運な事に、『したい』の返事を貰えたのだ。


 エルドは怒りのあまりか、冷静な判断が出来ていなかったのだろう。




 そして二人で話し合う。

 どうやって復讐をするかを。

 

 デッドにはある作戦が思いついていたのだ。それは

 エルドにターゲット(陣内)を呼び出してもらい、人ゴミに誘導するというモノ。


 あとは自分の【固有能力】を発揮すれば殺れると。


 だが問題がある。

 獣人の少女に付いて来られると困るのだ。

 

 なんとか彼女の足止めか、もしくは気を引く人が後1人必要なのだと。



 

 そして彼に再び幸運が訪れる。


 また1人勧誘出来たのだ。

 今回も駆け引きなど無しに『復讐しないか?』で返事が貰えたのだ。


 その彼の名は、キャスト、偽ジンナイだ。

 キャストを酒場に誘い、計画を打ち明け、そしてエルドとも合流した。

 個室を借りて3人で計画を練る。



 作戦はシンプルだ。

 エルドが謝罪したいとか言ってターゲット(陣内)を呼び出す。

 この時は、ラティには聞かせたく無いとか言って離れて貰う予定だ。


 その後は、キャストがラティを見張る。

 もしラティが動いたら話しかけるか体を張って引き止める予定。


 最後に、人ゴミに紛れてデッドが暗殺する。



 シンプルな作戦。

 終わったあとは町を離れれば良いと考えていた。


 なんの生産性も無い暗殺。

 そもそも暗殺に生産性があるかどうか謎だが。

 主に言われたから彼は実行する。


 主に対して忠誠心がある訳でもない、言われたから実行するだけ。

 中身が空っぽな彼‥‥


 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 俺達は暗殺者に対して対策を練っていた。


 食事場所を毎回変更し、狙撃や魔法の奇襲にも備えた。


 魔法にはサリオバリアー(乙女盾)で対処し、狙撃にはラティの察知。

 ラティ曰く、殺気は消せても敵意までは消しきれないから察知出来ますと。


 しかも、ラティはデッドの気配をある程度なら察知も出来ると言うのだ。

 ラティさんが相変わらずチート全開だった。


 その代わり、俺はラティから離れられなくなってしまったが。

 寧ろ望むところだった。



 次に。

 もしかしたら赤城組にも刺客が混ざっている可能性も考え。

 ドライゼンを通して赤城にも刺客の件を話しておいた。


 特に最近北の領地から流れて来たのが、勇者同盟レギオンに入っていないかを。


 ドライゼンがそれを確認し、赤城にも警戒してもらう事になった。

 

 あと地下迷宮ダンジョンの方が比較的に安全なので、助っ人傭兵も続けた。

 周りに人も減るうえに、ラティが居れば襲撃も難しい。

 町の中よりもやり易いのだ。


 仮にもしラティが感知出来ない程の襲撃があれば。

 それは素直に諦める事にした。


 俺はラティを信じる事にしたのだ。


 ――相変わらず俺はラティに依存してるな、

 でも、この依存は何だか心地良いんだよなぁ‥




「陣内君、僕はラティさんを引き取るなら、正式に引き取りたいからね」

「赤城‥まだラティ狙ってるんだな、」


「そうだよ、だから主が不在だから、引き取るとかは勘弁だからね」

「絶対に死なねぇよ!」


「あ、あと傭兵代の値下げの約束守って貰うからね」

「くっそ、あの時の仕返しかよセコいぞ!」


「先にやったのは陣内君だろ」

「いつかまた値上げしてやる‥」




             閑話休題(赤城も変わった)




 こうして俺は信用出来る人に刺客の件を話し。

 裏で協力をして貰うことにした。っと言っても数は多くないが。


 俺の協力者はね――

 


 本来ならデッドを捕まえに行けば良いのだが、

 デッドは現在何もしていないのだ、暗殺者の容疑者なだけ。 

 問答無用で捕まえたい所だが。


 あまりにも相手が迂闊なのだ。

 全く隠せていないのだ。


 ドライゼンやガレオスさんにも相談したが。

 共通の見解で、これは罠だろうと。


 俺もそう思ったのだ。

 怪しすぎるのだ、これはどう考えても罠としか思えないのだ。

 釣られてデッドに近寄ったり、捕まえたりすると何かがあるのでは?と。


 

 ドライゼンの予想は。

 デッドが貴族の使者扱いで、何もしていないデッドを捕まえさせて。

 その罪で陣内に難癖をつけて来るのでは?と 絡め手を予想していた。


 ガレオスの予想は。

 デッドは陣内を釣る餌で、本命の暗殺者が潜んでいるのでは?と。

 デッドの露骨な【固有能力】も、餌として見せ付けているのかも知れないと。


  

 だが、デッドが他と接触している気配が見えないのだ。

 いくらラティの【索敵】でも、流石にそれは補足出来ないのだ。


 こちらの予想し切れない綿密な作戦が張ってあるのだろう。


 可能性を疑い出したらキリが無いのだ。

 

 アホな子のサリオは。

「実は何も考えて無いでジンナイ様を呼びに来るんじゃです?」

「いや、さすがにそれは無いだろう」


「でも、呼び出してジンナイ様をズブリが手っ取り早いんですよねです」

「そりゃそうだけど、相手もそこまで単純じゃないだろ」


「他にどんなのがあるのでしょうね~です」

「それが予想付かないから困っているんだよ」


 そんなのだったら苦労しないのだ。


 

 

 現状出来る事は。

 暗殺か接触しようとして来たデッドを押さえる事。

 かなり危険かも知れない、理想は暗殺を実行しようとした所を取り押さえる。

 これなら少なくとも、捕まえる大義名分も立つ。


 少ないツテを使って作戦を立てる‥。



「あの、ご主人様 平気でしょうか?」

「やれることはやってみたからな」


「あの、やはりわたしが居た方が」

「たぶん、それだとデッドが出てこないからな、」


「はい、わかりました」

「まかせろよラティ、だからそっちも頼む任せたぞ!」  


「はい‥」



 そして二日後。

 夕食中にエルドがやってきた。


「すまない、お前にちょっと話があるんだ、」

「あん?なんの用だラティにあれだけ言われたのに、また来たのか」


「――っぐ!、ちょっと話しがあってな、俺と一緒に来てくれないか?」

「ここじゃ駄目なのか?」


「ああ、ちょっと二人で話したくてな」

「怪しいな、」


「だったら、ちょっとそこの通りでもいいんだ、ほらさ」

「ん?なるほど聞かせたくないって事か」


 

 エルドは俺と二人だけで話をしたいと言ってきた。

 視線でラティには聞かせられないと込めながら。


 俺はそれを受けてエルドと外の通りに向かったのだった。

 

「ラティちょっと外に行って来る待っていてくれ(・・・・・・・)


 俺は勝負をしに行った。

読んで頂きありがとう御座いますー


感想やご指摘などお待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ