マッサージ
おけましておめでとうございます
遅れてすいません、最初の頃の話を手直ししました。
1~20辺りを、基本は変わってないですが、誤字や脱字直しに
書き方を修正しました 1/5
俺は自分の力を見せ付ける為に、次に魔石魔物が湧いたら戦う事にした。
それは、壁際で俺達を見学している冒険者達に対してだ。
ある程度の実力を見せておかないと、アホな事をし出す奴がいるのだ。
今更ラティが不覚を取るとは思えないが、念には念を入れておくのだ。
次の魔石魔物を待っていると、サリオが近づいて来た。
何やら、悪い笑みを浮かべながら、何となくだが、ららんさんを思い出す。
「ジンナイ様、覚えたての支援魔法掛けましょうか?です」
「お!?サリオ、支援魔法覚えたの」
「おほほ!覚えたデスよです」
「ちょっと嫌な予感がするが、どんな効果の覚えたんだ?」
「なんと!素早さが上がる魔法ですよです」
「おい!俺の【加速】と被ってんじゃねえかよ!」
「ぎゃぼう!でも重ねて効果あるかもですよです」
「お!それなら確かにいいな」
「でしょぅでしょう!何と効果時間は3秒です」
「へ?3秒?」
「あい、瞬きで5回分くらいです」
「それ3秒も怪しいぞ!」
「そうなんですよ‥折角の支援魔法覚えたのに、イマイチです」
「イマイチどころか、ゴミ魔法じゃねえかよ!」
ムカツク嘘泣きを始めるサリオ。
いらっときて、アイアンクローでも、かまそうかと思っていると。
「そろそろ湧くぞー!」
「配置に就け!」
「これラストでいくぞ」
どうやら魔石魔物が湧きそうであった。
俺はラティに、今回は俺も参加することを伝え、サリオに魔法を頼む。
「サリオ!折角だから、俺にその魔法掛けろ!」
「ふえ?了解してラジャです!」
俺は最後の魔石魔物に、切り込むべく身構えた。
そして、魔石から魔石魔物が湧いてきた。
その姿は芋虫型のクロウラーの魔石魔物。
この魔石魔物は、他の魔物よりも数段弱く、楽に倒せる魔石魔物だ。
冒険者からは、ボーナス魔石魔物とも呼ばれている。
俺もこの魔石魔物なら、ほぼ槍の一撃で倒す事が出来るのだ。
「サリオ!魔法寄越せ」
「はいぃぃ!風系支援魔法”ヘイストゥ”!」
サリオが魔法を唱えると、俺の体の周りにピンク色の風が吹荒れる。
吹荒れた風は、そのまま俺の体を包み込む。
俺はピンク色の風を纏い、【加速】を使って魔物に駆けていった。
その速度は、まるで後ろから車に轢かれ飛ばされるような加速だった。
突然自分の感覚の3倍近い速度が出るのだ。
当然コケた――
最初の二歩までは追いついたが、三歩目は間に合わなかったのだ。
俺は想像を絶する転倒を披露する。
岩肌の地面で、身を削りおろすようにコケたのだ。
装備していた、皮の鎧を一瞬でズタズタに。
ラティは、俺が誰かからまた襲撃されたかと、警戒をしながら俺に駆け寄る。
そして俺の横でしゃがみこんで、俺の安否の確認している。
あまりに壮大な転倒に、固まっていた赤城組も動き出した。
魔石魔物は弱いので、WSですぐに倒し。
回復役がみんな俺に集まってきた。
「回復魔法を掛けます!」
「ラティちゃん、離れて」
「一体何があったの?他に魔物の姿なんて見えないけど‥」
「あの、ご主人様は転んだようです‥‥」
「ぎゃぼおおお!魔法ここまで強くないですよね?です」
強さを見せ付けるつもりが。
逆に俺の酷さを見せ付ける事になってしまっていた。
状況を理解して、見学していた冒険者達が、全員大爆笑している。
全員が遠慮なしに爆笑していた。
足と腰の激しい痛みに耐えながら、そちらを睨みつける。
気付くと、一人だけが笑わずに、俺を睨みつけていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺はその後。
情けない話だが、ラティの背におんぶして貰い、地下迷宮を後にした。
【固有能力】の【加速】に魔法加速を重ねた結果、速度の出すぎで。
腰と足、特にアキレス腱とふくらはぎを痛めてしまったのだ。
魔法による治癒も、怪我と言うより、筋の損傷には効果が薄いのか。
痛みが引かず、激痛のあまり歩行が困難になってしまった。
その結果、赤城には大爆笑をされ、ラティには背負われる事に。
ただ、ひとつだけ良かった事が。
ラティの髪の香りを、嗅ぎたい放題という、貴重な体験を出来たのだ。
若干、周りからは冷たい目で見られたが‥。
「あの、ご主人様、少々くすぐったいですが‥」
「いや、気のせいじゃないかな?」
「うう、ジンナイ様の槍と木刀重いです、」
「しっかり持てよサリオ、大事な武器なんだから」
「乙女には重いんですよ~です」
「あの‥ご主人様」
「気のせいだ!」
「いえ、周りの目が少々‥‥」
「へ?」
気が付くと、いつの間にか注目を浴びていた。
考えれば簡単な事だ。
町の中で、少女に背負われている男、好奇の目で見られてもおかしくない。
俺達は、急いで宿に戻る事にした。
ラティが頑張ったのだが。
宿の部屋に戻ってからは、ラティとサリオに伝言をお願いした。
二人で赤城組のドライゼンの元に行って。
明日は助っ人傭兵出来ないと、伝えに行ってもらった。
とても今日中に治るとは思えなかったからだ。
一度ベッドに横になると、起き上がる事が困難になり。
その日の食事は、食堂に行くのではなく、部屋で食べることにした。
トイレは、途中までラティに支えて貰い、後は死ぬ気で頑張った。
人としての尊厳をギリギリで守れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日の朝。
俺はベッドから出れなくなっていた。
簡単に言うと、足が酷い筋肉痛のようになっていたのだ。
横になっていれば楽なのだが、立っているのがとても辛くなっていた。
今日は休む事を、赤城組には伝えているので、一日ベッドの上の予定だ。
ラティとサリオには、破損した皮の鎧の修理のお使いを頼み。
そのお使い後は、二人に銀貨20枚づつ渡し、二人も休日にした。
サリオはお使い後に、すぐに何処かに行ってしまった。
サリオの休日の過ごし方には、少し興味があったが。
動けないので仕方ない。
現在、このルリガミンの町でなら。
狼人やハーフエルフへの、迫害や差別ほぼ無くなっており。
安心して出歩けるので、ラティにも、気楽な休日を楽しんで貰いたかったが。
彼女は何処にも行かず、部屋で俺の看病をしてくれた。
実は、正直嬉しかったのだ。
甘える訳ではないが、弱っている時に、やはり誰かが横にいるのは嬉しい。
嬉しさに、少しニヤニヤしながら、俺は足をマッサージしていた。
筋肉痛と同じで、優しく揉むと心地よい痛みがするのだ。
仰向けのまま、膝を曲げてふくらはぎを軽く揉んでいた。
すると、ラティがある提案をしてきたのだ。
「あの、ご主人様 宜しければわたしが足を、お揉みしましょうか?」
「お願いします!」
俺は光の速さで返事をした。
断る理由は微塵にも存在しなかった、もしかすると。
俺は潜在的に、ラティのマッサージを渇望していたのかも知れない。
それをラティが察してくれたのだろうか‥‥。
ベッドに、仰向けで横になっている、俺の足元に、ラティが正座をし。
正座をしたラティの膝と太ももに、俺の両足を乗せ、マッサージを開始した。
優しい手つきで、ふくらはぎを軽く絞るように、揉んでくれる。
ラティの手からは、癒しの成分でも分泌されているのか。
不思議と痛みが消えていき、心地よさが広がっていった。
特に、腕に力を込める時に、ラティは体を少し前に倒すので。
膝の上に乗せた足のつま先に、ふわっとした柔らかさが当たるのだ。
そのまま暫く俺は、ラティに足のマッサージをして貰っていた。
時間で言えば、たぶん‥‥2時間ほど。
ラティは疲れた素振りを一切見せず、黙々とマッサージをしてくれていた。
流石にいつまでも、お願いする訳にもいかないので、声をかける。
「ラティありがとう、すっごく楽になったよ‥‥」
『これなら、明日には動ける』と 伝えようと思ったが、停止してしまった。
何故なら、気持ち良くて閉じていた目を開くと。
起っきしていたのだ。
久々に死にたくなった――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺はその後。
あまりの居た堪れなさに、誤魔化すように無理に眠りに就いた。
もしかしたら、ラティは気づいてないのでは?とワンチャンに願いを賭けたが。
ラティの頬は、明らかに朱に染まっていた。
気まずさから寝て数時間後、サリオが部屋に戻ってきた。
戻ってきたサリオは、テレながらのドヤ顔というモノをしていた。
まるで、ポンコツのツンデレと言った感じだ。
俺が怪訝そうにサリオを見ていると、サリオが俺に小さい瓶を寄越してくる。
「ジンナイ様、ららんちゃんにも相談して買ってきましたです」
「へ?これって‥‥」
「あ、あの、その瓶って、アレですね」
「うん?ラティ知ってるの?」
サリオに渡された瓶には、緑色のドロっとした物が入っていた。
「サリオさん、これって塗り薬ですねぇ」
「そなのです、あまり詳しくないから、ららんちゃんに聞いて買ったです」
思わず涙が出そうになった。
てっきり渡した銀貨20枚すべてを、買い食いに溶かすと思っていたが。
サリオはその銀貨で、俺の為に薬を買って来ていたのだ。
『残りは全部買い食いしました』と言うオチも忘れていなかった。
その日の夕食は、嬉しさのあまりに奮発をした。
普段は、安い方から1~3番目を注文しているが、今日は。
「あの、このような贅沢をしても、宜しいのでしょうか?」
「ぎゃぼう‥見た事ない肉がわんさか居ますよです」
「さあ食べてくれ!」
俺は食堂で一番高いメニューのひとつ、すき焼きを注文した。
しかも、5人前を。
普段の注文している、肉じゃが定食は銅貨48枚。
基本的に、3人で一食銀貨2枚程度だが、このすき焼き1人前で銀貨3枚。
それを5人前なので、銀貨15枚である。
ららんさんへの借金がまだあるが、今夜は見逃してほしい思いだ。
3人で食事を楽しむ
特にサリオは貪るように肉を食い漁っていく。
この異世界のハーフエルフは、肉食のようだ。
食事も〆が近づき、米でもぶち込み、雑炊に出来ないか考慮していると。
「おい!ちょっと邪魔するぜ、お前に話しがある、いや命令だな」
知らない冒険者が話し掛けて来たのだ。
サリオはびっくりしたのか、固まってしまい。
ラティは護身用の短剣を握っている。
サリオはともかく、ラティが剣に手をかけると言う事は、警戒。
この男が、悪意か殺意を持っていると言うこと。
「わかりました、飯食った後に話しを聞きますよ」
「うるせぇ、今聞け!用件はひとつだ、その奴隷を俺に売れ」
「飯が終わるまで待って貰えますか?」
折角のご馳走だった。
もしかしたら、この異世界で始めてかも知れない。
だからこそ、楽しく終わりたかった。
出来るだけ穏便にしたく、丁重に対応したつもりだった、だが。
「ほらよ、金は払ってやるからよ、狼人の奴隷を寄越せ」
「――ッ!!」
「‥‥‥」
「あうぅぅぅです」
『お前にコイツは相応しくない』と戯言を吐きながら、奴は金を置いた。
鍋の中に――
〆を雑炊にしようとしていた、鍋に金を落としていったのだ。
しかも、その金には多くの紙幣が混ざっていた。
「多めに払ってやるよ、ホントは金貨8枚のところ、10枚払ってやるよ」
静まり返る食堂で、俺は立ち上がる。
それに反応して、すぐに食堂の店員が駆け寄って来た。
「やるなら外でやってくださいよ!お願いします」
以前泊まっていた宿でも、ハーティ相手に乱闘したので。
この宿でも、ひょっとしたら危険人物と警戒されていたのかも知れない。
それくらい素早い店の対応だった。
いつの間にか、足の痛みが消えていた。
まるで麻酔でも打ったかのように痛みが消えていた。
その代わり。
腹の奥の方で、黒い塊のような痛みがする。
久々に感じるこの黒い痛み。
「わかった、表にでようぶん殴るから」
「っは、お前みたいにガキが!いいだろう外いこうか!」
野次馬引き連れ、俺達は宿の外に向かった。
ラティが、すっと近寄ってきて。
俺に奴のレベルと【固有能力】を伝えてくる、あと名前も。
「殴り合いが終わったら、奴隷は貰っていくぞ、このエルド様がな」
夜の町で殴り合いが始まる‥‥
読んで頂きありがとうございます
宜しければ今年もお願いしますー
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