ある冒険者
ちょっと短いですー
それとラティの鎧のお値段合計金貨40枚ですが、魔石が安くなっているからの値段で、普通に作ると金貨500枚相当です、ららんさんのおかげです
オレの名前はエルド 27才
元は南のノトス領で専属冒険者をやっていた。
専属冒険者とは、貴族からの依頼などを専属で受ける冒険者のことだ。
分かり易く言うと、冒険者のエリートみたいなモノだ。
だが、半年ほど前にある事件によりそれが変わってしまった。
オレを専属で使ってくれていた貴族、ノトス領主の嫡男が死んでしまったのだ。
どうやら防衛戦で、はぐれた魔物に運悪く遭遇してやられたらしい。
真相はどうだか知らんけどな。
最初は別に雇い主が、変わる程度の認識だったが、それは違ったのだ。
仕事内容が激変した訳でもない、報酬額も少し減った程度。
だけど。
好き勝手出来なくなったのだ。
前はエリート冒険者にはある程度許されていた事があった。
嫡男もそれを良しとして、オレは咎められる事が少なかった。
まぁ、やりすぎた時は注意ぐらいはされたけどな。
何時も受けている仕事。
ギルドから優先でオレに回されて来る、魔物討伐の仕事。
依頼主は貴族。
村や町の近くに湧いた魔物や、偶然出来た洞穴に湧いた魔物を倒して、洞窟を潰してくる仕事だ。
雑魚冒険者には手に負えない、オレに依頼されて来る仕事だ。
命懸けの後なんだから、依頼の近くの村や町で、酒飲んで騒ごうが喧嘩で止めに来た奴をぶん殴ろうが、村娘をちょっと襲おうが、許されるんだ。
前までは、人殺しさえしなければ、何も言われなかったのに‥‥
新しい依頼主、領主の次男アムなんとかは文句言ってきやがった。
挙句の果てに、次は牢にぶち込むとか言う。
別にオレはこの領地に拘っている訳ではない。
何処だって構わないのだ、寧ろオレが居てやっているんだ。
だから余所に行くぞ?っと脅してやったが。
「はいどうぞ」とか言いやがった、しかも‥
「あ、今回の支払いはコレで」とか言って紙幣で寄越しやがった。
完全にオレを馬鹿にしている。
頭にきたので、ノトス領を出ることにした。
知り合いに声を掛けて、合計6人でノトスを出て、北に向かった。
向かった先は、【ルリガミンの町】冒険者達の町だ。
噂では、あの恐ろしい魔石魔物を狩るレベル上げ方法があるとか。
オレはもっと力を付けようと思った、誰からも文句を言われないような。
二度と追い出されたりしないような力を。
それから魔石魔物狩りは順調だった。
オレ達6人は、魔石魔物狩りのパーティに参加出来て、あの恐ろしい魔石魔物を倒し続けたのだ。
上手く盾で押さえ、一斉にWSを叩き込む。
本来なら不可能だと思っていたが、レベル30超えが16人もいると、意外にあっさりと倒すことが出来たのだ。
いままで、誰もやろうとしなかっただけの事だったのだ。
オレは順調にレベルを上げ、41まであがった。
このまま一年もやっていれば、レベル50の大台も見えて来る。
だが、その予定がいきなり頓挫した。
ふざけた強さの魔石魔物が現れたのだ、ハリゼオイと言う魔物だ。
20人近くいたオレ達は、そいつ一匹に半壊させられた。
その後、集まった援軍の助っ人30人近い冒険者たちでなんとか討伐できた。
だだ、オレの連れて来た奴等はみんな殺されちまった、どうしたら良いのか。
そんなある日。
盾役の迅盾と言う新しい概念を作ったと言われる、瞬迅がまた新しい攻撃方法を作り出したと言う情報が流れてきた。
オレはその瞬迅に興味があったが、まだ会った事がなかった。
どうやら防衛戦に行ったり何処か余所に行って、今まで会う機会が無かったのだ。
それを見学に行こうぜと言う冒険者達に紛れて、オレもその場所に向かった。
なんでもWSを強く撃てる方法だとか、そう聞いた。
魔石魔物の強さにやられたオレは、もっと強さを欲した事もあり、瞬迅に対して非常に興味が出てきたのだ。だが、その興味はある意味砕けた。
瞬迅達が魔石魔物狩りをしていると言う場所に辿り着き。
そこで目撃した光景は。
美しく華麗で気品に満ちた気高い亜麻色の獣が居たのだ。
興味など生ぬるい、もっと激しい衝動的な感情。
――絶対に欲しい!その一言しか浮ばなかったのだ。
姿を見ればすぐに気が付く、彼女は狼人だ。
世間では忌避される存在。
だがその理由が。
ピンと張っている犬耳が駄目だと。
アホ過ぎる!勇者達の目は腐っているのだろうか?この気高い獣に価値を見出せないとは、絶対におかしい。
その瞬迅はいま、地を這うように低く駆け、魔石魔物のイワオトコに接近し、振り回す腕の一撃を掻い潜り、相手の膝を足場に駆け上がり、腕から肩を足場にもっと上に駆け。
そして、相手の頭上付近で、空中の見えない足場に立ちながら、WSを魔物の右肩に叩き込む。
その流れるような動きに目を奪われていたが、次には。
勢いそのまま回転をし、相手の肩に再びWSを突き刺したのだ。
『すげぇ!あれが”繋ぎ”か』
『”重ね”もだよ』
オレの近くにいた冒険者達が感嘆な感想を交わしている。
実際にオレも驚いていた。
瞬迅が魔物の肩を吹き飛ばした後に、大きく距離を取り、その直後に冒険者達がWSを一斉に叩き込んでいた。
オレ達よりも遥かに早く、あっさりと倒してのけるのだ。
しかも、瞬迅1人で倒し切れそうな感じもしたのだ。
咄嗟に【鑑定】で瞬迅を確認してみると、レベル77
オレよりも遥かに高いレベル。 だが、欲しい‥
周りにいた冒険者達が。
『マジかよ、って、前とは比べ物にならない位に、いい女に、』
――ああ、理解出来る、
『馬鹿!お前死にたいのか!飼い主の必殺が見てんぞ』
――飼い主?
他の冒険者の会話に耳を傾けていたが。
瞬迅が1人の男に近寄って行くのにオレは気が付いた、しかもどこか嬉しそうな顔をして。
さっきの戦闘では、ほぼ無表情だった。
単純に無表情と言うよりも、戦闘に集中しているゆえに無表情。
そんな感じだったが、今は嬉しそうに男に話掛けているのだ。思わず――
「おい?なんだ、あの冴えない皮鎧野郎は?」
「ばっか、知らないのかよ、あいつが飼い主だよ」
――あいつ飼い主?誰の、あ!首輪がまさか、
「飼い主?あ!瞬迅って赤首奴隷なのか?」
――マジかよ、どうなってんだこの町は、当たり前みたい言いやがって
「なんだお前そんな事知らないのかよ」
「う、うるせえ、俺は最近ココに来たんだよ!」
――それよりもおかしいだろ!?あんな冴えない野郎が瞬迅の主だと!?
なんで周りの奴等はそれを認めているんだよ!相応しくないだろうが!
そう相応しくない、奴じゃ彼女、瞬迅に釣り合わない。
そんな事を思いながら、暫く魔石魔物狩りを見ていると、冴えない皮鎧野郎が動き出した。
湧いた魔石魔物に、信じられない速度で駆けて行き――
まるで、おろし金の上を滑る大根のように、ズタボロになりながら転倒したのだ。
かなりの怪我を負ったのか、回復役が慌てて駆け寄り、魔法を掛けていった。
――絶対に奴は相応しくない!
なんだコイツは?何故ステータスもおかしいコイツが瞬迅の主に。
ありえない!
憤怒のあまり、奥歯が砕けるほど喰いしばっていると‥‥
奴は今度、瞬迅に背負われながら、地下迷宮から帰還し始めた。
あまりにも情け無い姿だった、小さい女に背におぶられ。
着ている鎧も、白と深紅の見たことの無い形の鎧、彼女の為に存在しているとさえ思える、すべてが整った鎧。
一方奴の方は、買える中では一番安いのでは?と思えてくる皮の鎧。
あまりの怒りに、口の中でパキッっと何かが割れる音が聞こえてきた。
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