新技術
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赤城パーティの助っ人傭兵の帰り道。
赤城パーティの勇者同盟はある話で盛り上がっていた。
その内容は、WSの連撃技術とWSの重ね効果だ。
空中からのWSの連撃は【天翔】などの【固有能力】が必要だが、WSの重ねは違うのだ。
慣れてタイミングを合わせれば、誰でも出来る可能性があるのだ。
地下迷宮の帰りの途中で遭遇した魔物相手に、ラティ達が試したところ。放出系に放出系を合わせても駄目だが、最後に重ねるWSが直接の近接系WSなら、効果が出ることが解ったのだ。
強靭な魔石魔物を、非力な短剣WSでも倒せた、この新技術は貪欲に強さを求める冒険者達にとって、新しい強さを獲られることになるのだ。
雑魚の魔物相手に何を遊んでいるんだ?っと言う感じで、その光景を見ていた冒険者達がソレを目撃した瞬間に、教えを請いに詰め寄ってくる始末だった。
鬱陶しいので、その情報は隠さずに公開することにした。
隠したままにして置くと、宿にまで押し掛けて来そうだからである。
これにより、WSを使った戦い方に、新しい流れが出来た事となった。
冒険者達が、新しい力を手に入れたのである。
( 俺にだけは恩恵が無いが、)
そしてその後、勇者同盟とは別れ宿に戻る事にした。
が、その前に赤城だけはキッチリと〆る事は忘れなかった。
途中で勝手に魔石を二つに増やした行為に対してだ。
事前に相談や、時間を大きくズラして置くなど、色々やり方があるにも係わらず、それを軽視し安全重視から、効率重視に切り替えたのだから。
赤城は適度に凹まして置かないと、すぐ調子に乗るので釘を刺す。
『う、うるさい!倒せたんだからいいだろ!』
『それは結果論だろ!危険は承知だが、無駄な危険はいらねぇんだよ』
『っう、わかったよ、次は気をつけるし報告もしっかりする』
『それならイイけど、そんで次から一体に付き銀貨40枚な』
『っな!卑怯だぞ』
『知らん!交渉とはタイミングとゴリ押しだ!!』
こんなやりとりもあり、俺の報酬が次から値上がりをした。
因みに、囲まれてしまい助けを求めていたラティを、すぐに助けに来なかった事に、ラティが少しヘソを曲げてしまい、俺とサリオで必死に宥めた。
実はこっそりと、拗ねたラティを堪能していた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから二日が経過した。
その二日で稼いだ金額は、金貨4枚に銀貨80枚。
そしてその二日間の間で、爆発的にWSの重ねが流行した。
WSにWSで重ねるような攻撃は、重ねと呼ばれるようになった。
それとWSの連撃は、繋ぎと命名されていた。
そして今日はららんさんに依頼していた、ラティの鎧の受け取り日。
しかし何故かららんさんからラティには、赤色のバトルスカートを穿いて来て欲しいと言う伝言が来ていたのだ。
特に断る理由もないので、今日のラティは赤色のスカートだ。
赤城相手の傭兵の仕事があるので、少し早めにららんさんに店に向かった。
時間は八時ちょっと過ぎだが、店はすでに開いていた。
店に入るとららんさんが、もの凄いドヤ顔で待ち構えており。
「出来とるで、ラチちゃんの依頼の鎧!」
「なんか凄いイキイキしてるんですけど?嫌な予感が」
「あの、ららんさまご機嫌ですねぇ」
「ららんちゃんがいままでにない、ドヤ顔をしちょるです」
「ちょっと傑作が出来たんよ!」
「え?前の付加魔法品も凄かったんじゃ?」
「ああ、前のは付加魔法品は魔石が凄かったんよ」
「うん?それじゃ今回の鎧は、、?」
「にしし、見た目と性能が凄いんよ!それがこれやぁ!」
ららんさんが自信満々に目の前のカウンターの上に、新作の鎧を取り出す。
依頼した品は、皮の鎧のはずだったが、出てきたのはチェーンメイルに良く似た黒と白色の鎧だった。
「ららんさん。依頼したのは軽量系の鎧のはずなんだけど、これは?」
「ふっふっふ、この鎧は魔石で強化を前提に拵えた一品なんや、普通は完成品の鎧に魔石を馴染ませて付加魔法品化するんやけどね、コレは付加魔法品化を前提で作ったんよ」
それからららんさんの細かい説明が始まった。
この鎧は、鎧と言うよりブリガンダインに近く、鎖かと思っていた思っていた部分は、蜘蛛の糸で編みこまれた、細い三つ編みのようになっていて柔らかく。
肩や胸元に腰あたりなどの、攻撃が当たり易い位置には、暗い白色の薄い板が取り付けてあり、防御力を上げているようだが‥‥。
「ららんさん、これ柔らかすぎで服と変わらないんだけど?防刃とか?」
「一応その機能も兼ねとるんやけど、本質は違うかな、これは装備者のMPを吸って防御力を高くする仕組みなんよ、だからこのままやとすぐに凹んだりするんやけどね」
話によると、例の精神が宿っていた魔石の余った欠片を、コレに+使っているとも意気揚々と語っていた。
だが気になったのがひとつ、値段がもっと掛かるのではと思っていると。
「そんでなぁ じんないさん、ちょっと予算がオーバーしたんよ」
「ちょ!最初金貨20枚でお願いしましたよね?ね?追加払えませんよ?」
「まぁまぁ、追加言っても金貨たったの20枚や」
「完全に倍ですよね!最初の倍ですよ!」
「正直すまんかった反省している、これで前のキャンセルの件はチャラや!」
「あ、ずりぃ!前の話は結構心に来るモノがあったのに、感動返せ!」
俺は精一杯ごねた、そうすれば無料になるか、安く出来ないかと考えていたからだ。だが、ららんさんは、まるでどこ吹く風のように余裕であった。
「じんないさん、ラチちゃんに装備させてみ?考えが変わるから」
「へ?」
――ららんさんは何を言ってるんだ?
ラティが凄く気に入るとかか?マタタビみたいに惹き付けるとか?
あ、ラティは狼か。
「まぁ、そこまで言うのなら、ラティ装備してみて」
「はい、ご主人様」
鎧の簡単な装着説明を受けて、ラティは服を着るように、鎧?を装備した。
すると。
装備した鎧は、ラティの体型に合わせるかの様に、少し縮み。そして‥
「ららんさん。残りの代金すぐにはお支払いが出来ませんが、必ず御用意してお支払い致しますので、何卒これを私どもにお売りください」
俺は、誠心誠意懇願した。
ラティに似合い過ぎたのだ。
少し暗い白色のプレート板に、間接部分や動きを阻害しないように気を使われている、とても深い深紅色の編み込まれた下地。
魔力が通ると色が変わるのか、黒から深紅に変わっており。
最初、鎧だけ見た時は予想出来なかったが。コレはまさにラティ専用。
ラティの亜麻色の髪や、スカートの色に合わせて作られた鎧だったのだ。
外観の凛とした気高さ。まさに可能性を感じさせる主人公機体のような、そんな格好良さだったのだ。綺麗や可愛いとかではなく、格好良いのだ。
ららんさんは俺の評価を聞き、ににしっと笑みを浮かべながら。
「じんないさんなら、きっとそう言うと思っとったで!」
「ららんさんの言う通り、コレは最高傑作ですね!」
俺はららんさんと、ガッシリと固い握手を結ぶのであった。
「あの、ご主人様?」
「何やら、二人で物凄く納得しあってるのです」
どうやら女性陣には理解出来ていないようだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
現在ラティは、フード付きの地味なローブを羽織っている。
理由は目立ちすぎること。
本来、白色系などは鎧などには使わないそうだ、汚れも目立ちやすいし隠密性も低い。特に冒険者には避けられる色合いなのだ。
使うとしたら、騎士や目立つことを重視した貴族。
なので、余計なトラブルを避ける為に、ボロのローブを購入し、それをラティに羽織って貰っているのだ。
そして地下迷宮に向かい、赤城の勇者同盟と合流する。
最初は勇者同盟のメンツもラティの姿に、訝しむ視線を向けていたが、魔石魔物狩りの広場に着いてから、ローブを脱ぐと視線が一転した。
何かには「っはぁぁぁ、」っと感嘆の声を漏らす者や、不躾に凝視する者が多数居た。
だがそれも仕方ない事だった。
――ウチのラティは格好良い!
声を大にして、叫びたいほどだった。
閑話休題
そして目的の魔石魔物狩りの方は。
三日間での戦闘で完全に慣れてきて、魔石も時間をズラして二個置くようになって来ていた。
それから一回だけだが、アルマジロモドキのハリゼオイが湧いたが、前回と同様に俺が正面から結界の小手を使い、霧に変えてやった。
それと嬉しい誤算がひとつあった。
赤城の勇者同盟は現在18名の冒険者を抱えているが、勇者1人が経験値アップの効果、恩恵を発揮し切れるのは、6人まで。
6人以上の冒険者同盟を組んでいる場合は、恩恵効果が人数に比例して下っているようで、戦闘自体は慣れて来ていたが、レベルの上がりはとても鈍くなっていた。
俺も一応はその恩恵持ちだが。
その恩恵は、パーティのラティとサリオだけのように感じられた。
もしかしすると、俺の恩恵はパーティ外の冒険者同盟には効果が発揮されないのかも知れない。
このレベルの上がりの鈍さによって、助っ人傭兵としての雇用期間が延びそうなので、大助かりである。だって、【ラティの鎧】で追加金貨20枚掛かるのだから。
そして面倒くさそうな誤算がひとつ。
この魔石魔物狩りの見学者が異様に増えたことだ。
理由は様々なのだろうが‥‥
「おい、このパーティ魔石魔物狩りを安定にこなしてるぞ」
「針山野郎が湧いたらどうしてんだ?」
「だな、盾持ちも少ないし‥あ!必殺がいるのか」
「あ!今、繋ぎからの重ね同時やってたぞ!」
「マジか重ねはともかく、繋ぎを使ってるのかよ」
「おいおい!あの目立つ奴、よく見たら”瞬迅”じゃん」
「はぁ?マジだ!なんで勇者同盟に?」
「勇者赤城様が誘ったのか?」
「つか、お前等知らないのか?”繋ぎ”も”重ね”も”瞬迅”が編み出したんだぞ?」
「マジかよ、って、前とは比べ物にならない位に、いい女に、」
「馬鹿!お前死にたいのか!飼い主の必殺が見てんぞ」
壁際に大量の見学者で溢れかえっていた。
普段はマナー違反などの理由で追い返したりするのだが。
「赤城の野郎、ラティを勧誘はしていないが、上手く使いやがって」
「ほへ?ジンナイ様どうしたです?」
赤城は見学者の冒険者を歓迎したのである。
その魂胆は、勇者同盟のメンバー増やすこと。
大幅に減ってしまったメンバーを増やす策として、最近危険となっている魔石魔物狩りを、安定的に行い、それを見せ付けることで、それに釣られて勇者同盟に入る奴を増やそうと言うのだ。
そして話題性で言えば。
ラティの存在はとても都合の良い客寄せパンダだったのだ。
勧誘はしていないが、グレーゾーンな使いかたをしていた。
――くっそ、傭兵代値上げしてやりてぇ、
まさかこんな事になるとは、でも下手に手を出す馬鹿は少なそうだな、
会話の流れを聞いてるいる限りでは、ラティを狼人と侮ったり蔑む奴はいないようで、寧ろ手を出すにはリスクが高いと認識してくれているようだった。
そんな事を考え分析していると、ラティとサリオが此方にやってきた。
魔石魔物を倒したので、次のが湧くまでのインターバルである。
「ラティ、サリオお疲れさん」
「はい、ありがとう御座います。それと、この鎧本当にありがとう御座います、私に使わせて頂けて。とても軽くて、素材も動き易く」
「あたしは、出番が無くて暇してますよ~です」
ラティは感謝をサリオは軽い愚痴を、そんな二人を俺は笑顔で迎えていると‥‥。
「おい?なんだ、あの冴えない皮鎧野郎は?」
「ばっか、知らないのかよ、あいつが飼い主だよ」
「飼い主?あ!瞬迅って赤首奴隷なのか?」
「なんだお前そんな事知らないのかよ」
「う、うるせえ、俺は最近ココに来たんだよ」
「ああ、また最近増えて来たな、どっからか流れて来てるよな最近」
見学者の冒険者達が、頻りに話し込んでいた。
内容は、俺達の事のようだが。
確かにラティの赤首輪は目立たなくなっていた。
本来、奴隷はその身分を示すために、首元を隠すのは禁じられているのだ。
だが、このラティの鎧は、深紅色の部分が多く、上手く首輪が目立たなくなっているのだ。もしかしたら、ららんさんはコレも考えてデザインしたのかも知れない。
何となく自分達がどう見られているのか気になり、聞き耳を立ててみる。
「‥はぁ?あの巫山戯たステータスの奴が主って、」
「全くだ、あの冴えない皮鎧野郎がって、おかしいだろ」
「交渉して引き取れないかな、でも高いか、」
「馬鹿!マジで止めとけって、アイツは‥‥」
どうやら、ラティの心配よりも俺に危険な可能性が出来てきていた。
――無いとは思うが、
いや、油断せずに引き締めていくか、よし
「ラティ、サリオ、ラストの魔石魔物やる時は、俺も参加する」
「あの、それはどういう事でしょうか?」
「ほへ?ジンナイ様WS使えないですよね?です」
「ああ、ちょっと考えがあってな、」
俺は自分の強さを見せ付ける為に、仮に上位魔石魔物が湧かなくても、一度は戦闘に無理矢理に参加することにしたのだった。
そして悲劇が起きたのだった――
読んで頂きありがとう御座います
宜しければ感想なのど頂けましたうれしいです




