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奇石の結晶

最近ブクマが増えて嬉しいです!

 俺はルリガミンの町に戻ってから、真っ先にららんさんの店に向かった。


 依頼していた、俺の付加魔法品アクセサリーのキャンセルをお願いするためである。

 王女様から頂いた、髪留め型の付加魔法品アクセサリーは、王族が使うぐらいだから、こちらの方が良いだろうと言う理由だ。


 元から城に向かった目的は、この付加魔法品アクセサリーの代金確保の為なので、ある意味丁度良かったのかも知れない。



 そしてほどなくて、ららんさんの店に辿り着く。 


 ラティとサリオには、先に宿に戻って荷物を置きに向かわせた。荷物を置き次第こちらに向かって来る予定だ。


「お!待っとたでじんないさん」


 店に入ると、俺に気が付いたららんさんが、笑顔で俺を迎えてくれた。

 これから注文した物のキャンセルを伝えないといけないと思うと心痛む。


「あの、ららんさん‥」


 謝罪をするなら先手必勝とばかり俺は、ららんさんにかばっと頭を下げる。


「お願いしていた魔防用付加魔法品アクセサリーの依頼をキャンセルしたいのですが」

「ありゃ?どうしてまた‥‥ ああ、なるほろね」



 ららんさんは俺の左鎖骨辺りを見ていた。正しくは、そこに留めてある、髪留めの付加魔法品アクセサリーを。


 俺は付加魔法品アクセサリーを皮の鎧の肩の留め具を挟むように装備したのだ、流石に女性物の髪留めを頭に着けるのは変だったので、鎧に着けたのだ。


 ららんさんは、その付加魔法品アクセサリーを見て、キャンセルの理由を理解してくれたようだ。

  


「まぁ仕方ないのぉ、そんな付加魔法品アクセサリーを手に入れちゃったんだもんね、オレもぱっと見でも凄さが解るよ」



 やはりこの付加魔法品アクセサリーは中々の一品のようだ。


( ありがとう王女様! )


「それ多分やけど、売ったら金貨500枚以上は確実にするね」


 ――おいぃぃぃぃぃぃ!ちょっとぉぉ、

 っええ?さらっと貰っちゃったけど、後で返してとか言われないよね?


 驚きの評価価格だった。



 そしてその後は、ららんさんにお叱りを受けた。


 一度依頼した物をキャンセルするのだから怒られて当然だろう。

 本来なら買うからと値引きしてくれていた物もあったが、俺が他にも色々と買ってくれているので、その辺りは許してくれた。


 それと”信用は大事だよ”と、最後に忠告もしてくれた。

 テンプレ的な台詞だが、迷惑を掛けた相手に言われると響くモノがある。



 このお叱りが終わった頃に、丁度ラティ達が姿を現した。

 実は、

 きっと叱られるだろうと予想しており、それをラティに見られたくなくて、俺はラティ達を宿に向かわせたのだ。



 ただ、あまりにもタイミング良く現れたので、もしかしたら店の外で、お叱りが終わるのを待って居たかも知れない。


( 俺も索敵が欲しい、)


 

 何となくだが、叱られている所を見られていたのかな~と思い、ラティの表情から読み取ろうと、試みてみたが。


 いつもの無表情なので判断が出来なかった、が。


 ラティの濃い赤色のバトルスカートに違和感を感じた。

 彼女はこの濃い赤色のスカートは持っていなかったはずで、それが気になり、スカートを凝視してしまっていると。


「あの、ご主人様 これはハヅキ様に頂いた物です」

「ああそう言えば、確かに言ってたね葉月からプレゼント貰ったって」



 そんな事を言いながら、俺は頭の中で別のことを考えていたのだ。


 ――青系や緑よりもラティには赤系の方が似合うな、

 亜麻色の髪とだと、赤系の色の方が合うな、、



 そう考えていると。


「およ?赤か、赤いいな!よしラチちゃんのは暗い赤にするかな」


 ららんさんが突然激しく納得しだしたのだ。

 気になったので、何が赤なんですかと訊ねると。


「にしし、三日後のお楽しみやね」


 

 いつもの『にしし』な笑顔で言ってきた。


 気にはなったが三日後を素直に待つ事にして、本題にうつる。


「ららんさん。頼んでいた付加魔法品アクセサリーは出来てますか?」

「それは本気でガチで待っとったよ、物騒過ぎてね、」



 そう言いながらららんさんは、店の奥から付加魔法品アクセサリーを持って来てカウンターに置いたのだ。


 カウンターに置かれた付加魔法品アクセサリーは、氷の結晶のような形で六角に尖った、透明に透き通った金属のような質感。


 ネックレスとして使う為か、黒色の紐で吊るしてあった。

 それを見せながら、ららんさんが小声で説明をしてくる。


「あんね、これは予想よりも凄い出来なんや」

「おお?高性能ってことです?あれでも元から凄いって言ってたような」


「それ以上ってことや、寧ろやりすぎたぐらいに、」

「具体的に言うと?」


「わかりやすく言うと、金貨五千枚レベルの一品」

「――っはぃ?」

「っえ!」

「ぎゃぼおおおおお!ご、ごせ――!!」


 慌ててららんさんが、サリオの口をカウンターから乗り出して塞ぎ、少し脅すような低い声で話す。


「静かに聞いてね、大事な事やから」


 サリオが少し顔を赤くしながら、コクコクを頭を縦に振る。



 それから、ららんさんの説明が始まった。

 この付加魔法品アクセサリーの価値が凄すぎる為に、もし他の者に知られたら、間違いなく次の日から、日替わりで強盗が2~3人は来るだろうと。


 ハッキリ言って、いち冒険者が持つ装備ではないと。

 最初は金貨三千枚と言っていたが、それ以上の価値のが出来てしまい、とっとと俺達に渡して楽になりたいと本音を漏らしていた。


 そして効果は、弱体系魔法を弾くだけじゃなく、多少の攻撃魔法も弾き、ついでに回復魔法ですら弾くだろうと。


「って、回復魔法弾くんです??」

「えっとね、完全には弾かないかもだけど、効果は半減するやね」


「ちょとぉぉぉ!それ駄目ですよね?」

「うんむ、だから回復を受ける時は外すように、、」


 そうつぶやきながら、ららんさんは目をそっと逸らした。



 元からパーティ回復魔法持ちはいないが、これはまた薬品ポーションを買い込む必要が出てきたのだ、出来ればもっと効果の高い薬品ポーションを。


 

 因みに、その付加魔法品アクセサリーを装備して、サリオに威力を極限まで下げた魔法で攻撃してもらい、試してみたらホントに魔法を弾いていた。



 こうして、ららんさん作であり、一応ららんさんが名前を付けた付加魔法品アクセサリー。奇石の結晶はラティの首元を飾ることに‥‥


「あ、ラチちゃん。ちゃんと服の中に隠しておいてね、形も珍しいし見る人が見たら一発で価値がばれるかもだから」



 飾ることはなかった‥‥



 俺はこの付加魔法品アクセサリー、奇石の結晶の製作代金の金貨20枚と、三日後に仕上がると言うラティの鎧の代金金貨20枚、合計で金貨40枚を支払い店を後にした。





       ◇   ◇   ◇   ◇   ◇





 そしてその帰り道、

 武器など装備品の中古屋、古物商と言う店名の店で短剣を金貨1枚で購入した。


 本当はもう一本買いたかったが、予算がきつい事と、ラティがまだ蜘蛛糸の剣は使えると言うので、短剣だけの購入となった。


 

 それから一旦宿に戻り、時間も午後の6時近くなっていたので、夕食を取ることにした。


 因みに夕食は、食堂で一番値段の安い、肉じゃが定食にした。

 今後まともな金策が見つかるまでは、節約が必要となったのだ。


 

 「昨日のハヅキ様との夕食は豪華でしたです」っと、つぶやいたサリオにアイアンクローおしおきをかました後に、俺は夜の街に人探しに出かけることにした。



 行き先は特に危険は無い場所だが、1人の方が都合が良いので、ラティとサリオには部屋に戻っておくように言っておく。



 その行き先は――

 たぶん酒場や食堂になるで、金銭的に1人の方が都合が良いからだ。


 

 それから目的の人物を見つけ、俺は宿屋の中にある酒場へ入って行く。

 その目的の人物とは。


「どうもです、ドライゼンさん・・

「んあ?おうジンナイか!戻って来てたのか、って、何か話しか?」



 何かを察したのか、仲間と飲んでいたドライゼンは、席を立って俺と別のテーブルに移動し始めた。


 情報集め好きと言う為か、案外空気を読める奴なのかも知れない。

 そして俺は、その情報集め好きに話し掛ける。


「ドライゼン、貴族のことで教えて欲しいんだけど、」

「――っな!まさか知られているとはな、ちょっと驚いたぜ‥‥」


「まぁ、それなりには」

「いつから俺が貴族の四男坊だって知ってた」



 俺が驚いた。

 ノリでドヤ顔から知ってる風を装ってみたが、まさか‥


「おいジンナイ!お前まさか、ノリで適当言いやがったな」


 俺の驚きのリアクションで、バレたようだ。

( まぁ隠すつもりも無かったが、 )



「えっとですね、貴族のことを教えて欲しくて」


 こうして俺は、この異世界の貴族の情報集めを始めたのだった。

 その後、情報料と言われて、酒代を奢らされたのが痛かった。






         ◇   ◇   ◇   ◇   ◇







 酒場から戻り、現在は宿の部屋。


 部屋の中では、すでにサリオは寝息を立てており完全に熟睡中。

 情報の共有をしておきたかったが、起すのも悪いので寝かしたままだ


 仕方ないのでラティに先に話をすることにした。


 今はラティの頭を膝に乗せた、完全完璧頭撫でパーフェクトなでなで状態。

 とても話し合いをしているようには見えないが、一応真面目である。


「まずは貴族のこと話すから、変な所があったら言ってくれ」

「はい、ご主人様 (ぷしゅ~)」


  

 俺はドライゼンから聞いてきた話をラティに聞かせる。

 ドライゼンから聞いた話と、ラティの知っている知識に違いがないか、確認の意味も込めて話を始めた。


 ラティの今までの言動を見ていると、生活や狩り、それと歴史とかには詳しいが、政治的なモノはあまり詳しくない印象があったからだ。


 価値観の認識も共有しておきたかったのだ。



 話す内容は。

 貴族の数、まず公爵という一番上の四家、アルトガル王国を中心に北ボレアス 南ノトス 西ゼピュロス 東エウロス。


 そして公爵の下に伯爵が各2家があり合計で8家、その伯爵の下に上級男爵と下級男爵が多数存在すると。


 

 ドライゼンに確認したところ、子爵と侯爵は無いらしい。

 理由が歴代勇者達が公爵と伯爵と男爵しか知らなかったからだと。


 ――子爵と侯爵って地味だもんな、普通知らないか、?

 公爵はゲームでよく見かけるし、伯爵はドラキュラで、男爵は芋で‥‥



 あと、爵位は基本的に長男のみが継げると。

 長男以外は、村や町の監視役の領主様とやらになるらしい。


 ドライゼンはそれが嫌で、家を飛び出して冒険者になったクチらしい。


 それと恐ろしい事に、基本的な法律のようなモノはあるが。

 公爵家は自分達の領地だけ限定だが、独自の法律ローカルルールを作ることが可能だとか。


 大雑把にいうと、四種類の法律があるようなモノだ。



 貴族と言うのは、平民に対してはかなりの力を持っており。

 税に関しても、かなりの差もあるようだ。



 何故そんな酷いのか?と 訊ねたところ。


「え?歴代勇者様がそう言ったらしいですよ?」とドライゼンから酷い返答を返された。


 歴代共は馬鹿かよ、と 思ったが。


 ――もしかして‥

 貴族と結婚をした勇者達が、貴族に唆されて言い始めたのかも知れないな、

 貴族になった勇者も好き勝手出来るわけだし、

 16~18才とかだったら、ちやほやされればそうなるかな?



 聞けば聞くほど、酷い内容だったのだ。

 時間が足りないのもあったが、ある程度は話を絞ってドライゼンに聞かないと、話がすぐに脱線してしまい情報が纏め切れない感じだった。

 


 そんな内容をラティに聞かせた。 

 ラティは静かに聞いてくれていたが、時おり相槌を打つかのように「ぷしゅ~」と口元から息が漏れていた。


 口から息が漏れる癖は健在だ!。



 そして話が終わると、「わたしの認識と同じですね」と答えた。

 ただ、公爵が法律を作れるのは知らなかったと、教えてくれた。



 意外と公爵が独自の法律ローカルルールのようなモノを作れるのは、一般的に知られていないのかも知れない。

 

 その後はまったりとして、亜麻色の髪を梳いたり。

 耳の裏側をコリコリと指で掻いたりして、俺は癒しの時間を堪能した。


 

 ただ、その癒しをかみとみみ堪能しながら頭の中で。


 ――ひょっとして貴族、勇者の子孫は、

 効果は薄いけど、勇者の恩恵が残ってんじゃ?


 【宝箱】みたいな強力なのは無いけど、他のモノなら‥‥




 俺はそんな憶測をしては否定して、否定しては仮説を立てていた。

 

読んで頂きありがとうございます!


感想やご質問のコメントお待ちしておりますー

ブクマ300が見えてきたー!!

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